彼方から発信された電波を、SETIプロジェクト(The Search for Extraterrestrial
Intelligence)はキャッチし分析し、それが人工的なもの(ここでいう「人工的」とは、
「知
的生命体」の意思によって操作された形跡のあるもの、という意味として捕らえてほしい)
であるかどうかを判断する。果たして人類は宇宙で孤独なのか。知的生命体は人類以外、
この宇宙には存在していないのか。
知的探究心と孤独感が、私たちを包み込んでいる。
かつて冷戦下、全面核戦争の恐怖があった時代、私たちのすぐ手の届くところに「人類
絶滅」の危機があった。
全面核戦争はイコール人類文明の崩壊を意味する。
全面核戦争の恐怖が去ったあとは、環境の激変が待っていた。自らが招いた環境変化で
ある。二酸化炭素の大気中濃度の増加による温室効果、そしてそれに伴なう異常気象、海
水位の上昇、食糧危機、大量絶滅。危機は去っていなかった。
SETIは、そんな危機感からも人類を救うべくスタートした。
高度に発達した文明は、危機を回避し、あるいは危機を回避する方法を知っている文明
である。人類文明がそれら高度に発達した文明と交流することによって、文明の衰退、大
量絶滅を回避できるという考えもあるからだ。
しかし、否定的なコメントも多い。
生命が発生する条件は厳しい。
恒星の大きさ、光度、惑星の数、惑星から恒星までの距離、惑星の大きさ。運良く、本
当に運良く惑星に生命が生まれたとしても、そこから数千万年、数十億年の時を経て、知
的思考が可能な生命に進化することができるかどうか。まさに可能性の低さは天文学的数
値である。
果たして知的生命体が発生したとしても、「すれ違い」という言葉もある。
現在は宇宙が誕生してから150億年後の世界だといわれている。太陽が誕生し、太陽系
が形成されてから46億年。人類が誕生して300万年。新人類へと進化したのがおよそ5
万年。文明らしきものが形成され始めたのが4千年前。科学技術が進化し、宇宙へ飛び出
したのはたかだか50年前。人類文明は確かに現在存在している。が、他の惑星に文明が
発生して、高度に発達したとして、それが1億年前の出来事だったらどうだろう。私たち
と彼らは出会うことがない。
また、それらの異文明が存在したのが、2千年前だったらどうだろう。地球ではようや
くイエス・キリストが生誕し、日本はまだ国家としての体を成していなかった。そんな状
態で異文明と交流しても、こちらが相手を理解できないか、または蹂躙されて終わるだろ
う。
これがすれ違いだ。
もちろん逆もある。
人類が高度に発達した文明を手に入れ、はるか宇宙への旅が可能になったとして、ある
惑星で文明を発見しても、それが地球でいうところの四大文明レベルであったら。石器時
代程度の文明しか持っていなかったら。交流することなどできない。
高度に発達した文明は魔法と区別がつかないとは言われるが、せいぜいが神様扱いされ
るだけで、双方に利益はない。
それでも私達は「仲間」を探している。
この宇宙に、私達は孤独なのか。
わたしはそうは思わない。
全宇宙には、数千万、数億もの銀河が存在しているという。
銀河はまた、数千万、数億の恒星で構成される。なかには惑星を持つ恒星も多いだろう。
その中のいくつかの惑星は、地球と同じく、恒星からの距離もちょうど良く、いわゆる「連
続生存可能領域」に位置している惑星もあるだろう。そうなれば海が存在し、生命が発生
している可能性も高い。生命が発生すれば、進化が起こる。知的生命体が発生したとして
も、まるで不思議はない。
可能性が数億分の一として。
全宇宙の恒星の数からすれば、ずいぶんと高い可能性ではないかと思う。ただし、それ
らの文明たちが交流できるかといえば、私はできないと思う。
恒星と恒星の距離は離れている。地球から最も近い恒星はもちろん太陽だが、太陽から
最も近い恒星は、4光年からの距離がある。
4光年である。
太陽から地球までの距離を1天文単位と呼ぶが、太陽系の果てまで飛んだとしても1光
年には届かない。人類が現在持ちうる技術を動員しても、核融合エンジンを搭載した宇宙
船は、火星まで半年の航海が必要になる。ホーマン軌道を描くことができれば三ヶ月だ。
木星までは数年、土星まではどれくらいかかるだろう。惑星探査機のボイジャーが太陽系
に別れを告げるまでに20年ほどの時間を要してしまった。人生をかけるのであれば太陽
系を離れることもできようが、それはあまりにも非現実的な話だ。他の惑星系への旅など、
絵空事に過ぎない。だから、異文明が存在したとしても、私達は彼らと交流することなど
できないのだ。
SFでは、空間をゆがめ、無限の距離を一気に跳躍する「ワープ航法」などが描かれる。
どうもこれも絵空事で、強力な重力などが空間をゆがめることは、計算上証明されている
し、物質が物質を突き抜けてしまうような効果(これを「トンネル効果」と呼び、素粒子
レベルでは確認されている)も実証されているが、しかし、人が乗れて、しかも大型であ
るはずの宇宙船が空間を跳躍するような理論は、ない。また、研究もされていないようだ。
宇宙創生の秘密に近づく、というために、ワームホールやスペースストリングス、多次
元宇宙といった論理を研究する研究者はいるが、SFで描かれるような超空間航法を研究
している研究者を、私は聞いたことがない。
光速は絶対で、また光速を越えることはできない。また、物体が光速に近づけば近づく
ほどに、推進力そのものが質量に変わってしまい、光速飛行をするには「無限大の推力」
が必要になってしまう。また、光速まで加速するだけでもどれだけの時間がかかるかわか
らず(1G加速をしてもたかが知れている。スペースシャトルでかかるGはたかだか4G
程度だそうだ、しかも減速時)、加速したら減速しなくてはならず、減速に必要な推進力を
考えても、宇宙船のペイロードがどれくらいの大きさであるべきか想像もつかない。
ようするに、現在から近未来まで見通して、人類が「ワープ航法」や光速飛行を実現す
ることはありえない。
異文明が存在しても、たがいに相手を思うだけの片思いで、交流することなどできない
かもしれない。
ということを考えておりました。
(2004-05-07)