●ライヴレポート CONIFERライヴツアー2003 ミナモノミナミ●
CONIFERが札幌に戻ってきた。
初雪の声が聞こえた頃、CONIFERはすっかりくたびれていたらしい。森澤淳のラジオ
番組「MUSIC HOT SCRAMBLE」にて、こんな発言があった。
ライヴは好きなんですよ。好きなんですけど、やっぱり体力的には結構きつい。それで
ていて、来年に出すつもりでいるアルバムのこともあるから、なんとなく全員ヘロヘロに
なっています。
でも、ライヴは楽しい。見に来てくれる人たちがいるっていうのは、やっぱり嬉しい。
こんな奇妙なバンドなのに、よく見に来てくれるものだなぁと、感動します。ありがとう。
アルバムはたぶん、雪が溶ける頃には出せるんじゃないかなと思ってます。相変わらず
の季節感ゼロのアルバムになっちゃうと思うんだけど、期待してください。
※ ※ ※
実質的なリーダーの森澤は、疲れ果てていると笑った。それでも週一度のラジオ番組の
ために、毎週札幌へはやってきている。もっとも、彼のもともとの住処が札幌だというこ
ともあるだろう。
※ ※ ※
北海道は好きです。
やっぱりずっとここで暮らしてきましたから。北海道を離れて暮らすつもりはないなぁ、
今のところ。ほとんど東京に住んでいるような時期もあるけれど。でも、意地でもここか
らは離れたくないなぁと思っています。
※ ※ ※
ベースの北條次憲は北海道公演を控えて、なんと風邪を引いたという。南からスタート
したCONIFERの2003年ツアーは、真夏の八月、福岡をスタートした。その後、広島、
大阪、名古屋、東京、前橋、仙台、そしてラストが札幌。いずれも規模はそう大きくもな
く、しかしデビュー当時のライヴハウスを転々としたツアーと比べると、質量ともに大き
く進化した。
札幌は、サンプラザホール。
開演は午後6時。
地下鉄の駅からほど近い会場には、すでにCONIFERのファンは集まっていた。雪がち
らつくなか、僕は危なく横断歩道で転ぶところだった。北海道の12月はさすがに寒い。
ツアーパンフは森澤と積森の手によるもの。文章を森澤が、写真を積森。学生時代から
写真とギターが趣味だったという「ツモリン」。CONIFERらしさ、というものにはこだ
わっていないらしいが、積森が描き出す屈折した世界は、写真でも音楽でもそれは変わら
ないらしい。抑えた色調の装幀写真は、積森が気に入って採用されたものだという。落ち
葉とベンチと、誰かの手。誰の手なのかはわからない。ファンの間では、キーボードの碓
氷の手であるというのがおおかたの予想。僕はその長ひょろいツアーパンフを購入し、開
演時間をホールの外で待った。
そういえばギターの積森は、ファンの間から「未佳ネエ」と呼ばれている。背が高く、
ちょっとボーイッシュな雰囲気を持つ積森は、キュートな魅力で売ろうとするアイドルた
ちとは違う。無表情で無口。もうひとりの「ミカ」である北崎美香が小柄であることに対
してでもあるらしいが、親しみを込めて「未佳ネエ」と呼ばれることを、実は本人は気に
入っていないらしい。森澤がこれまたラジオ番組で打ち明けていた。ファンの間では、「未
佳ネエ」派と「ツモリン」派が分かれているが、この際それは忘れることにしよう。蛇足
だが、メンバーの間では、「ツモリン」と呼ばれているそうだ。
ライヴは唐突に始まった。
CONIFERのライヴの特徴として、CD音源、ようするにスタジオ録音バージョンとラ
イヴバージョンでは、アレンジがまったく違うということが挙げられる。
オープニングナンバーは、積森と北崎のギター、アルペジオが踊る「緑の団体」。ここし
ばらく、ライヴ開始の定番になっている曲だ。ほとんどエフェクトのかからない二人のギ
ターは気持ちがいいくらいに息が合っている。やや置いて碓氷のピアノ。森澤はシーケン
サーを操作しているのか、ディスプレイから顔を上げない。タイトなドラムは、やはり永
井公弘。風邪引きの北條は、やや控えたベースライン。いつものCONIFERだ。僕はほっ
と安心する。
それにしても、今回の「緑の団体」も、まるでアレンジが変わっている。よくもまあ思
いつくものだと感心するが、原形をとどめているあたり、それは彼らの自制心か。やる気
になればまるで別物の曲に仕立て上げることもできると森澤は笑う。今回の「緑の団体」
は、比較的スタジオ録音バージョンに近い。そして、ツモリンのギターソロが映える。切
れている、そんな印象。
引き続き、「甘い孤独」。「緑の団体」から北崎のギターが止まらない。左利きのツモリン
と、右利きの北崎。ヴィジュアル的にも狙っているのか、バランスが絶妙。「甘い孤独」で
は、かわいらしい外見からはあまり思いつきそうにないハードなカッティングを北崎が「お
見舞い」する。オーバードライヴが効いた彼女のギターは積森の考え込むようなプレイと
はひと味違う。「ギター少女」に北崎ファンが多いというのも頷ける。
一息つくように、森澤のMC。ラジオのしゃべりそのままなのが観客の笑いを誘う。も
う一つの番組なのかもしれない。まずは時候の挨拶から。
森澤はMCになると生気を取り戻したようにしゃべる。とにかくしゃべる。ほかのメン
バーが辟易するというくらいしゃべる。観客も笑う。彼がミュージシャンなのか、それと
もラジオパーソナリティなのか、よくわからなくなってくる。
が、CONIFERの曲は、おおむね森澤が書いているものと積森が書いているもの、その
二つに分かれる。碓氷作の曲ももちろんあるが、ほとんどの曲は森澤・積森作だ。この二
人の曲はCONIFERという記号の元で、不思議な形に融合されて統一される。積森の曲は、
彼女の性格を反映しているのか、猛烈な屈折を見せる。不可思議な転調、ちょっとコピー
できそうにない複雑なギターソロ、そして屈折し鬱屈し、しかし寂しい歌詞。
対する森澤は幾分明快だ。もちろん独特の「昏さ」というのはある。それがCONIFER
のスタイルだから。が、積森の曲よりはわかりやすいのだ。僕は、……どっちも好きだ。
もちろん。
長いMCが開けて、暇そうにしていた積森がギターを持ち替える。フェンダーのテレキ
ャス。ちょっと意外。彼女はずっとストラトキャスター(またはヤマハのストラトタイプ
のギター)ばかりを使っていたからだ。背の高い彼女にはどんなギターも似合う。照明が
落とされたステージで、積森のピックが、ほんのわずかに光った。
「月の森」。
森澤が「今回のライヴは、ちょっとした原点回帰なんですよ」そう語っていたことを思
い出す。デビューアルバムからの曲。そして、デビュー曲。僕がはじめてCONIFERに触
れた曲。いま聴いても新鮮。控えめな積森のギターは、きっと抑えているから。抑圧が、
きっと彼女のキーワード。POPなイメージの強いCONIFERにおいて、やはり積森の存
在はやや異質なのかもしれない。自動人形のようにギターを引き歌う彼女の姿にはけなげ
さすら漂う。それは悲壮感かもしれない。
ひとつひとつの音を大事に扱う。壊れ物をそっと持ち上げるようなCONIFERの音作り
は、やや行き過ぎると疲れてしまう。が、全員がまとまると、それは音楽になっている。
不思議なバンドだ。「針の山」から「35o」。懐かしいナンバー。それもアレンジが強烈だ
から、懐かしさを感じない。
つづいて、短いMC。めずらしく北條がマイクを持つ。積森と北崎はやや下がり、並ん
で椅子に腰掛けた。どことなく演劇を見ているような錯覚を憶えるのは、CONIFERのラ
イヴのもう一つの名物。北條はメンバー唯一本州出身。学生時代に北海道へ渡ってきて、
それでCONIFERに触れた。
デビュー当時のCONIFERのベースは水谷明だったが、彼は「オフリミット」を最後に
脱退、その後、北條が加入した。もともとはパンクロック好きだったという北條だが、彼
の話もまた森澤に劣らない。今日は、仙台から札幌への移動中の話。盛岡でわんこそばを
食べた? よもやCONIFER、陸づたいに北海道へ上陸したのだろうか。どうもそうらし
い。永井が合いの手を入れる。「疲れたよ、だから俺は飛行機にしようって言ったんだよ」。
北條が「俺のおかげてうまいもの食えただろう?」といえば、北崎が「食べ過ぎなんだっ
て」とつぶやく。どうも全員のマイクがHOTになっているらしい。よくわからないMC
だ。
MCが開けて、「ニセモノ街路樹」。
ニセモノニセモノニセモノニセモノ 木樹危機
おなじみのコーラスは、森澤と北崎。積森のヴォーカルが吹っ切れたように明るい。
続き、「架空線」「コロモガエノヒ」とインスト曲。CONIFERの神髄は、この一連のイ
ンスト曲だと思うのだが、どうだろう?
原点回帰がキーワードという今回のライヴ、アレンジは控えめだった。
積森のギターもいつも通り。噂では少々体調を崩しているとのことだったが、見たとこ
ろ元気そう。北崎のパワフルプレイも健在で、その後「架空線」「夏の扉」からのナンバー
を立て続けに5曲、そして、僕は来年にでるというアルバムの片鱗に触れる。
タイトルは、「マテリアル」だという。
「青色メルトダウン」。
積森の曲だ。難解ではない。しかし刹那的で、やはり屈折した歌詞。しかし飛び抜けて
POPな曲調。流れるように演奏されたので、ほかの曲との違和感はないのだが、それでも
僕は思った。どこか、違う。「夏の扉」以来約2年ぶりとなるフルアルバムで、CONIFER
の新しいスタイルが見られるのではないか? そんな期待を起こさせるナンバーだった。
「失調集」。
タイトルが意味不明だが、曲は明快だった。森澤の曲。POPなのは「青色メルトダウン」
と変わらないが、曲解するとラヴソングにも聞こえるこの曲、もしかすると新しい
CONIFERのひとつの方向なのか? 僕は聴きながらなんとなくわくわくしていた。
そして、いよいよライヴは終演を迎える。
おなじみの曲。
「消える星を数えました」。
このイントロが流れ出せば、彼らとも次のライヴまでお別れだ。
ライヴアレンジが強烈だった。テンポは変えていないらしいが、積森と北崎のギターが
そっくりスタジオバージョンと入れ替わっていた。要するにあの難解極まりない積森のフ
レーズを、北崎がそっくりそのまま弾いているのだ。演奏者が変わると印象も変わる。答
えを探しつづけているかのような積森のギターも、北崎の手にかかれば、「答えなんてわか
んなくたっていいでしょ」状態だ。これは意外。
そのままなだれ込むように、終演。
新しいCONIFERが、ちらつく雪の向こうに、何となく見えたような気がした。
最後、森澤が言う。
「実は最近、TRUSH BOXというバンドのライヴに出てしまいました。知っていました?」
知り合いのライターに聞いた。
「コラボレーションとかするつもりはないんですけど、なんとなく出てしまいました」
そう言って、最後の最後に、CONIFERがTRUSH BOXの曲を演奏した。
「約束はしてない」。
積森のヴォーカルが、切れ切れにたなびいて、そして終演。
可能性?
何となく見えたよ。
そんなライヴだった。
(2004-05-10)