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北海道における航空輸送について

奥 泉  省 吾

はじめに
 「札幌は東京に次いでファッション早い都市だ」と巷間でよく言われています。このことは航空によれば、札幌は東京に時間的に一番近い都市であるからで、如何に道民の方々が、頻繁に航空を利用して、内地との間を往来し新しいものを吸収しているかが伺い知れるわけです。
 航空がこれからの北海道の発展のために必要な交通機関であり、そして他の交通機関との整合性が必要である等々、私の習得した知識に私見を加えて以下順を追って述べてみたいと思います。

(1) 北海道における航空利用状況
 現在の人的・物的流通の近代化及び近代生活が要求している迅速性,時間的価値観のアップ等々により、長距離区間の旅行に航空が他の交通機関よりよりよく利用されているかは御案内のとおりであります。では道民はどの位航空を利用しているかと言いますと、l976年(昭和5l年)に全国約2万人を対象として、面接により行った調査結果によりますと、普及率(過去1年間の利用経験。累積普及率ではない。)は全国平均で9.2%、地域別にみると沖縄22.3%、北海道20.4%.関東10.3%、近畿9.4%、東北5.7%となっており本道は可成りの高い普及率です。因みに男女別、年齢別にみますと、全国平均で男性が10.4%,女性が7.9%となっていますが、本道は男性が17.7%,女性が23.1%と女性の方が他の地域に比較して非常に高くなっています。又更に細かく年齢別にみますと次表のとおりです。特に目につくのは、本道では高齢の女性が多く実に61歳以上の女性の利用が3l.6%となっております。このことは本道の女性がいつまでも若々しく、元気で各分野で活躍しているからと想像されます。旅行目的でみますと、

平 均 北海道
業務旅行 21.7% 30.3%
観光旅行 44.9% 33.3%
私用帰省 29.1% 30.3%

となっており、他地域では観光が主体となっていますが、本道では平均化されているのも特色といえるでしょう。

区分年代別

性別

50才

40才

30才

20才

北 海 道

28.5%

32.4

13.8%

20.0

44.2%

12.0

3%

19.0

全国平均

11.9%

10.6

10.7%

7.2

11.3%

7.0

10.6%

10.0

 見方を変えて、航空を利用して海外旅行にはどの位出かけているかといいますと、昭和52年の本道海外旅行者数は67,320人で,対前年比で108%,昭和45年の10,205人に比較して646%と実にここ6〜7年の間に実に6.5倍になっております。日本人全体が314.7万人ですから、本道は21.3%を占めることになり、81 人に1人が海外ヘ出かけていることになります。全国平均が36人に1人ですから、本道は低い様に思えますが、国際空港のない本道として他府県に比較して便利性にハンディがありますので、同様の条件下にある青森が91人、秋田104人、岩手93人に比較すると決して低い数字ではなく、国際空港を持つ鹿児島でも83人に1人ですから、東京或は大阪まで出なければ海外へ出ることの出来ない現状では可成り高い水準にあると思われます。
 以上道民の航空の普及率の概略を申し上げましたが、国内の普及率からみて仮に千歳空港が国際空港となり利便性が加われば、時間的価値の見直されている昨今から推して、国際旅行をする道民の増加は必然とみています。冬を楽しくする生活の項目に「海外旅行」が入ってくることは所得の向上、余暇時間の増加から当然と思われ、「冬ごもり」から「動く冬」へと近代生活に対応していくのがこれからの道民の姿ではないでしょうか。海外旅行者のうち53%が5年以内に27.8%が1年以内に再旅行計画を持つといわれています。このことからも言えると思います。

(2) 航空貨物
 本道と内地間の貨物の移出入は殆どのものが、海上輸送・鉄道輸送及びトラック輸送に頼っていることは昔も今も余り変りありませんが、航空貨物の開発と銘打って、特定大口割引運賃が設定された昭和30年頃より、これら貨物の一部航空貨物化、そして新しい貨物が航空貨物として内地への移出が目立って来ました。その発端になったのが、本道からのスズラン輸送であります。以後航空輸送に適している生きた動植物、生鮮食料品等にもこの制度が設けられ、又この年の6月に航空混載制度が開始され、この様な制度の開発によって、航空貨物は年々増加の一途をたどり、昭和33年に札幌・東京間年31屯であったものが、昭和52年は約19,000屯,実に20年間に60 倍という驚異的な伸びを示しております。これらの航空貨物は生鮮魚介頬が70%で、主な品目を拾い上げ、その伸びをみてみますと、昭和47年を100として52年度の総需要は275で19,381屯,このうちタラコは135で2,000屯,ウニが206で860屯、ヒラメが117で150屯、バカ貝333で700屯、カニが127で1,300屯となっています。この外特筆すべきものは、道民の手によって縫製された既制服が特種コンテナーによって年間約4万着が航空貨物となって東京へ送られ、プレスなしでそのままデパートに陳列されていることです。移入については細かいデーターがありませんので数字によって説明することは出来ませんが、真白な銀世界となる冬に、福岡からのイチゴが道民の食卓にのぼり、目を楽しませてくれ、暗い冬の生活に明るさを投入してくれていることは御案内のとおりで、航空貨物の普及によって食生活に地域差を無くし、向上に役立っているわけです。

(3) これからの北海道の航空輸送
 本道発展のために航空輸送がその役割を果すには、どの様なことが必要か、それは(1)に千歳空港の国際化、(2)地方空港の整備、(3)他の交通機関との整合性と考えます。(1)の千歳空港の国際化については次にまとめて別項としたいと思います。(2)の地方空港の整備ですが、道の10ヵ年計画の内にも述べられている様に千歳空港を中心とする地方各空港との通年運航の航空網の完成であります。本道と同緯度にある北欧には92の国際空港があり、北米、カナダにも17の国際空港があり夫々人的物的流通の拠点として運営されています。このことは航空輸送が近代生活にマッチした交通機関であることを物語っています。現在本道で夜間離着陸可能な空港は千歳、函館、釧路の三空港のみで、帯広、旭川、稚内、女満別は不可能であります。このことは経済活動に、人間生活にパターンを狂わし、無駄な時間を多く費すことになります。私も道内のセールスを経験して通感したことの一つに椎内、帯広、網走へ出張する場合どうしても最低2日は必要とします。私の会社の場合ですと台北、香港、ソウル、釜山、グアム等への出張日数と同じですので、時々間違えて日帰りと思い予定を立てて相手や同僚に迷惑をかけたことが度々でした。急がしい現代人は知らず知らずのうちに距離感が無くなり、時間感覚で生活する習性が余儀なくされるのでしょうか。内地の各県が競って空港を整備しジェット化を図っているのはこれらの理由によるものと思われます。古い話(約20年前)で恐縮ですが嘗て日本航空が東京−大阪、東京−札幌間に深夜便を実施したのを御存知の方が多いと思います。その時私は人間が寝る時間に航空機を飛ばしても来る人はいまいと反論し、一ヶ月実施の結果も塔乗率も芳しくないので、実施責任者である現在日航の高木副社長に運航を中止してはと申し上げたところ「奥泉君あと2ケ月やってみて結論を出そう。これからの時代はファミリーゼイションの時代さ、昔の様に出張したら必ず一泊してその土地の色街に出かけ一パイやりながら上役の悪口言いストレス解消するという様なかたちの出張形式は古いよ、遅くなっても我が家に帰り、家族と団らんを交す生活様式、そして休息を充分にとることが近代生活だよ、必ずこのプランは成功するさ」と言われたことを思い出します。このプランは見事成功しました。時々道内出張も又観光旅行もこの様な形がとれればと思います。
 地域交通にあって企業性と公共性とを両立させることは、例外はあるとしても多くの場合困難であることは申すまでもありません。地域の最底限度の足を確保するための方策と他交通機関のあり方について、根本的な検討が痛感されます。新しい旅、国際化の進展、情報化社会の要請等により交通の需要は益々昂まるばかりで、殊に航空は例外なく近代生活にマッチした乗物として評価され、かつ国鉄運賃の値上げから一層その需要に拍車がかかりました。千歳空港を基幹とした道内航空網の完成がこれからの本道の発展のため、道民の福祉向上のため、デスカバー北海道のために有機的に繋がり、時間的経済を考えたビームラインづくりが必要と考えます。少くとも一日の仕事を終えた夕方6時、遠くは福岡、近くは帯広から帰路についてもその日の内に自宅に帰り家族と団らんを楽しむ生活、これこそ近代生活であり、住居性が大都市に近づき一方第二次産業の誘致も容易となり過疎化防止に繋がると信じます。
 空港整備には環境破壊が必ず起ります。また技術革新による新しい輸送技術の登場は、現在予想もされない新しい公害の発生が出てこないとも限りません。生活環境尊重を強い尺度基準として方策を立てることを望んで止みません。
 次に(3)の他交通機関との整合性ですが、これはダイヤ編成と座席の予約です。現在国鉄と航空会社は夫々のダイヤ編成に当って有機的なつながりは皆無であります。内地から来道する旅客の大部分は航空を利用している昨今でありながら、国鉄のダイヤは函館が中心となっております。千歳駅発のダイヤが何本か組めないのかということです。乗継ぎ時間を配慮した千歳駅発があれば、その時間に合う航空で来道し目的地へ行く、しかも連帯運賃が設定されて一枚の切符で旅行出来れば旅客はどんなにか助かり、楽しい旅行が出来ることになります。殊に旭川などに帰る場合一度札幌まで行くとしても箱を変わる必要がない、つまり札幌で乗換える必要がない列車、ダイヤを組めば老人、子供づれの母親の方々にはこんな便利なことはないでしょう。
 次に座席の予約ですが、航空会社は1ヶ月前から受付けておりますが、国鉄の指定席券の発売は一週間前となっています。旅客が一番多く動く年末年始、8月の夏休み、旧盆の帰省客、これらの客は殆どが家族連れですが実態は非常に、難しい旅行で、目的地が遠くなればなる程実現が困難又は不可能というのが実態かと思われます。やっとの思いで航空の席を押えても、帰省出来るか出来ないかは国鉄の座席指定券の購入出来る一週間前でないと判らない、しかも札幌発を東京で購入するのですから大変なことは間違いありません。札幌から2時間位のところなら自由席で通路で我慢してでもという気持になりますが、それ以上の時間がかかる場合は帰省を断念せざるを得ないでしょう。孫を迎える両親、又大自然に接すことを楽しみにしていた子供達のがっかりした顔が見える様です。指定された航空便と乗継ぎ時間の一番少い列車に夫々予想される座席を両者が取極め、航空から国鉄へは1ケ月前に同時に確保出来るように、又逆の場合国鉄から航空へは7日前に国鉄の席がとれれば、航空の席もとれるといった方式、旅客の利便を配慮した座席管理は出来ないものでしょうか。国鉄と航空三社との活し合いを期待したいと思います。

(4) 千歳空港の国際化
 成田空港の開港に合せて、このところ千歳空港を国際空港にしようとする推進運動が活発化して来ました。知事、札幌市長、千歳市長を初めとして商工会議所連合会会長今井道雄氏、北海道経済連合会会長岩本常次氏など政財界の方々が、運輸大臣を初めとする関係筋に要請しておられます。成田展開と時を同じくしてこの運動が行われた大きな要因、成田へのアクセスの不便性が事の発端であることは間違いではありますが、真の要因は道民一人一人が激しい時代の流れの中で、文化、経済の国際化に対応してゆくために、その必要性を痛感されたためだと思います。我が国経済が世界経済の内で果している役割、現在おかれている円高の環境を併せて考えるとき、自国のみの利害の観点からだけで諸政策を運用することは不可能です。このことは益々国際物的流通の比重を高くすると同時に国際交流を盛んにし、人的な交流を一層活発化することを意味します。この様な国際情勢下にあるとき道内に国際空港がないことは、本道が「孤島化された国際情報都市」という汚名に益々拍車をかけることになるのではないでしょうか。
 日本の北の門戸としての千歳国際空港の実現が一日も早く挨たれる次第です。東京、大阪を除いて13都市に繋る空港はありません。その意味においても国際空港化の価値は充分と云えましょう。
 千歳が国際空港化した場合の具体的なメリットを申し上げますと、
 第一に運賃の問題があります。ヨーロッパはCommon Fareを採用しておりますので、日本のどの国際空港から出ても同一運賃で、ただ千歳発のみが東京までの国内運賃上乗せになっております。また北米行きの場合はMileage Fareですから、東京よりも片道約1 万7千円安くなり、今迄の上乗せ分を合算すると往復で約6万5千円安くなります。
 第2は利便性の問題です。このことについては申上げる必要はないと思います。
 第3は外人客の増加が期待されます。観光客の来道が時間的、経済的に容易になると共に、国際会議等の開催により国際交流の進展に拍車をかけ、人的な交通を一層活発化することになります。
 第4は第二次産業の誘致が容易となります。精密機械、光学器械工業は、その製品の80%以上が航空貨物化されております。これらの工業が本道の気候風土に合った工業であること申すまでもありまサん。「空の千歳湾」ともいうべき「臨空工業地帯」が形成されることで、産業の高度化、精密化、システム化が進み国際物的流通の比重を高くします。

 

あとがき
 
丁度3年間の努めを終えて東京へ帰る直前に瀬藤さんからこのテーマについて書いて頂けないかと依頼を受けたのですが時期が時期だったので一応お断りしたのですが、 日時は若干遅れても良いというので御引受したのですが、札幌滞在中はあいさつまわりと歓送迎会で時間なく、東京へ帰れば連日35度を越す猛暑、夜は夜で「熱帯夜」の連続、 3年間涼しく送った札幌で貯めた汗を1ケ月で流した勘定、こんなわけで不勉強のまま駄文を書いて申訳ないと思います。北海道の発展と諸兄の発展、健康を祈念して筆を欄きます。

(東京エア・カーゴ・ターミナル(株)常勤顧問(前日本航空札幌支店長))

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