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輪唱

 
 退勤後、海を見ていたら止まらなくなってしまった。
 実は三日前も海を見た。
 ほとんど同じ時間。
 けれど、今日のほうがよく晴れていた。
 もう少し退勤するのが早ければ、山の稜線に沈んでいく太陽をじっと眺めることもでき
たのです。残念ですが、青く沈んでいく東の空があまりにもきれいで、わたしは思いまし
た。このまま世界が終わってしまえばいいのに、と。
 もちろん、ここでいう「世界」とは、わたし自身の存在と同義になりますから、深く考
えないでください。
 いままたわたしはふたたび頭痛に悩まされていますが、夕方はめまいと胃痛がひどく、
困っていました。困ったことですね。
 しかし、これが永遠に続く生活のかけらだというのならば、わたしはそれを望まないで
すよ。そんな明日はわたしは望みません。
 このまま世界が終わってしまえばいいのに、と、わたしは沈んだ太陽が照らしているは
るか向こうの空を眺めながら、じっと考えていました。
 風が強かったですから、少々波も荒く、そして砂が飛んでいました。
 こうした季節外れの海は好きです。
 銭函の海岸線ですが、それにしてもゴミだらけ。
 海岸がここまで汚い国というのも悲しい。
 白砂青松、のような海岸は北海道ではまず見かけませんが、しかし武の映画に出てきそ
うなダークな雰囲気の海岸線はいくらでもあります。そういう海岸が好きです。
 砂浜がよいですね。残念ながら、磯辺はだめです。フナムシがいますからね。
 世界のかけらを一面に散らばせて、わたしは遠くからそれを眺めていました。
 灯りがひとつふたつと灯っていて、湾曲した海岸線のずっと向こうにちらちらしている
のは小樽の街でした。
 小樽というと、「海峡の光(このタイトルはまずいなぁ、辻仁成の芥川賞受賞作と同じだ
からなぁ。わたしも実は以前辻仁成が意外に好きで結構読んでいました。「旅人の木」が最
も好きですね。「海峡の光」も読みましたが、なんでこれが、というほどにつまらない話で
した。好きな人はごめんなさい。やはり、映像的で物語がないと却下ですよ。そういう点
で「旅人の木」は、デパートの屋上にひっそりと存在している植木屋の情景だとか、そう
いうものがよく見えてきてよかった)」ですが、小樽は好きな街なんですよ。
 非常に斜陽の街ですが、好きです。
 ええ、実は去年の秋、意味もなく小樽へ行き、小樽ワインを一本買ってしまいましたよ。
試飲したらとてもおいしかったのです。漬物も買ってしまいました。困ったことですよ。
おいしかったのですよ。
 小説というと、「フレア」は面白いですね。
 大鋸和正の「文藝賞」受賞作ですが。
 文藝賞はこういう話が多いですね。
 「フレア」はとてつもなく意味不明で、とてつもなくダークな話。まるで自分が書きそ
うな雰囲気を残しつつ、絶対に書けないし書かない話。

 カエルせんべいとせんべいガエルの話を持ち出すまでもなく、わたしはダメ人間。
 まだ人間ダメではないからましですか。
 属性はまだ人間です。残念です。

 しかし、この世界はいつまで続くのでしょう。
 はっきり言わせていただくと、とてつもなく苦痛に満ちており、生きることがすばらし
いと、わたしは盲目的に賞賛することなどできません。
 だからわたしはバナナを食べようとしているのです。
 バナナよいですね。
 バナナはすばらしいですね。
 木の上で熟したバナナってどんな味なんですかね。
 しかし、真夏のトマトにかなう美味などないのです。あれはすばらしい。わたしはひと
箱を三日で食い尽くす男です。残念です。それが許されるのです。夏のトマトはおいしい
からです。美味ですね。ええ。
 しかし完熟トマトはまずいですよ。あれは料理に使うべきで、かじるのだったら完熟の
一歩手前くらいがいちばんおいしい。
 トマトは見ただけでだいたい味がわかりますよ。これは特技ではなく、自分のための技
能。
 そしてたったいま、隣のアパートの車庫からシビックが現れて、全然暖機されていない
のに「ぶうぅぅおおおーおぅ」と飛び出していきました。バカですね。
 エンジンが暖まったからといって安心してはいけません。トランスミッションもサスペ
ンションもすべてがこちんこちんですよ。まだまだ。心臓だけ暖めても筋肉を暖機しなけ
れば大けがしますよね。ウォームアップ!!
 クールダウンも重要なんでしょうか。
 しかし、わたしは、人生をブローさせたいですよ。
 もうダメですよ。
 エンジンブローとターボブローとどっちが深刻なんでしょう。よくわかりません。
 ミッションブローの危険を常にはらんだ車に乗っているので、エンジンよりもトランス
ミッションの方が怖いですよ。怖い怖い怖い怖い。

 車などどうでもよいですよね。

 そして、いま「ノースポイント」シリーズの一本、「フレンズ」を見ているのですが、手
持ちで撮るのもよいですけれど、篠田昇を意識してるのでしょうか。残念ながら、意図的
なのだとわかっていながら、篠田昇のカメラはあまり好きではありません。酔うのです。
 ついでにわたしゃ寄った画があまり好きではありません。
 引きの画が好きです。
 偏狭しているのは百も承知ですが、わたしが映画を撮ってしまったら、これは大変です
よ。困ったことに引きの画多用でセリフが少ない、とてもつまらん映画になってしまうか
もしれません。

 <滑走路端>
     とある航空団基地のはずれ。緑がまぶしい。
青空、雲、風の音、風に揺れる草(ゆっくりとパン)。
     ところどころに潅木が茂る田舎道。アスファルトに照る太陽。
     そのままパンし続けて、自転車に乗った少女(加苅有理)。
     風に髪がなびく。肩まで伸びた髪、白い夏服。まだ顔は見えない。
     そこでパン、ストップ。ゆっくりとズームイン。
     彼女の横顔。
     バストアップまでゆっくりとズームイン。
     風の音。
     風の音にまぎれて、ジェットエンジンの排気音。遠くから、しかし鋭く。
     そこで有理、すっと振り向く(視線は別)。汗ばんだ顔。

 <同>
     有理と自転車の遠景。道路と草と、フェンス。
     近づく轟音。

 <同>
     爆音。
     戦闘機(F-15戦闘機)の着陸。低く腹を見せる戦闘機。有理、見上げる。
     通り過ぎる戦闘機を追うようにして、カット切り替わる。
     有理をなめて、滑走路。陽炎を揺らして着陸する戦闘機(一機)。

<同>
     爆音は去り、ふたたび風の音(同じ構図)。
     有理、滑走路を向いていたが、ふたたび(戦闘機が飛来した方向に)向き直る。
     有理をなめて、草原、潅木、青空。ゆっくりとズームアウト。
     風の音。
     勢いよく自転車のペダルを踏み込む有理。
     オープニングテーマIN。

 <タイトル(スーパー)>
     駆けていく有理。
     夏の風景、ショットの積み重ね。

<田舎道>
        (遠景)自転車をこぐ有理(田舎道)。
    (併走)自転車をこぐ有理。向こうに航空団基地のフェンス。
     風の音。

     田舎道から、市街地へ。有理の自転車が進む。いくつかのショットの積み重ね
(カット割り、曲と同調)。
     風の音から徐々に街の喧騒が混じる。

<学校・校門>
     有理の通う高校。
     数年前に新設された学校で、建物はまだ新しい。窓は雑多に開け放たれていて、
カーテンが風に舞っている。
     昇降口に時計。もはや登校時間ではない。
     有理は寄り道をして登校したらしい。
     とまどいもなく、まっすぐ校門を自転車で駆け抜ける。後姿、なびく髪。

<同・駐輪場>
     自転車を停め、鍵をかける有理(無表情)。
     陽射しが強い。顔をあげ、汗をそっとぬぐう。
有 理「(吐息。少々乱暴に、カゴに入れたカバンをつかむ)」
     足早に駐輪場をあとにする有理。その後姿。

 <同・廊下・教室前>
     向こうから有理が闊歩してくる。冷え冷えとした廊下の印象。陽射しだけが強
い。
     自分の教室の扉を、勢いよく開ける。

 <教室>
     誰もいない。
     それぞれの机の上には、制服がたたんでのせられている。
     どうやら体育の授業。
     有理、黙って自分の席に座り、頬杖。
     開け放たれた窓、風に舞うカーテン。
     風の音にまぎれて、ジェット機の爆音。
     だらしなく机に突っ伏したかと思うと、有理は立ち上がり、窓辺へ。
     有理(後姿)。
     窓辺で風を受けながら、爆音を追う。
     爆音、急激に大きくなり、教室全体を支配する。そして、唐突に消える。
     ふたたび風の音。ゆるやかに有理へズームイン。
     有理、頬杖をつく。
     突然、無遠慮なほどのボリュームで鳴り響くチャイム。
     有理、振り返る。
     チャイムが響き終わると、途端に生徒たちのざわめきが聞こえだす。
     有理、窓に背を向け、もたれる。クラスメイトたちが帰ってきたようだ。
早 希「あれ、ユーリ」
     Tシャツにハーフパンツ姿のクラスメイトたち数名が、教室に戻ってくる。
有 理「(手をあげて、平淡に)おはよう」
明日香「(汗を拭きながら)なになに、今ごろ登場?」
沙耶香「(制汗剤を盛大にまきちらして)いままで寝てたの? それって体育だから?」
     クラスメイトたち、てんでに言いながら、着替える。
     有理、適当に相槌を打ちながら、自分の席へ戻る。
早 希「あっちー(暑い)、やってられーん(有理がカバンから取り出したノートを奪い取
    りうちわ代わりにあおぐ)」
沙耶香「(着替えながら)ねえねえ、寝てたの?」
有 理「寝てたよ」
沙耶香「えー」
早 希「助けて、あたしもうだめ。暑い!」
明日香「あんたは体力なさすぎなんだよ(と早希を小突き、着替えようとしていた制服を
    奪い取る)」
早 希「(制服を奪い返して)そりゃ陸上部のあんたはいいだろうけどさ。(有理を向いて)
    何とかしてよユーリさんよ」
     クラスメイトたちの喧騒から、少し浮いている有理。着替えるクラスメイトた
ち。

<教室・授業中(地理)>
    (教室後方から)板書する教師、それを写す生徒たち。
     居眠り、私語、ごくありふれた授業風景。
     沙耶香の前席が有理、その左隣が早希。
     有理。
     教科書を左に、ノートを右に広げ、左手で頬杖をついている。
有 理「(地図帳を広げ、授業とはまったく関係のない地域のページを開き、シャープペン
    の先で都市と都市、島と島を結ぶ。教師の講義が耳に届いているのかどうか、は
なはだ怪しい)」
早 希「(ペン先で有理の左手を突付き、ささやく)どこ行ってたの?」
有 理「(小声)どこって」
早 希「今朝。携帯に電話しても通じなかった」
有 理「だから、寝てたんだって」
早 希「寝てたって電源入れとくでしょあんた」
有 理「バッテリー切れてた」
早 希「嘘ォ」
有 理「嘘じゃないってば」
早 希「マラソンが嫌、だったわけじゃないでしょ」
有 理「それはあんたでしょ」
     教師が二人を向いたらしい。会話、一時中断。しおらしく地図帳を広げる有理。
早 希「(さらに小声)コー君と一緒だったの?」
有 理「(地図帳を授業にあわせたページに戻して)誰?」
早 希「コー君」
有 理「なんでさ」
早 希「だって、昨夜からずっとユーリの携帯、つながんなかったもん」
有 理「はァ?」
早 希「だったら、彼と一緒かなーって、思うじゃない」
有 理「西(明日香)でしょ、そういうこと言ってるの」
早 希「言ってないって」
有 理「なんであいつと一緒だったなんて思うのよ」
早 希「(地図帳のページを繰りつつ)ユーリ、今日体操着持ってきてないでしょ?」
有 理「……忘れた」
早 希「昨夜家に帰んなかったんでしょ」
有 理「……」
早 希「やっぱり」
有 理「いいじゃん別に。確かに会ってたけど、それで遅刻したんじゃないよ」
早 希「じゃあなんでさ」
小 林「(突然)倉岡、加苅、お前らなにしゃべってんのよ」
     至近距離に立ち、丸めた地図帳を振りかざしている地理教師・小林。
     何事もなかったように縮こまる有理、早希。
小 林「(低く)クソボケが。だまっとれ」
     有理、早希の追及を小林の叱責でかわし、これ幸いと地図帳を広げ、ふたたび
     授業と関連のないページを繰る。
     不満そうな早希。器用にシャープペンをくるくる回している。
     遠く雷鳴のような戦闘機の爆音。瞬く間に轟音となって、教室に響く。
     有理、窓を向く。
小 林「(その爆音に対してあきれたように低く)うるさいわ」
     はっと小林を向き、表情なく視線を向ける。

<教室・午後>
     英語のリーダー。妙に発音のいい教師・榎木。
     風に舞うカーテン、生徒たちの顔、顔、顔(横顔)。
     窓辺は陽だまり。陽射しが強い。つづく榎木の朗読。
     居眠りをする生徒、汗をぬぐう生徒、私語をする生徒。
     早希。英和辞典に落書きをしている。
     沙耶香。寝ている。
     明日香。それなりに教科書を追っている。
     有理の席が空席。カバンもない。
明日香「(ささやき)チャキ(早希)、チャキ」
早 希「(ささやき)なによ」
明日香「ユーリは?」
早 希「お昼食べたらどっか行った」
明日香「マージでぇ」
早 希「(真似て)まーじでぇ」
     ひたすらつづく榎木の朗読。

 <市道・午後>
     油照りの真夏日。ひまわりの黄色が眩しい。
     積乱雲と青空。遠景。
     有理の自転車が過ぎる。
     有理、左手にアイスキャンディを持って、風を受けて走る。
     軽い上り坂。有理、器用にシフトダウン。ワンテンポ遅れてチェーンが噛む。
     自転車は上り坂、なかなか進まない。片手運転では仕方がない。
     有理、アイスキャンディをくわえ、両手でハンドルを握る。立ちこぎ。
     油が切れかけているのか、音を立てているチェーン。
     上りきり、自転車を降りる有理。キャンディをくわえたままでスタンドをかけ
る。
     右手にアイスキャンディを持ち替え、左手で汗をぬぐう。
有 理「暑い……」
     前歯でアイスキャンディをかじり、しゃがみこむ。
     自転車、後姿の有理、陽射しと緑。
有 理「(OFF)……暑い」
     思い出したように、どこかからか蝉が鳴く。
     有理、アイスキャンディをかじり終わり、立ち上がる。
     アイスキャンディの捧を放る。
     蝉の声、徐々に大きく。
有 理「(つぶやくように)……うるさい」
     眩しい。手のひらをかざす有理。
     轟音。
     有理、見上げる。
     着陸態勢の戦闘機が見える。けれど遠い。
有 理「飛行機……」
     音は聞こえるが、機体はよく見えない。
     有理、目を細める。彼女はあまり目がよくない。
有 理「ひこうき、ひこうき」
     轟音、蝉の声とクロス・フェード。
有 理「飛行機……」
     着陸してしまうと、ここから戦闘機はまったく見えない。
     もとどおり、蝉の声ばかりが響く田舎道にたたずむ有理。
有 理「(突然、大声)ああーーーーーーっ!」
     両腕を上げて、伸び。
有 理「(両腕を上げたまま)汗臭いや」
     と、携帯が鳴り出す。
     カバンの中の携帯電話。ストラップは控えめ。素っ気ない携帯。
有 理「(相手が誰かわかっている)なによ」
     カバンのファスナーを戻す。
有 理「いま? 秘密。……あとでノート貸してよ。……わかってるって、出席日数の計
    算くらいできてるから。……あとは、うんうん。チャキがノート貸してくれれば、
    そうそう。オッケーオッケー」
     有理、しゃがみこむ。
有 理「これから? うち帰る。……だって、汗臭いもん。耐えらんない。……昨夜? シ
    ャワー? ……だから、エロなんだってチャキはさー。……マジで。エロエロ。
    ……うん、うん、うん。……違うって。あいつと会ってんじゃないってば。チャ
    キしつこいよ。……うん、うん。じゃあ、うん。また、明日ね。……ホントだっ
    て、帰るって。うん。はい。じゃあね、バイバイ」
     立ち上がり、やけに力んで通話終了ボタンを押す。
有 理「(吐息)」
     蝉が鳴いている。
有 理「だから、うるさいってば」
     蝉の声、止まらない。

 <幹線道路・夕方>
     電柱、街灯、鼻を鳴らす犬。
     自転車をこぐ有理。
     爆音。
     かなりの低空をパスしていくボーイング747。
     自転車を停めて見上げる有理。
     その表情。
     目がかすかに潤んでいる。風を受けて前髪が額を隠す。

 <歩道橋>
     自転車を押している有理。
     左手で携帯電話をいじっている。
     見事な夕焼け。
     ふと立ち止まり、眼下を流れていく車の列を眺める。

 <住宅街・団地>
     団地。
     東京オリンピック以降、全国に蔓延した、素っ気ない建物。
     有理の自宅はここの一角にある。
     自転車のスピードが明らかに落ちている。
     電話ボックスが明るい。
     団地の公園で子供たちが遊んでいる。ブランコ、滑り台。
     遠くに聞こえる小学校のチャイム(新世界交響楽第2楽章)。
     とある棟で有理、自転車を降りる。
     駐輪場に自転車をしまい、朝のように、荒っぽくカバンを引っつかみ、入り口
     へ。

 <同・中>
     階段は薄暗い。
     カメラは上階から有理を待つ。一段飛ばしで、けれどゆっくりと上がってくる
有理。
     三階と四階の踊り場で、有理立ち止まる。窓から夕焼けが見える。
     閉められた窓を有理、開ける。
     風が吹き込む。
     夕焼けがピーク。
     着陸していく旅客機が見える。ここは空港が近いのだ。
     ほぼシルエットの有理と、旅客機の翼端で明滅する衝突防止灯のストロボ。
     わずかな時間、外をながめていた有理、踵を返して階段を上り、鉄の扉を開く。
     そこが、彼女の自宅だ。

 <加苅家>
     玄関は雑多。シューズボックスの上には母親が作った陶器が並ぶ。
     靴を脱ぎ飛ばす有理。弾みで古新聞の束が崩れる。コントのようなタイミング
     で。よろめく有理。
有 理「(つぶやき)ふざけんな!」
美 絵「(声)ユーリ? 帰ったの?」
有 理「(崩れた束を適当に直しながら)帰ったよ」
     片手間で古新聞を積みなおす。が、肩にかけていたカバンがずり落ち、今度は
     カサ立てが倒れる。
有 理「……」
     物音を聞きつけて現れた母・美絵。
     娘の有理と背格好は似ているが、有理より人懐っこい表情が印象的。
美 絵「倒しちゃった?」
有 理「こんなところに積むから」
美 絵「(倒れたカサ立てを戻しながら)仕方ないじゃない、置くところがないんだから」
     有理、靴を脱ぎ、無表情に玄関を去る。
     崩れた新聞の束を整える美絵。

<同・居間>
    生活感にあふれた居間の風景。
    テレビがつけっぱなしで、ニュースが流れている。
    カーテンはまだ引かれておらず、有理、カバンを肩にかけたままで居間を横断
    し、カーテンを引く。外は暗い。
    美絵は玄関からそのまま台所に入る。居間は有理ひとりだ。
    有理の後姿(立ったまま座ろうとしない)。
美 絵「(声)昨夜は、広司君と一緒?」
     びくりと振り向く有理。表情が硬い。
美 絵「隠すことないでしょ。一言言ってくれればいいのに。あの人(父)は残業で遅い
    し。ご飯何人分用意するか困るんだから」
有 理「(テレビに向き直って)ごめん」
     何かを炒めている音。
美 絵「今日は家にいるの?」
有 理「あたし?」
美 絵「他に誰がいるの?」
有 理「(家に)いるよ」
美 絵「青椒肉絲。食べるでしょ」
     有理、リモコンを取り上げ、ニュースチャンネルを変える。
有 理「うん」
美 絵「早く制服着替えなさい」
有 理「……うん」
     バラエティ番組にチャンネルを切り替えたまま、居間を出て行く有理。
     炒め物の音、テレビの音。誰もいない居間。
     と、美絵が居間にやってきて、リモコンを取り上げ、ニュースチャンネルに戻
     す。そして去っていく。
     アナウンサーが原稿を読み上げる声。


 こんな感じですよ。
 どうします?
 ずーっとこんな感じですよ。
 ちなみに、この主人公、「加苅有理」って名前ですが、拙作の「海峡の光」に出てくる「ユ
ーリ」と同姓同名ですね。困ったもんですよ。ネタがないんですよ。
 これ、まだ完結しておりませんで、続きを早く書かないと。
 困ったもんですよ。


                   結局


世界は


             ダークで




                         困ったもんだ



               いつまでも




                         


                           青い






             フィルム











が







          印象的。












 なので、バナナを食って煙草を喫います。
 できれば風呂にも入りたいですね。
 体臭は却下ですよ。
 臭いのは。
 中でも納豆、ネギ、鉛筆、すっかい奴、更衣室の床の匂いがする奴らは却下です。

 というわけで。


 俺のバナナが待ってる。



(2004-04-09)



●つまらん、戻る!●