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赤い星の彼女

 
 まぶしい輝く太陽と白い波頭もないベタ凪の海でした。
 ウサギさんは海の上でニンジンを育てていました。赤い色をしたニンジンです。ウサギ
さんはニンジンが大好きなのです。
 ウサギさんは白いのです。とても白いフワフワとした柔らかい毛は、穏やかな風を受け
てきらきらしていました。ウサギさんは来る日も来る日も海の上でニンジンを育てていま
す。空はいつも晴れていて、だからニンジンはよく育ちました。けれどウサギさんには悩
みがありました。
 ウサギさんのニンジン畑には土がありません。ウサギさんは海の上でニンジンを育てて
いるのです。土がないのです。だから、ウサギさんはニンジンを育てる土が欲しかったの
です。暖かい土が欲しかったのです。ウサギさんは赤い目をこすって、夜もなかなか眠れ
ません。土があれば、きっともっと美味しいニンジンを育てることができるのです。
 ウサギさんはそれでも毎日ニンジンを育てていました。
 ある日、カエルさんがウサギさんを訪れました。カエルさんはウサギさんの友達です。
しばらくカエルさんはニンジン畑をぼんやり歩いていました。ウサギさんは久しぶりにあ
うカエルさんとお話をしました。ウサギさんのニンジン畑を歩きながら、カエルさんと話
をしました。
 カエルさんはパイロットです。宇宙船『青い地球三世』号のパイロットです。カエルさ
んは遠い宇宙もすぐそばの月までも、光より速く飛ぶ宇宙船のパイロットなのです。カエ
ルさんは色々な星や海、森や空の話をしました。宇宙には、たくさんの空があるというの
です。ウサギさんはカエルさんのそんな話が好きです。一晩中話を聞いてもでも聞き飽き
ることはありません。カエルさんも嫌がることなく、『青い地球三世』号で旅してきたたく
さんの空や森や海や星の話をしました。
 カエルさんの話を、ウサギさんはとても楽しみにしていました。しばらくの日々、ウサ
ギさんはニンジンを育てながらカエルさんの話を聞きました。カエルさんも、ウサギさん
の畑を手伝ってくれました。ウサギさんといっしょにニンジンを食べましたよ。カエルさ
んはとても美味しいと喜んでくれました。ウサギさんは嬉しくて、もっともっと美味しい
ニンジンを育てようと思います。けれど、けれど。
 ウサギさんの畑には土がありません。
 ある晩、ウサギさんはカエルさんに言いました。
 土があれば、きっともっと美味しいニンジンを育てることができるのに。
 カエルさんは言いました。
 今度来るとき、土を持ってきてあげるよ。
 ウサギさんは飛び上がって喜びました。赤い目を輝かせて喜びました。カエルさんも嬉
しそうでした。なぜって、カエルさんはウサギさんのニンジンが好きだったからです。
 時間が過ぎました。
 カエルさんは『青い地球三世』号のエンジンに火を入れました。カエルさんはウサギさ
んの住む海の上で、たっぷりと重水素を宇宙船のタンクに貯めて、そしてエンジンに火を
入れました。それは太陽のようにまぶしく、明るく輝きました。ウサギさんは寂しかった
けれど、カエルさんの宇宙船を見て、とても頼もしく思いました。
 明くる朝、カエルさんは『青い地球三世号』に乗って、また空を探す旅に出かけていき
ました。ウサギさんはいつまでも手をふりました。カエルさんの腕や手首や指先のひとつ
ひとつの動きが、『青い地球三世号』のエンジンを動かして、海の上はいっとき、とても賑
やかになりました。ウサギさんは水平線の向こうに消え、そしてはるか高くのぼっていく
カエルさんの『青い地球三世号』を見送ります。ショックウェーヴがウサギさんの耳に届
くころ、カエルさんはすでに空と宇宙が溶け合ったずっと遠くの空を目指していました。
カエルさんの旅が始まったのです。
 ウサギさんは、ニンジン畑をぼんやり歩きました。ニンジンはよく育ってくれます。き
っと土がなくても美味しいのです。それはウサギさんにもわかっています。けれど、きっ
と土があれば、もっと美味しいニンジンが育つのです。ウサギさんは土が欲しかったので
す。
 ウサギさんがまた日々を過ごし始めたころ、カエルさんはホーマン軌道に乗っていまし
た。その前に、月に寄って。月に降り立ったカエルさんは、『青い地球三世号』の降下ステ
ージから降りると、月の石と月の砂を集めました。月の石はとても白く輝き、スーツの中
でカエルさんはそっと笑いました。
 カエルさんが月の上でふと空を見上げると、地平線に地球が昇ってきました。もう長い
たびで何度も眺めた光景です。しかし、カエルさんは「地球の出」を何度見ても美しいと
思いました。あの青い海の上で、きっときょうもウサギさんはニンジンを育てているに違
いありません。カエルさんは月の石と月の砂を集めて、上昇ステージに乗り込み、エンジ
ンに火を入れました。
月軌道には『青い地球三世号』がカエルさんの帰りを待っています。もちろん、カエル
さんの宇宙船には、ウサギさんにもらったニンジンがたくさん積まれています。食べるた
びに、ウサギさんと過ごした海の上を思い出します。ウサギさんの歌を思い出します。ウ
サギさんはよく歌を歌ってくれました。思い出すと、カエルさんは少しだけ懐かしくて、
涙が出そうになりました。
 カエルさんは月軌道で『青い地球三世』号とドッキングすると、月を離れました。そし
て、一度月軌道でスウィングバイを行ってから、太陽系脱出速度ギリギリまでエンジンを
開きました。『青い地球三世』号は、ホーマン軌道に乗り、火星を目指します。赤い星です。
 カエルさんのちょっぴり長い旅はまた始まりました。
 ウサギさんは海の上で歌を歌っているでしょうか。カエルさんはコクピットでスロット
ルコントロールをオートにセットして、一定時間の噴射を行うと、慣性飛行に移ります。
カエルさんは地球を背にして、ウサギさんにメールを送りました。
「また、歌を聞かせてね。僕は赤い星を目指しているよ」
 ウサギさんがそのメールを読み、返信する頃には、きっとカエルさんの宇宙船は、火星
軌道上にあることでしょう。ウサギさんのメールが『青い地球三世』号を追いかけても、
なかなか追いつかないからです。カエルさんの宇宙船はとても速いのです。
 そして、いよいよ赤い星がカエルさんの目にも映ります。青い海をたたえた地球からは
想像もできない、寂しくて悲しい赤い星です。減速シーケンスに入った『青い地球三世』
号は、機尾をいっとき火星に向けて、減速のためにエンジンを吹かしています。ウサギさ
んの海で満タンにした重水素はまだまだたっぷり残っています。
 スロットルコントロールをマニュアルモードにしたカエルさんは、いよいよ火星軌道に
乗ります。減速シーケンスを終えたカエルさんは、降下ステージに乗り込んで、赤い星に
降り立つ準備をします。順調に火星軌道で周回を続ける『青い地球三世』号からカエルさ
んが降下ステージで離れたとき、地球が見えました。もう、どこが海なのかわかりません。
望遠鏡を使えば見えたことでしょう。しかし、カエルさんはちらりと地球を振り返っただ
けで、まっすぐ火星を目指しました。
 火星では風が吹いていました。月とは違いました。オリンパスという大きな山が見えま
す。カエルさんは嵐を避けて、そっと火星に降り立ちます。カエルさんの降下ステージは
とても性能がいいのです。カエルさんはそして、火星に降り立ちました。
 赤い星。赤い砂。カエルさんは火星の砂をそっと一握り拾います。火星の石は赤く見え
ます。火星の空気はほとんどが二酸化炭素で、だから波長の長い赤が目に届くのです。だ
から、何もかもが赤く見えます。この色は鉄錆びの色でしょうか。
 カエルさんは降下ステージのラダーに腰を下ろして、握った砂を風になびかせて、そし
て空を見上げました。スーツの中で、カエルさんはそっと歌を歌いました。ウサギさんの
ことを思い出しながら、カエルさんは歌を歌いました。懐かしい歌です。ウサギさんの声
が耳の奥で聞こえます。
 カエルさんの旅の半分が終わりました。
 カエルさんはウサギさんにメールを送ります。
「これから帰るよ」
 そのメールをウサギさんが読むころ、きっとカエルさんは地球の海を見下ろしているこ
とでしょう。
 カエルさんは、夜の火星の砂の上で、青い地球を見上げて、またエンジンに火を入れま
した。

 というのが、『赤い星の彼女』という歌の元なんですが。
 誰も知るわけがない。
 こんな話なわけです。
 何となくわけがわかりません。書いていて泣きそうになりました。余計なことを考える
からですよ。どうも感情の起伏が激しすぎてどうも。
 カエルさんが無事に帰れるといいなとか、ウサギさんは寂しいんだろうなとか、まあ普
通の人には想像もつかないような、おびただしいサイドストーリーが頭を駆け巡って、い
まわたしは多少混乱しています。余計なことを考えすぎるから、きっと世界が悲しみに満
ちてしまうのです。よくないことだとはわかっていますが、考えてしまうんだから仕方が
ないだろう!
 その辺わかってない人が多いですね。
 わかってほしいとも思いませんが。
 狂っているんですよ。みんな。我々のほうがまともなんですよ。
 世界は結局悲しみの塊で、それに気づいてしまった目を持つ人間がわたしたちで、それ
は真理に近づいてしまったからで、それはきっと不幸なことなのです。
 今すぐ、たったいま、世界中の人々が同時にいなくなることができれば、この悲しみは
すべて消滅してしまうのですよ。そのほうがきっと幸せです。
 疑うこともない。
 わかってない。
 どうも今夜もひどい状況です。
 仕事中もやばかったですよ。
 仕事をしているのは自分ではないような気がして。そんな気がしませんか?
 いまここでふと手を止めて、自分について考えた場合、自分を外側から感じることがで
来ませんか?
 今自分が見えている世界は、本当に自分が生きている世界なのか?
 とてもおそろしいことです。
 小さい頃はもっと頻繁に、自分がしゃべっているときも誰かがしゃべっているような気
がしていました。しゃべっている自分を外側で感じているような。
 こんなこと書いたって無駄です。文章では表現できません。残念ながら。他人にわかっ
てもらいたいとも思いませんけど。

 話題を変えることにしました!

 さて、同期が結婚するらしいです。
 今日電話で話したとある店舗の方から聞きました。
 3/13にも同じような情報を仕入れたのですが、それはまだ確定ではなかったような。
 しかしきょう、別方向からの情報を仕入れたことによって、確定になりました。
 付き合っているらしい、という情報は大分前にわたしの耳に届きました。なるほど、と。
当人に会ったときは爆笑しそうになりましたよ。ごめんなさい。わたしは心が貧しいので
す。貧しいのはそれだけではありませんが。
 で、お目でとうございます。
 それしかないですね。
 しかしどうしてそう急ぐのでしょう。
 わたしはいやですね。
 まあ相手もいないし相手を見つける気もしないからどうでもよいのですが。
 確定確定。
 メール依存症のわたしですが、なかなか返信が来ないのでどうでもよくなってきました。
考えてみれば、わたしもメールが来ても返さなかったりしますから、それはお互い様なの
でしょうけど。こういう依存した生活は身体によくないですよ。
 というわけで、だんだんだるくなってきたので今日はこのへんで。
 『赤い星の彼女』のはなしを書いたのは失敗でした。わたしの精神状況がすべからくマ
イナス方向に振られてしまいました。あれはアンテナだったのですね。悲しみを拾うアン
テナだったのですよ。フェイズドアレイレーダー並みです。だから首振りしなくてよいの
です。
 明日は休みですよ。
 ハッピー。
 朝から鍋食おうと思っています。
 鍋ですよ鍋。
 すばらしいです。
 それにしては白菜が高かったので困りました。サイダーのみたいですね。その前にセブ
ンスターを喫いたいのでこのへんで。
 トマトを8個食べた日。食いすぎだ!


赤い星の彼女 by CONIFER

海の上で ニンジンを育ててた 赤い目の彼女
土のない畑で 赤い色を見た 赤い目の彼女
青い顔した 彼が持って来た
土の匂いのしない 土を
赤い目を輝かせて ただ待ってる
彼のてのひらを

赤い星で あの日の歌を
青い顔の彼は ただ歌っていた
赤い目をした 白い彼女を浮かべて

青い顔した彼は持ってきた
月の石の匂いのする 土を
赤い目を輝かせて 彼女は笑う
彼のてのひらで

赤い星を あの日の歌を
青い海の上で ただ歌っていた
赤い目をした 彼女と並んで

あの色は
太陽に
似ていなくもない


 聴きたい人はメールください。いないと思うけど。



(2004-03-16)





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