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ヴェルナー

 
 毎度毎度嫌になる。
 どうもわからないことがひとつだけある。
 嘘です。嘘をつきました。
 わからないことだらけです。
 世の中は。

 そして、一度でも自信について考えたことが終わりだ。
 わかっている。
 わかっていない!

 つまらん、おまえの話はつまらん。

 音楽の話をするべきなのかどうか。
 ずっと考えてましたが答えが出ませんでした。

 よく眠れましたか?

 いえ、全然眠れません。
 だから困ったのですよ。
 全然眠れません。
 しかし、眠りに入る瞬間を憶えていられますか?
 憶えていないのです。
 誰かいるんでしょうか。
「あ、俺はいま、たったいま眠りにつこうとしている! 俺は眠るんだ眠るんだ眠るんだ」
 そんなことを考えていては絶対に眠れません。あきらめてください。

 しかし!
 気がつきました。
 すべてが嘘だったのです。
 天使の羽根を拾いに行ったはずのチャガーリンは、森の木陰でヤガーばあさんに出会い、
そのまま彼女の小屋に連れて行かれて、気がついたらザクースカを食わされていました。
それがなかなかに美味しいのです。ええ、決定版です。
 天使の羽根は結局見つかりませんでした。
 なぜならば、天使がそもそもこの世にいない架空の出来事だからですよ。
 そうすると、ヤガーばあさんもこの世にはいないはずなのです。
 チャガーリンは、ペチカの前に座って暖を取りながら、レコードでムソルグスキーの「展
覧会の絵」をだらだら聞いていたことに気づきました。
 夢だったのです!
 すべてが!
 森の木陰でヤガーばあさんに出会ったのも、彼が妄想した架空の現実ですよ。
 そのことに気づいたとき、チャガーリンは気づきました。
 しまった!
 すべて嘘だった!
 すべてが虚構だった!
 俺自身が嘘の塊じゃないか!
 ゆるさん!

 ヴェルナー中尉は日本に来たのがはじめてでした。
 日本という国についてもよくわかっていませんでした。
 東洋にある科学技術の進歩した国だということしか知りませんでした。
 それでも、メッサーシュミットがBMWのエンジンを積んでいようが、川崎がダイムラ
ーベンツのライセンス生産品を搭載しようが知ったことではありませんでした。
 ヴェルナー中尉はあまり射撃が得意ではないのです。
 MG-42が「ヒトラーの電動ノコギリ」と呼ばれているのは知っていましたが、日本製の
機関銃がどれもろくでもない性能しか持ち合わせていません。
 知ってましたよ。
 すべて。

 ろくに考えないから、すぐこうなるんだ!
 何かください。
 お腹がすいているんだね。
 たんとお食べ。
 キャキャキャ。
 くぺ゜゜゜゜゜

 よくわかっていないようだな。
 もう歩かなくていいぞ。
 そ、そんな。
 わかっているだろう、おまえは知りすぎたんだ。
 そんなバカな、俺は、俺は組織のために!
 ご苦労だった。おまえはずいぶん働いてくれたよ。それは局長もわかっていらっしゃる。
 だったら、だったらなぜ。
 知りすぎたんだよ、おまえは。
 ああ……、神様。
 おや、神様なんてこの世にはいないんだよ。もっとも、もうすぐおまえはこの世とお別
れだ。あの世で神様と仲良くするがいいさ。
 
 フッフッフッ。


(2004-04-23)



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