石狩湾新港地域開発計画調査報告書
石狩湾新港地域開発計画委員会
1 石狩湾新港地域開発の意義
(1)石狩湾新港地域開発の必要性
札幌、小樽の両市とその周辺に所在する江別市、広島町、石狩町を含む札幌圏は、人口130万人(昭和45年国調)を擁し、北海道における政治経済、文化の中枢部を形成している。
とくにこれら市町の中心をなす札幌市は全道の50%をこえる中枢管理機能を集積しているが、今後の発展に対処するためには札幌圏の流通および生産機能を飛躍的に拡充強化する必要がある。このため、周辺地区の適地開発のほか石狩湾沿岸地域に流通港湾を核とする総合流通基地の建設および消費財を中心とする都市型工業の開発等を総合的に推進することにより、札幌圏の物資流通の円滑化と工業生産の拡大をはかり、併せて既存市街地の再開発新市街地の計画的形成をも促進することができる。
また、わが国経済社会の国際化に伴って将来北方圏との交流が活発となり、北海道が北方圏の要衝として重要な地位を占めるものと期待されるが、とくに札幌圏はその中枢として拠点的役割を持つこととなろう。
このような情勢に対応するため第3期北海道総合開発計画においては、石狩湾沿岸に流通港湾の整備をはかることとしているが、この計画を推進するため石狩湾新港とその背後地域を一体とした開発を行ない、日本海側地域と太平洋側地域との均衡ある発展を促進する必要がある。
(2)札幌圏およびその周辺地域との関連
札幌圏は道央地域の核として、これに隣接する市町村との連携のもとにその都市機能を拡大しており、これに伴う消費財を中心とした都市型工業は苫蘭、札樽を結ぶ国道36号線および5号線周辺に集中して立地しつつある。一方、国道36号線沿いについては、おおむね東側は農業開発地帯であり、西側は防衛庁用地のほか自然保護地域が広がっている。これらの中で通産省工業適地調査によれば、約2,300ヘクタールの工業適地面積の確保が可能であるが、昭和60年の工業立地規模から推定すると、更にこの地域に相当規模の工業用地が必要となる。他方、札幌市街地周辺および国道沿線は、地価の高騰が著るしいため、新たな大規模用地の取得については、この面からも困難視されているので、石狩湾新港背後地域に用地を求めることが適切である。
| 地 区 |
団 地 名 |
工業適地 面 積 |
売却済 用 地 |
札 幌 圏 |
琴 似 発 寒 手 稲 稲 穂 銭函工業団地 江別工業団地 広島工業団地 大曲工業団地 |
256ha 232 155 229 120 66 |
120ha 16
43 20 |
| 周 辺 市 町 |
北信濃工業団地 恵庭工業団地 戸磯恵南工業団地 美々工業団地 |
367 90 126 690 |
99 29 |
合 計 |
2,331 |
327 |
|
(注)1.通産省の工業適地調査による。
2.売却済は、昭和45年度末現在である。
(3)第3期北海道総合開発計画における位置づけ
北海道の開発は、国によって計画的、組織的に進められてきた。戦後は、北海道開発法に基づき、国は北海道総合開発計画を樹立し、これに基づいて積極的に開発を推進しているところである。現在、昭和46年度を初年度とし、昭和55年度を目標年度とした10ヵ年にわたる第3期北海道総合開発計画が「生産と生活が調和する豊かな地域社会の建設」を目指して実施に移されているところである。この計画は、北海道の長期的、飛躍的発展の起動力となる先導的開発事業を計画的重点的に展開するものであり、この中で新交通体系確立の一環として流通港湾の整備をはかることとし、石狩湾新港の建設はその主要なプロジェクトの一つとして取り上げられているところである。
2 石狩湾新港地域の性格と概要
(1)計画地域の概況
(2)計画地域の特性
この地域は、石狩川の河口をひかえ、歴史的にも古く、幕末の頃から本州との交流によりひらけた地域であり、また、開拓の初期から農業、水産業を主要産業として発展してきたが、砂地開田の成功により耕地の多くは水田として利用されている。
さらに、本道の首都である札幌と隣接し、都心から近距離にあるため、近年、住宅団地、工業団地として開発されて来ているが、なお、広大な用地を有していることから、札幌圏における新たな外縁部として急速にその開発が期待されている。一方、札幌市周辺の緑地帯として、あるいは住民の海浜レクリェーションの場として広く利用され
ている。
この地域は、札幌圏都市計画区域に含まれているが、石狩湾新港の建設が予定されている石狩湾沿岸と、その背後地については、新港の位置確定とこれに伴う総合的な土地利用計画が立案されるまでの間は、市街化調整区域として保留されている。
札幌圏の人口および土地利用の現況は次のとおりである。
市町村 |
計 |
宅地 |
田 |
畑 |
山林 |
原野 |
牧草地 |
その他 |
札幌市 |
1,117.98 |
77.37 (6.9) |
40.74 (3.6) |
107.41 (9.6) |
672.52 (60.2) |
55.48 (5.0) |
0.65 (−) |
163.81 (14.7) |
小樽市 |
234.94 |
10.59 (4.5) |
1.92 (0.8) |
27.14 (11.6) |
54.83 (23.3) |
23.07 (9.8) |
0.48 (0.2) |
116.91 (49.8) |
江別市 |
188.83 |
6.05 (3.2) |
51.38 (27.2) |
45.54 (24.1) |
17.59 (9.3) |
12.49 (6.6) |
0.15 (0.1) |
55.63 (29.5) |
石狩町 |
128.77 |
4.23 (3.3) |
24.31 (18.9) |
20.45 (15.9) |
6.51 (5.0) |
23.57 (18.3) |
7.55 (5.9) |
42.15 (32.7) |
広島町 |
121.05 |
1.20 (1.0) |
9.48 (7.8) |
19.69 (16.3) |
58.26 (48.1) |
7.86 (6.5) |
0.36 (0.3) |
24.20 (20.0) |
計 |
1,791.57(100.00) |
99.44 (5.6) |
127.83 (7.1) |
220.23 (12.3) |
809.71 (45.2) |
122.47 (6.8) |
9.19 (0.5) |
402.70 (22.5) |
3 計画の概要
4 工業開発計画
(1)札幌圏における工業の概要
札幌圏は、本道開発の中心拠点として、さらに道央の中核として発展してきた。
札幌圏はこうした立地条件を背景として直接大市場を持つ優位性のもとに消費財工業を中心とした諸工業が発達し、その工業出荷額においても昭和45年には3,225億円と全道出荷額の22%を占めている。
また、これらの業種別構成をみると、食料品製造業は圏域総出荷額の約40%を占めているほか、金属製品、出版印刷、紙、パルプ等消費指向型の工業が主体をなしている。
しかし、最近の立地動向としては既存工業地域における用地、労働力の確保難および道央地域の都市機能の高度化により電子部品工業、機械金属工業等のいわゆる都市型工業の進出が著るしい。
昭和年 区域 |
40 |
45 |
45/40 |
| 札幌市 江別市 石狩町 広島町 計(札幌圏) 小樽市 合計(札樽圏) 道央合計 全道 札樽圏/全道 札幌圏/全道 石狩町/札幌圏 |
105,611 14,885 268 416 121,180 44,891 166,071 348,752 770,370 22% 15% 0.2% |
218,234 24,317 1,329 6,273 250,153 72,410 322,563 814,887 1,512,829 22% 17% 0.6% |
206 163 495 15.07 2.06 1.61 1.94 2.33 1.96 |
(2)計画策定の方針
本地域における工業基地については、港湾を核とする流通基地の建設とともに、札樽圏における工業発展の動向を考慮し、総合的、計画的な工業基地の開発を行なうものとする。
また、計画の策定にあたっては第三期北海道総合開発計画のほか、札幌市、小樽市の長期総合計画、札樽経済協議会が行なった札樽地区開発基本計画を勘案し、札樽圏における工業の均衡ある発展に寄与するものとする。
(3)工業開発の方向
札樽圏の工業開発計画の方向としては、圏内における人口集積、各種都市機能の充実による大規模な消費需要の発生、労働力の確保の容易さ及び苫蘭地域における重化学工業との相互依存などから高次加工部門を主体とする消費財工業および機械工業などの都市型工業の発展が予測される。
このため、当該工業基地の開発方向としては、札幌市の中枢管理機能及び港湾を含む流通機能を十分活用し、本道の特殊性を活かした新たな技術開発による工業を誘導し、既存市街地の再開発等を考慮し、かつ、産業公害のない工業開発に重点を置いて策定した。
| ア | 本道の特殊性及び技術開発を期待する産業の開発。 (ア)冬季対策関連機器産業 (イ)住宅関連産業 (ウ)公害防止産業 (エ)空調、コールドチェン産業 |
| イ | 札樽圏を中心とした消費財工業 |
| ウ | 食品コンビナート |
| エ | 札幌市、小樽市の都市再開発に伴う工業 |
| オ | その他関連工業 |
(4)業種と規模
以上にもとづいて工業基地に誘導すべき業種と規模およびこれに要する工業用地、工業用水、従業員数は、別途策定した。
(5)関連施設の整備計画
本地域における企業の立地・生産の動向に加え、札樽圏のエネルギー供給の安定を確保するため、工業基地内に電気、都市ガス、熱供給等公益事業の施設を計画するほか、公害防止の一環として塵芥焼却施設等を設置する。
(6)工業用水の需給計画
本地域における工業用水の需給量は昭和60年(流通業務団地内業務用水を含む)で約10万t/日の需要となる。この需要に対応するため、札幌圏の広域的水利計画の一環として石狩川及び周辺河川等からの取水によって確保する。
また、工業用排水等については、各企業において一次処理を行なったのち、公共下水道により排水する。
(7)留意事項
| ア | 産業構造の変革および技術革新など予測し得ない変化が起り得る可能性があり、したがって、業種や生産規模および工業用地等について、これらの変化に対応できるよう配慮する必要がある。 |
| イ | 本地域は札幌市および住宅団地に近接しているほか都市周辺緑地となっているところから、自然環境の保全と産業公害の未然防止について十分なる措置を講ずる必要がある。 |
| ウ | 本地域における工業用水確保にあたり、地下水の汲み上げによっては地形的に地盤沈下あるいは背後住宅地域に干渉するおそれがあるので、企業の立地動向にあわせて合理的な水供給の体制を確立する必要がある。 |
5 交通計画
石狩湾新港の建設による背後地の土地利用に対応し、かつ札樽圏の交通体系の一環として交通施設を計画する。
(1)将来交通量の推計
交通量の推計に当っては、昭和43年に実施したOD調査を基本資料としたが、このほか札幌圏広域都市計画協議会および小樽市が行なっている交通解析資料と、石狩湾新港開発によって新たに物資流通および土地利用の変化を勘案して本地域の将来交通量を推計した。
(2)交通計画の基本方針
現行の都市計画道路網は、札幌圏及び小樽市をそれぞれ独立した交通圏域と考え、札幌圏は1環状5放射、小樽市は国道5号線と臨海道路を幹線とする梯子状型で組立てられており、札幌と小樽の結びつきは国道5号線による域外流入としてそれぞれ処理されている。しかし、石狩湾新港の建設およびその背後地における流通業務団地、工業基地の計画実施により、この地域が新しい交通を発生するとともに、それ等と関連する地域にも大きな変化を与えることになる。このような状態に対処するため主な交通施設は次の方針で計画する。
| ア | 石狩湾新港地域と札幌中心地区を結ぶ路線は、広巾員としてできるだけ住居環境を乱さない位置に配置する。 |
| イ | 石狩湾新港および背後の流通業務団地、工業基地と他と他の地域とを結ぶ広域幹線道路を設け、現在実施中の環状線および札幌新道とともに札幌圏の第3環状線的な役割を持たせて、既成市街地に対する交通負担の軽減をはかるとともに、札幌圏の外部を形成する地域の開発を促進する。 |
| ウ | 石狩湾新港および背後の流通業務団地、工業基地の広域的利用に対処するため、手稲方面から臨港鉄道を設ける。 |
| エ | 石狩湾地域に対する通勤は、主として高速軌道、バス等の大量輸送機関で対処する。 |
| オ | 石狩湾新港地域内の幹線道路は、港湾、流通工業の諸機能が有機的な連携を保つことができるネットワークとし、しかも除雪、植樹に対しても余裕のある広巾員道路を設ける。 |
| カ | 石狩湾地域は札幌圏のレクリェーション地帯でもあることからレジャー交通に対しても円滑に処理できる道路網とする。 |
| キ | 小樽港と石狩湾新港を相互に補完するため長期的な観点から交通量の解析を行ない道路整備の強化をはかるなど更に検討の必要がある。 |
6 土地利用計画
(1)石狩湾新港地域開発と広域的計画課題
わが国経済、社会の国際化と北方圏との交流を背景に札樽圏における近年の人口、都市機能の増大、集積と将来への展望に対応して、流通基地および消費財を中心とする工業基地の造成が要請されている。
そのための石狩湾新港の建設と後背地の開発は札樽圏に内存する地域の計画課題に取り組むことにより始めて地域開発の役割を果たすことになる。
それは無秩序なスプロールへの対応と新しい都市構造改造の戦略としての役割の2つである。また、この課題の解決には道央全体を展望した広域的改造戦略の必要性が増大し、2市1町を含め、札樽圏自治体の広域協力、広域計画の展開、実現を前提としている。
(2)開発の基本方針
石狩湾新港地域の位置づけを広域生活圏の構造よりみると、札幌都心より15粁に位置し、札幌市に依存する1次生活圏に含まれる。
広域レベルの位相として産業諸施設の立地をみると、苫小牧東部大規模工業地域の開発に伴って予測される生産、流通機能の一大集積、千歳空港、国道36号線沿いの工場立地、大谷地流通業務団地、丘珠空港と本開発計画とによって、一つの産業軸ともいうべき地帯を形成しつつあるとみることができる。
また札幌圏レベルの位相として市街化の動向をみると道都としての広域中枢管理機能の集積一都心を基点に同心円、放射状の市街化から、昭和35年以降にみられる小樽、江別方面への帯状市街化は、市民の都市生活に関連した文化、商業レクリェーション施設等で形成される生活軸としてみることができる。
したがって、開発の基本方針は次の条件を満たす必要がある。
| ア | 市民の生活の高度化および消費物資の多様化、大量化にそなえ、既存の市街地内企業の再配置を含めた十分な規模と機能構成にする。 |
| イ | 本地域における工業の立地は、消費財中心の業種構成とし、無公害で環境保全をはかったインダストリアルパークとする。 |
| ウ | 大谷地流通業務団地をへて苫小牧に、銭函をへて小樽に至る産業軸の形成を、自動車専用高速道路を中心にはかり、市街地と生産緑地を区分する枠組として機能させる。 |
(本報告書は、4月3日発表のものの抜粋である。)