地域自立のためのもう一つの足
生 井 宏
たくぎん調査部 調査役
<地域の熱いまなざし>
コミューター航空が今全国各地で熱い視線を浴びている。地域自立のためのもう1つの足として期待が大きいからである。
北海道の自立が叫ばれている今,
コミューター航空導入に地域での積極的な取り組みを望みたい。
そもそもコミューター航空とは何か。必ずしも明確な定義はないが,
一言でいえば小型飛行機による短距離航空輸送のことである。
コミューター航空は,
欧米で近年急速に発達している。特に米国ではコミューター航空の輸送旅客数は,
1982年には10年前の約3倍にあたる1,800 万人に達しており,
航空旅客総数の6%を占めている。コミューター航空企業数は245社を数え,
就航機数も1,857機にのほっている。 使用機は, 当初5〜6席程度の超小型機であったが,
次第に需要が増え大型化し, 最近では30〜40席のジェット機が就航している。
一方, わが国では, 現在「重量5.7トン以下, 定員l9人以下の小型飛行機で比較的短距離の2地点間を結ぶ航空輸送」をコミューター航空と呼んでいるが,
離島航空などに限定されてきたこともあり,
未発達の段階にある。コミューター航空の年間輸送旅客数は, 58年度で23万人程度であり,
航空旅客総数の1%にも満たない。コミューター航空企業数も6社と少ない。
<脚光をあぴる3つの理由>
こうしたわが国の現状で,
コミューター航空が今なぜ脚光を浴びているのか。その主な理由は,
次の3点にあるように思う。
1つは, 航空行政の大きな変化である。
小型飛行機による旅客輸送は, 従来原則として離島と直近本土間,
離島相互間の路線しか認められなかった。しかし, さる昭和58年5月,
「小型飛行機を使用して行う2地点間旅客輸送について」という運輸省航空局長通達が出されて,
その制限が撤廃され,
内陸間路線も可能となった。いわば日本の空が小型飛行機に解放されたのである。こうした運輸省の小型飛行機旅客輸送に対する方針変更の背景には、小型飛行機の技術的進歩による安全性の高まりと需要者の時間価値意識の高まりによる航空輸送需要の増大がある。
2つめには,
低コストで高速交通路網の整備が可能ということである。
新幹線の建設には1km当り約60億円, 高速道路を整備するにも1km当り約20億円かかるなど建設コストは膨大なものとなる。また,
地方空港でもジェット化空港となるとその建設費は300〜400億円かかる。現在の財政事情からみて,
新幹線、高速道路,
大型航空機による高速交通路網が急速に整備されることはかつてのようにはできない。
とりわけ,
地方ローカル線においてはなおさらである。こうした中で,
コミューター航空がもう1つの高速交通手段としてクローズアップされているのである。コミューター航空は,
滑走路長500m〜800m程度の空港でも導入可能であり, 空港建設費も,
揚所, 空港の大きさにもよるが5〜50億と安価ですむからである。
3つめは, 地域の活性化の手段として期待が大きいことである。
コミューター航空は,
航空輸送の大需要を見込めない小需要路線に適した高速交通手段である。
そのため, コミューター航空の導入は,
従来以上に高速交通手段の恩恵を享受できる地域を広げることとなる。地域の生活基盤が整備されるばかりでなく,
地域産業の振興に与える効果も大きい。中央・地方,
地方都市間の人の流れが増え,
それは地域にとって情報量が増大することを意味する。すなわち商取引チャンスの広がり,
情報量の増大による新商品の研究開発力の向上といったことを通して地域産業が活発化する可能性が大きい。また,
主要な観光地を結ぶことにより新たな観光振興の糸口となる可能性もある。
<採算面の雛しさ>
一方,
コミューター航空導入の最大の問題は事業採算の難しさである。
わが国のコミューター航空企業6社の損益状況は,
経常損益ベースでおおむね赤字を余儀なくされており,かなり厳しいと言わざるを得ない。
日本航空, 全日空, 東亜国内航空など系列親企業からの技術, 資金,
人材, 業務運営ノウハウの援助や, 地方自治体からの資本導入,
補助金援助などを受けどうにかぎりぎりで経営が成り立っているのが現状である。そこで私どもは,
仮に道内のコミューター航空の路線を想定し,
ラフな姿ではあるが採算面の試算をしてみた。収入は,
利用率が従来路線実績並みを前提として,
支出は人件費等をかなりシビアーに設定したにもかかわらず,
かなり長期に亘って累積欠損が消えない,
という厳しい見通しになった。機材費負担が経営を圧迫する大きな要因である。
<広大な北海道にこそ必要>
こうした事業採算の因難さといった問題点を抱えながらも, 先の3つの理由から,
現在全国各地でコミューター航空導入熱が高まっている。特に,
地域的には, 兵庫県, 三重県, 西瀬戸経済圏(広島, 山口, 福岡, 大分,
宮崎, 高知, 愛媛の7県で構成)など西日本地域の動きが活発である。しかし,
北海道は全国土の20%を越える広さを持ちながら, 新幹線,
高速道路の整備が他地域に比べて極端に遅れている。この広大な北海道でこそ積極的な取り組みが必要なのではないであろうか。すでに設置されている道内14空港をも充分に活用しながら,
コミューター航空を含めた航空ネットワークが早期に整備されることが望まれよう。
<今後の取り組みにあたって>
最後に今後の取り組みにあたって一言申し述べておきたい。
コミューター航空が, 今後地域に定着し,発展してゆくためには,
事業採算を阻害している航空規制の緩和,
あるいは国の補助政策が叫ばれていることも事実である。たとえば,
現在19席以下に規制されている航空機材キャパシテイの拡大や,
空港整備特別会計からの機体購入補助などである。
しかし,
なによりも重要なことはコミューター航空導入に取り組む地域官民の熱意である。「あれば便利」といった他力依存型の意識を捨て,
地域の発展にとってのコミューター航空の意義を明確にし,
事業採算の成立に向けての知恵と工夫が不可欠となろう。
事業主体の徹底した企業努力は勿論のこと,
地方自治体の積極的な取り組みが期待される。