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道路担当者のための身体樟害者と路上空間

小 川  忠 宏

 

はじめに
 
道路は,社会・経済にとって欠くことのできない最も基本的な社会資産であるが、道路の問題点は同一の路上を自動車、自転車、歩行者、乳母車、車イスの人等いろいろなものの混合交通となっていることである。
 また,道路の持っている機能は路上に開かれた空間と連続性があると言う特殊性から、防災、歩行散策、緑化の空間であり、憩い, 子供の遊びのようにやすらぎの場と使用されるほか、電気、上下水道,電話、ガス、標識等の公共・公益施設をも設置する個所ともなっている。
 道路の整備は,昭和29年度より第1次道路整備5ケ年計画が立てられ、それ以来いろいろなテーマを持った整備
計画の変遷を経て、現在の第9次道路整備5ケ年計画では、建設省道路局長の私的諮問機関の、レデース・ロード・フォーラムなど、 女性の意見も十分反映された計画が策定された。
 今後は, 更に, 身体障害者の一般社会への参加の拡大や高令化社会の到来による老人の増加などを考えるとき,今日の歩道の実態は,病人, 幼児, 妊婦などを含め一般に交通弱者と言われる人々に対して,安心して利用できるような形に整備されているとは言えない状況である。
 このため,今後の歩道造成に当っては,長期的展望に立ち,各種施設を十分に検討の上整備するとともに, 欠陥となっている個所は早急に補修することによって,交通弱者に対して安全な道路となるばかりでなく,健常者にとっても使い易い道路となり,将来の道路という重要な社会資本の質を向上させ,安全で充実した資産となるのである。
 しかし,実際に現場て設計・施工・監督・管理を担当されている技術者の多くは, ほとんどが健康な人達で,身体障害者の移動の特徴,補助具の特徴,歩道のどのような所が歩行困難となっているかなど,これらのことにふれる機会が少ないと思われるので,本稿は,道路担当者を対象に,交通弱者と言われる人々の立場に立ち,困っている実例を上げ,路上の主な施設について取上げてみたものである。

§1. 身体障害者の生活から見た道路の実態
 
ほとんどの身体障害者は,混雑し忙しく歩く群集に極度に不安を感じている。その不安は,身体障害者の存在に気づかない人々に衝突されるのではないかと言う恐怖感と, もうひとつは, 自分の遅い速度が他の人の交通を邪魔しているのではないかと言う自意識から来るのである。 しかし,道路上には, 人や自転車等の交通の外にいろいろの欠陥があり, より危険を助長している。
1) 視覚障害者
 視覚障害者にとって危険な道路は,路肩にガイドラインが無く崖状になっている場合で,杖で前方を確かめながら歩いていても,方向を失う不安と転落のおそれがある。それに対して,塀やフェンスのある道路は,足音や杖先で進路を確めながら歩くことができる。その意味では連続したものがある場合は歩き易く, フェンス等は腰高以上であれば接触しても転落より軽い怪我で済む。歩道の無い道路は, サイドを歩いていても何時車道にはみ出してしまうか心配であり,事実, 車道にはみ出してしまうことも度々である。歩道であれば,人や自転車に衝突しても車道より軽傷で済む。また, 狭い歩道では電柱,標識, ポスト, 公衆電話ボックス等の道路占用物件や,本来歩道に置かれていないはずの立看板,植木鉢, 放置自転車等の障害物があり, これらは予想困難で大変危険である。予想が困難で最も危険なものは, 工事現場であり, いつも歩き慣れている道路に突然バリケードや建設資材が置いてあったり,蓋の開いたマンホールや溝があることである。

2) 車イス使用者
 車イスの人にとって最も困ることは,路上に置かれた大きな物や重たい物のため,ほんの数センチでも幅が狭けれぱもうそれ以上進めなくなる。また,段差は高ければ介助者なしではほとんど登れず,普通の車イスなら2〜3人の通行人に頼んで上げてもらえるが,電動式車イスの場合全重量で90〜100kg及ぶものもあり, 「担いで下さい」と言うにも気が引けてしまう。路面の凸凹, 構造物の基礎コンクリートの張出, マンホールの桝の周りの凸凹等は, ぶっかると衝撃がひどく車輪が取られ精神的にも肉体的にも相当の負担がかかる。狭い歩道では,電柱, 標識, 歩道橋等の物が大きな障害となり, 人や自転車との交差には止って待たなければならないことも度々である。 また, 車庫前や車の出入口には, 急勾配の所がかなりあリ車輪が取られ逸脱する危険もある。

3) 杖使用者
 杖使用者には, 1本杖(簡易歩行補助杖, ロフトランドクラッチ)の者から, 2本杖(松葉杖,多点歩行杖)の者までいるが,この杖使用者にとって最も危険なことは,路面が滑り易いことであり,移動するには杖に体重をかけるため,滑ると必ずと言って良いほど転倒してしまう。また, 杖先や体を高く上げられず路面からほんのわずかの空間て移動しているため,地上に突き出しているもの, 張り出しているもの, 凹んでいるものには蹟ずいてしまう。このことは, 義足の音にとっても同じようなことが言える。

4) 事故に遭った場所, 危険を感じた所
 身体障害者は, 自分自身でも相当神経を使い転倒しないように気を付けているが, いったん事故を起こすと重傷になったり, 死亡する危険度が大変高くなることが多い。
 肢体不自由者がどうような場所で事故に遭っているのかと言うと, 表1-1のように工事中 の道路階段, 滑り易い路面で50%以上が事故を起している。また, 階段や道路に約52%の人が危険を感じており道路上に関するものでは, 約84%とほとんどの人が危険を感じている。

5) 身体障害者から見た道路整備
 身体障害者は健常者よリ歩行時間がかかり, 神経を使っているため, 肉体的にも精神的にも疲労する。また,雨の時は補助具を使用している者に取っては傘も使用できないし, 夏の炎天下では, 長時間日にさらされるが, このような時の避難や休息の場がない。
 このように身体障害者は, 路上の何かによる欠陥で行動範囲が狭められていたり,在宅生 活を余儀
 なくされている場合がある。これらの欠陥を解消したならぱ行動範囲も広くなり,在宅生活の者も社会に出て行動できるようになる。
 更に, 身体障害者にとって, 現在の道路整備についてどう見ているかというと, 2)不十 分であると思っている人が77%も占めておりまあまあと言うのが14%, 十分であると言うのは4%に過ぎない。道路に対して大変不満を持っていることがわかる。
 それではどのような部分に対して道路の整備を望んでいるかと言うと, 2)表1−5のようになる。
 表のように約90%の人が, いろいろな施設整備を望んでいる。 この為, まず, 身体障害者とは, どのような人か, また.道路担当者としてどのように対処して行くのが望ましいのか考えてみよう。

§2. 北海道の現況
1. 身体障害者の現況
(1) 本道の障害者
 本道における身体障害者は, 「身体障害者手帳交付台帳」によると, 144,538人おりその内視覚障害者と肢体不自由者で約80%を占めている。
 また, 等級別に見ると, 1級から4級までで約70%を占めている。
(2) 身体障害者の分布
 身体障害者の分布を見ると,全道全市町村で生活しており,特に,市部に集中している。
 本道における身体障害者は全人口の2.59%を占めている。

2. 道路の現況
 
本道の道路は, 77,614kmあり, 全国平均より改良率は上回っているが, 舗装率は低く, 特に 市町村道にいたっては20%も下回っている。
 歩道は,のべ延長て12,518kmあり,実延長の16.1%,舗装延長の53.9%となっている。こ れは片側のみに換算しているが両側に換算すると, この半分しかないことになる。
 本道の身体障害者と道路を地域別に見た場合,身体障害者は全道的に分布しているが,市町村道の舗装率の悪さ,特に, 歩道の整備率が悪いと言うことは, 身体障害者にとって安全快適に生活するための道路が不足していると言わなけれぱならない。

3 北海道の施策
 
本道では,国際障害者年を契機に障害者の自立を目ざす福祉の充実を図るために,全国に先がけて,昭和57年度から10ヶ年を目途として、「障害者に関する北海道行動計画6」」を策定した。
 その中では, 8つの柱を基本方針とし, それぞれの施策を明らかにしている。

(1) 正しい障害者観の確立
(2) 保健医療の確保
(3) 教育の充実と振興
(4) 福祉の充実
(5) 生活環境整備の促進−障害者が地域社会の一員として生活し, 活動できるように 道路や公共の建物などの生活環境施設の改善,整備をすすめます。また, 住宅・通信・交通手段などの確保をすすめていきます。
(6) 雇用・就業の拡大
(7) 地域福祉活動の推進
(8) 専門職員の養成確保

 道路に関係するものとしては,(5)の「生活環境整備の促進」の中の主要施策の中に掲げられているが, その中の関係分を挙げる。

ア 道路交通安全施設の整備
 障害者の通行の安全を確保するため, 歩道段差切り下げ, 視覚障害者用信号付加装置機の整備, 視覚障害者用点字ブロックの設置などを促進する。

イ 移動・交通の手段の確保
 障害者の移動・交通手段を確保するため, 駅舎などの施設改善整備を促進するとともに, 福祉バスの配備促進, 駐車など運転に関する特別配慮など, 体制の整備を促進する。

ウ 冬季生活の充実
 冬期間の生活を充実したものとするため, 歩道の除排雪, 消融雪施設の整備, 障害者家庭の除雪や屋根の雪おろしサービスの促進, 冬季用補装具・自助具の開発, 冬季スポーツの振興などに努める。
 これを受けて道では横断歩道, 歩道巻込部, 中央分離帯等の段差切り下げは, 昭和48 年度より毎年単独事業として実施し, 新設や改築の道路事業では, 全て段差を付けないよう切下げを行ってきている。
 点字ブロックについては,後で詳細に述べるが, まだ全国的な統一や敷設方法が決っておらず,色々と苦慮しながらそれぞれの方法で, 必要と思われる地域について逐次整備を進めている。
 歩道の除雪は, 歩道構造, 道路附属構造物, 電柱や信号等の占用物件などあり, 現在の除雪機械では作業に困難性があり除雪の範囲が限定されている。また, 沿道や屋上からの落雪についても, 地元住民の協力のもとに圧雪あるいは車道の排雪と同時に処理するなどして, 年々除雪, 排雪は延長の拡大を図っている。
 歩道の融消雪施設の実施個所は少いが, 流雪溝による除雪や温泉余水による消雪は一部行なっているが, まだ試験的段階である。本道は, 本州地域と比べ厳寒多積雪のため, 今後十分な研究と開発が必要である。

(2) 身体障害者福祉法による分類
 身体障害者福祉法では, 障害者を視覚障害, 聴覚又は平衡機能の障害, 音声機能又は言語機能の障害, 肢体不自由, 内部障害(心臓, 腎臓又は呼吸器の機能障害)に分類し, それを障害の程度により1級から7級まで細分されており福祉行政措置基準に利用されている。この法律は機能障害のみに重点が置かれており, その他の関連諸法と障害の範囲, 評価基準の異なっているものがある。

(3) 補助具による分類
 身体障害者の移動には, 健常者と異なり何らかの補助具を用いて行動している者が多い。本編では, 主として歩道を扱っているため, 視覚障害者と下肢不自由者の補助具について分類すると
  視覚障害者;介助, 盲導犬, 杖, その他
  下肢不自由者;介助付イス, 電動車イス, 手動車イス, 松葉杖, 義足,その他となる。

§3. 身体障害者
1. 身体障害者の分類
 身体障害者を一概に分類することは困難であるが, 次のような分類を紹介する。
(1) 移動形態からの分類
(2) 身体障害者福祉法からの分類
(3) 補助具類による分類

(1) 移動形態からの分類
 身体障害者は, 移動・巧緻障害と知覚障害に分けられる。
 移動障害を持つ人とは, 体幹や下肢などに障害があり移動に影響するような機能障害を持つ人である。
 巧繊障害とは, 切断や握力不足など片方又は両方の上肢に機能障害を持つ人であり,歩行不能者と歩行困難者に分けられる。
 歩行不能者とは, 車イス使用者であり単独車イス使用者(自分で車イスの操作ができ設備さえ完備されていれば独力で行動可能な者)と同伴者車イス使用者(介助者を必要とするが電動車イスを使えば単独車イス使用者となり得る者)に分けられる。
 歩行困難者とは, 軽度(平担地での歩行が可能であり階段やスロープの昇降には手すりなどの適当な設備があれば歩行可能な者)と重度(平担な所は移動できても,昇降動作に際し補助具なしでは歩行不可能な者)の歩行困難者に分けられる。
 知覚障害者は,聴覚障害者(聾, 難聴〔高度・中度・軽度〕の者であり, 通常の歩行にはさほど影響が無いが警笛など聞えないため事故の危険がある者)と視覚障害者(全盲・準盲者, 視機能障害者〔弱視者,視野狭さく者,色盲者〕でこれらの障害のため移動が制約される者)に分けられる。

2. 身体障害者の移動
 人が移動するには, 自力で動く歩行移動と他の移送手段を利用した輸送移動に大きく分けられる。
 身体障害者が歩行移動するには, 平担で歩き易いに越したことはないが, 現実には路上の構造欠陥や障害物等があり歩行を困難にしているこ 更に, 段差階段, スロープなど高低差のある垂直移動が伴うと, よりー層歩行を困難としている。
 本稿では, 歩行のための道路構造物の設計として歩行移動システムを取り上げる。

(1) 補助具と歩行形態
 身体障害者が歩行のために用いる補助具は, 個々の身体障害者の障害内容に合わせて杖, 歩行器, 車イス, 義足等色々開発されているが, 本編では, 路上で使用されているもので最も多い杖類と車イス類について述べる。

a)杖 類
 健常者の歩行行動は,体を傾け重心を前に移し足をけって体を持ち上げることによって行なわれるが,下肢障害者は,杖を使用して腕でこの行動を手伝い,足にかかる力を少くなるよう行なわれる。
 一般に, 1本の杖(棒状ステッキ)を使用した場合, その杖にかかる重さは体重の20・30%までと言われており,それ以上の重さとなると, 2本の杖(ロフトランドクラッチや松葉杖)を使用することによる。
 視覚障害者の歩行は白または, 黄色の杖で周囲にある物に触れ, その音, 感触によって行動して良いかどうか判断するために用いられ, ロングケーン(長い杖)とショートケーン(短い杖)がある。
 ショートケーンは, 普通, 散歩用ステッキ(杖)と変りなくステッキの上端がT字やL字に曲った握りとなっている。
 歩行者のそばで動かされ線的な所在の認識しかできず, いくつかの点を形成するにすぎないため, 前方の安全を確かめるには不都合である。
 それにもかかわらず, ショートケーンにたよって歩く人で驚くほど正確に所在意識の正確な人がいる。このような人は, 過去の記憶と自分の足音の反響を最大限利用している。
 ロングケーンは, 一般的に最も多く用いられ取扱が簡単な上, 歩行速度もわりと早く確実で, 値段も手ごろであり,折りたたみ式や, 手をいやな感触から守ったり, 両手を使用するときは上着の襟に握りを留めるホックが付いているタイプなど多種類のものが販売されている。ケーンの長さは, 最少で, 地面から胸骨の未端までの長さが必要とされている。

b)車イ ス
 車イスは, 杖の使用, 義足等の使用の出来ない者, また使用困難な者にとって, それまでは在宅生活を強いられていたが, これらの者にとって, この車イスの開発は, 社会に出る大きな進歩となった。当初は, 外国からの輸入物がほとんどであったが,今では国産で軽量, 安全性, 利便性の優れたものが, いろいろと研究開発されており,標準構造はJISて決められている。 車イスの構造は, 標準的には大輪(駆動輪)と小輪(キヤスター)及び手押し装置が付いており, 種類も座敷用, 室内用, 児童・学童用, リクライニング付, ストレッチャ付(水平移動装置), 各種スポーツに合せたスポーツタイプ, その他障害に合わせたオリジナル製品が開発されており, 腕の使える者には手動式, 腕も使えない者には電動式のものが開発され利用されいる。
 電動式車イスは,手動式に比べて重いが, 比較的登坂力(段差乗越は, 25cm以上, 勾配76%以下)があり,一回の充電で連続走行は, 平担路で2時間位(軽量型)である。

(2) 歩行幅
 身体障害者は, 杖や歩行器を使用する者, 車イスを使用する者, 補助具を使用しなくても横振れをして歩行する者等があり,健常者より歩行幅を広く必要とする者が多い。

a) 健常者
 健常者は, 通常の歩行に際し両腕の振り幅を入れて80cm必要とされており, 荷物を持った場合でも, 100cm必要とされている。尚, 道路構造令の改正でも従来歩道の幅員最低75cmとしていたが, 100cmに引き上げられた。58.10.1)

b) 自転車の通行幅
 自転車の通行幅は, ハンドル幅で60cmであるが道路構造令ではクリアランスを取り100cmと決めている。 しかし,実際の走行に際しては, ペダルをこぐ時横振れするし,子供の乗車などバランス保持のため150cmは必要であろう。

c)杖使用者歩行幅
 杖使用者は, 杖を直すぐ前に出さず,側方に振り回すような状態で歩くため, 立っているよりかなりの歩行幅を必要とする。

d) 車イス使用者の歩行幅
 車イスの使用者の通行幅は, 車イスからひじが張り出すし, 左右の腕力に差があって, 蛇行することがあるため, クリアランスを取り最低100cmとしている。更に ,人, 自転車,等との交差の為には, もっと幅を広く必要とする。

§4. 路上施設整備の理念
 
身体障害者のための路上施設の整備を進めるに当っては. まず身体障害者の身になって考える事であり, 障害者は身体的ハンディキャップのみならずそれから波及する精神的ハンディキャップを持つ場合が多いことを正しく理解し, 基本理念として, 目的, 共通性, 安全性, 便利性等を考慮することである。

1 目的と共通性
 
人は, 1日24時間, 住居−通勤−職場−社会活動, また, 朝, 昼, 夜と連続した行動であり, その行程の中で各種の施設を利用している。障害者も一人の人間であり基本的要求は一般の社会人と同じであり,保護の対象者としてではなく一人の独立した自尊心を持った人間であり, その人権は同等に認めなくてはならない。また, 障害者としてではなく一人の社会人としての要望や行動を望んでおり, そのため健常者と同じ行動ができるよう日々並々ならぬ努力をしており, この苦しい行動も当然の活動としてとらえており, またはとらえようとしている。この行動を可態にできる社会環境を望んでいる。
 更に, 社会には交通弱者と言われる老人, 子供, 病人, 妊産婦, 幼児やこれらの者の介助者など多くの者が居り, これらの者も, 障害となっている内容や考え方も多様性があり, 全ての者が満足する施設を作ることは仲々できないと思うが,身体障害者や交通弱者は,「何も特別なものを作ってほしいと言っているのではなく,皆んなが安全で便利であれぱ, 私たちにとっても安全なのです」と言っている。
 それに応えるためには, 道路の建設等にかかわるものは, その地域の障害者の意見を十分聴き,その地域の気候風土, 交通体系, 病院, デパート等各種施設の位置, 地域独特の特殊性など考慮し,できるだけ全ての人に安全て使い易い道路とするよう細心の配慮を心がけるべきである。

2、 安全性と便利性
 
視覚障害者は, 小さな突出物や張出している物には全く無防備であり 肢体不自由者は, 障害によって左右, 上下動作が平均しておらず, 杖使用者は杖に全体重をかけるし, 物によって思わぬ所に強力な力がかかることがある。このため, あらゆる設備は頑丈て安全にしておく必要がある。また, 障害者は時間をかけて良いのであれば驚くほど沢山のことがてきる。 しかし, 実際の社会の中ではたえず時間との戦いであり,できるだけ簡単に操作できるものが良いのである。

3 差別視しないこと
 障害者は, 好んで障害者になったわけではなく,何らかの気の毒な理由があってなった者ばかりであり,健常者と同じ行動をする努力をしているが, 過度の介助や, 障害者ゆえに我慢しても良いのではないか等と無視したり差別することは, 一人の社会人としてのプライドを傷つけることになる。

4、 空間の確保
 人が安心して運行できる道路とは, 路上に障害物が無く連続した空間を確保することである。 しかし, 現実には, 自動車交通が多くなったため歩行者は道を歩くたびに自動車を油断なく警戒しなければならない。
 歩道の整備も未だ遅れている上に, 更に, 狭い歩道の通行をしなければならない。これに伴い信号機や標識類が, ごたごたと歩道上に立ち始めたのてある。
 このため, 歩行空間の確保を図らなければならない。歩行空間の確保する目標として前述の安全性, 連続性, 利便性, 保安防犯性, 快適性を持たすことである。
 安全性とは, 自転車, 歩行者の分離が望ましいが, 欠陥となっているものを除却することである。連続性とは, 通過できない所がーケ所でもあると目的をはたせないのであるから歩道の構造, 路上施設はもちろんのこと, どんな施設にでも接続し, 利用できるよう通行可能な設備の配置をすることである。
 また快適性については, 障害者は歩行に時間を要する者が多く, 肉体的にも精神的にも疲れるため, 休息てきるようなポケットスペース等を設けたり, 長時間炎天下にさらされるような時は, 日陰を設けたり, 安らぎを与えるため植樹をしたりして快適性を高めることである。

5. 欠陥の除去
 
歩道には, 附帯施設として雨水桝, マンホール, 案内標識等。交通安全施設として信号機, 交通標識, フェンス, 照明灯,点字ブロック, 安全旗等。防災施設として消火栓, 火災報知機, 非常用救助袋固定環, 標識, 街灯(防犯灯)等。修景施設として植樹桝(帯), 植樹, フラワーポット等。生活関連施設として, 電力, 電話柱, ポスト, 公衆電話ボックス, ゴミ容器, バス停等があるほか, その他占用物件や不法占用の看板, 商店露台, 放置自転車, 広告物等々数多くある。
 身体障害者が歩行障害となっているのは, ほとんどこれらの路上のものが多く, 障害内容は, ぶつかる, つまづく, ひっかかることである。
 これらのことによって, 転倒, 怪我, 被服の破損となり, このようなことが無くなれば大変歩き易くなる。

では, これらの欠陥となった原因は何かと言うと,

ア 設計上の不備
 道路占用許可も含め, 施設の配列, 構造物形状強度の検討, 空間確保, 施設の共同利用の協議等。
イ 施工の不良
 平担性, 突出, 沈下, 製品の選択 , 工事方法等。
ウ 維持管理不良
 破損, 突出, 張出, 下法占用物件の発見の遅さと補修や除去命令の遅延等の不備 ,パトロール

の不定等。である。

 道路担当者は, それぞれの立場で考え横の連絡協議など万全の注意を払い, 十分検討の上設計, 監督, パトロール, 補修を行うことが必要である。

§5. 路上の設計
 道路には一般の歩道等の外に, 橋, トンネル, 立体交差, 歩道橋, 地下道のように, 鉄やコンクリートで造られた構造物があり, これらは簡単に改築や新設が困難なため計画する時は, 身体障害者や交通弱者等のことを十分勘案した上で計画しなければならない。
 身体障害者は, 平担な歩道が最も歩き易く, 高低差のある道路を苦手としている。 特に, 車イスの者にとって高い段差は壁と同じように考えられている。 このためスロープが望ましいが, 他の障害者の中には斜面でバランスが取り難い者もあり階段の方が利用し易い者もいるっ。このような場合, 階段とスロープを併設する等これらのことを検討することが望ましい。本章では, 歩道, 階段, スロープ及びそれに付属する構造物について述べる。

1 歩道, 自転車歩行者道(以下歩道と言う)
 歩道を設計するときのチェックポイントを示すと, 表5-1である。

ア 縁 石
 横断歩道の縁石は, 図5-1を標準とし段差は2cm以上は付けない。
イ 舗 装
 障害者が最も恐れることは滑ることである。障害者は一般に体位バランスが悪く路面が滑り易いと歩行できないし, 杖使用者は杖に体重を乗せて歩くので滑ると転倒してしまう。従って舗装面は「濡れても滑らないことである。また, マンホールの鉄蓋の滑り防止も配慮の必要がある。
ウ 幅 員
 路上施設帯を除いた有効幅員で180cm以上確保したい。更に, 路上施設や占用物件を考慮した場合その分だけ増えるのは当然である。
エ 勾 配
 勾配は, 8)平担なものが良いが雨水の排水を考慮し, 2%以内とする。
オ バス停車帯
 バス停車帯は, 人の混雑がはげしいのに歩道幅員を狭めている例が多くあるが, これなどは逆で幅員を広く取り歩道の通行者の利用の便を考慮する。
カ フェンス
 フェンスは,車道への逸脱防止や盲人のガイドラインとなる。とくに路側に段差のある場合, 交差点の巻込部には必ず設ける。
キ 隅切り
 屈折点において, 他の者との衝突を防止するために両方から見通しの良くなるよう隅切をする。塀等で見通しの悪い場合は, 反射鏡を設置する。

また, 歩道巻込部, 交差点などでは, 自動車の内輪差に対してクリアランスを取る。

2. 段差切り下げ
 先に例を述べているが, 車イス使用者にとって高い段差は壁と同じようなものであり, 視覚障害者は, 転落転倒の危険があり, 身体障害者のみならず自転車, 乳母車, 老人, ショッピングカー利用者にとっても, 段差の高い所では通行の障害となっているため, 既設の所は早急に解消し, 新設, 改築においては絶対に高い段差を付けてはならない。

3.スロープ
 
歩道に高低差のある場合, 車イスの者にとって, スロープが一番適しており, 老人や病人にとっても歩き易くなる。勾配が緩けれぱ緩いほど良いと言うことも成り立つが, 長くなり構造上当然制限があり, 折れスロープにしなけれぱならないこともある。
 スロープを設計するときのチェックポイントを示すと, 表5-2である。

(ア)幅 員
 スロープの幅員は, 歩道の有効幅員と同じくする。階段と並設した比較的短いスロープでも人と交差てきるだけの幅135cm以上とする。交差するには180cm必要である。

(ロ) 路 面
 路面は滑り難いことは当然であり粗いコンクリート面が良く, 滑り易いタイルやプラスチック製品は使用すべきでない。本道は積雪寒冷地でありヒーティングを設ける必要がある。

(ウ)勾配・長さ
 スロープの勾配の限界は, 腕力によって異なるが, 屋外では1/20( 5%)以下, 屋根の付いた歩道で1/ 12 ( 8.3%)以下となっている。スロープの最大勾配を1/12以下とした理由は,

a) 自力で車イスを動かせる者であれば, ある程度の距離は登れる。
b) 車イス使用者が前のめりになったり,後輪で車イスのバランスを取らなければならないという恐怖心を抱かずに降りることがてきる勾配である。
d) 車イスを押す介助者も, それ以上急になると苦痛を感じる。
e) 1/12以上だと車イスの者が危険を感じる。

としている。
 スロープの最大限の長さは, 9,0mとされている。横断勾配は, 雨水を考慮し2%付ける。雨水処理のグレーチングは, キャスタ―や杖の落ち込みのないものを選択する。

(エ) 踊 場

踊場はスロープの途中で小休止するために, 長さ150cm以上とし, 方向変換や車イス同志の交差のためには180cm以上とする。スロープの前後も平担部を設ける。

4. 階 段
 
階段は, 車イスの者は使用できなく, 階段を利用するのはそれ以外の者てある。階段には直線階段, 曲り階段, らせん階段などある。直線階段で高低差の大きい場合は, 昇る時は良いが降りる時, 直接下が見えるため, 転倒に対する恐怖心にかられる。曲り階段, らせん階段は踏面の幅が左右で異なっており,体位バランスを崩しやすく,踏みはずしの危険がある。このため,踊り場のある折れ階段が最も良いとされている。
 階段を設計するときのチエックポイントを示すと,表5-3である。

(ア) 幅 員
 幅員は,手すり内側で120cm以上とし,松葉杖使用者を考慮すると180cm以上必要とする。

(イ) 段差,踏面
 段差は,15〜16cmとする。踏面は足裏全体が乗るように30〜32cmとし,濡れても滑らないものを使用し,雪や氷が付かないようヒーティングを行う。
 ノンスリップは, 金属性のものは横滑りの危険があるので硬質ゴム入りの材料を使用し, 踏面と段差が付かないよう平滑に仕上げる。
 両サイドは,杖先が滑り落ちないよう, 5cm以上の立ち上りを付ける。

(ウ) 蹴上げ
 蹴上げは2cm以下と, 蹴上げ板は杖先が下側にひっかからないよう端部を平滑にして必ず付ける。弱視者のために踏面と蹴上げには色彩による変化を付けると良い。

(エ) 踊 場
 高低差のある場の直線階段, 折れ階段で踊場間隔は, 垂直高で180cm程度に1段づつ付ける。踊場の幅員は, 階の幅員以上とする。階段の昇降口にも120cm以上の長さで踊場を設ける。

5 手すりとフェンス
(1) 手すり
 肢体不自由者が階段やスロープを歩くとき, 手すりは滑りや転倒防止の支えとして用いられ歩行者の安全性を保持する役目をしている。杖使用者は補助的に使用したり, 視覚障害者は, 誘導や方向を知るためにも利用している。このように,障害者にとって手すりの果す役割は非常に大きいので, 設置に当り, 材質, 形状, 強度, 高さ,連続性など十分に考慮しなければならない。

(ア) 形状,構造
 手すりは,通常軽く握れるような丸形やだ円形の物が良く,握ることのできない者が体を寄りかけて利用する楊合は上面がいくらか, 平らな物が良い。
(イ) 材質・強度
 材質は金属性のものは, 強度があり優れているが, さびたり, 感触的にも視覚的にも冷い感じがする物が多く冬期さわると凍り付く心配がある。このため, ビニール被覆したものや木製のものが歩行者にとって,安心して利用できる。更に気を付けなければならないことは,手をすべらせて利用するため,端部や切断面, ボルトなどに損傷のないことである。また, 視覚障害者のために, 起終点や踊り場には, 点字の案内板を付けることも必要である。
(ウ) 設置方法
 階段,スロープの手すりは, 必ず両側に連続させて設置し, 起終点より30〜45cm伸長する。取付け高さは昇る時より降る時を主として考えると, 踏面から,85cmが最適とされている。尚, 小児や車イスの者が使用するものは,65cmの位置にもう一本取付ける。この場合,低い方の手すりは, 上の握りの半分くらい手前に出し, 上の握りとぶつからないようにする。
 手すりは,車イス,杖,その他の補装具が引っかからないよう,側面から, 5〜6cm離して取付けるか, また,下から立上げる場合でも下端部より, 5〜6cm離す。
 更に手すりは,体を引き上げたり, 支えたり, 体重を乗せることがあるため,頑丈な構造でしっかりと固定しなければならない。
 尚, 広い階段やスロープでは,中央にも手すりを設けた方が利用し易い。

(2) フェンス
 フェンス本来の目的は, 自動車の路外逸脱防止であるが, 狭い歩道や路側では, フェンスにより歩行者等の退避のための空間を確保しようとしたものである。
 また, 視覚障害者にとっては,路外や車道への逸脱防止やガイドラインとなり大変便利で効果がある。
 フェンスは,車の出入ロ, 商店前など沿道利用者との利害関係があり,設置する現場において事前に地元と十分協議する必要があるが,できるだけ連続することが望ましい。

6 点字ブロック
 現在,点字ブロックは,視覚障害者に路面を周囲と異なった物で誘導, 案内するために用いられてるが,規格,寸法,敷設方法はまだ全国的にも統一されておらず,国の機関や地方自治体は,それぞれ独自の使い方をしている。近年, 視覚障害者の行動範囲もますます広くなって来ているが,点字ブロックは, 施設や地域によってまちまちであり,今後,全国的に統一を図らなければ視覚障害者を混乱にまねくこととなる。

(1) 点字ブロックの目的
 人が道路を歩行する場合の基本的な行動は,歩く(目標に向って直進歩行の連続行動), 曲る(交差部,分岐部方向変換等の曲る行動),止る(連続歩行が危険を伴う場合や状況判断のための一時停止等の止る行動)の三要素に構成される。
 健常者は, 視覚による情報が得られるため, この行動は区別されず連続的に行なわれている。視覚障害者も行動パターンは同じであるが, 視覚による情報が得られないため,それぞれの接点で連続行動を取ることが困難となり,それぞれの行動が独立して行なわれていると言う特殊性がある。
 従って視覚に代る情報伝達の方法を考えなければならない。しかし,視覚障害者の残存機能は,触覚によるものと,聴覚によるものが主であり, 歩行に際しては触覚による情報伝達が最も実際的であり,手による感触より足裏の感触の方が, より早く行動することができる。
 点字ブロックは,単に周囲と異った物で情報を言えるだけでなく, その情報が何の目的のために使用されているのか認識し以後取るべき行動を判断でぎる識別性のあるものでなければならない。この認識, 識別性をどのようにするかは,先に述べた, 歩く, 曲る, 止るの三つの情報を的確に伝達することがてきれば可能と考えられる。この表示方法を,誘導標示(歩く),位置標示(止る), 屈折点標示(曲る)で表わすと,

ア) 誘導標示 方向性を示すため線ブロックを連続して用いて標示する。
イ) 位置標示 目的の位置を示すため点ブロックを用いて標示する。
ウ) 屈折点標示 線ブロックから点ブロックに変化させることによって標示する。

点ブロックと線ブロックの配列組合せによって利用者のはん雑性を無くし,混乱を避け,単純化し利用効果を高めるため 点ブロックと線ブロックの2種類とした方がよいようである。

(2) 点字ブロックの選択
 点字ブロックは,現在開発されているものの大きさは30cm×30cmのものがほとんどであるが,点ブロックの点数,点間幅,点高はさまざまであり,線ブロックの線幅, 長さ,高さもいろいろなものがある。
 選択に当って,形状は点ブロックと線ブロックの2種類とし, その配列,構成の変化によって,位置標示,誘導標示,屈折点標示をする。表面は,黄色や緑色で着色し,弱視者, 老人,子供にも利用範囲を拡大し, 視覚と触覚の両効果を兼用させたものを用いる。
 材質は, コンクリート, 合成樹脂系のものがあるが,滑り難いことは, もちろんであるが, 周囲と区別でき,識別できるよう適当な点や線があること,歩いても疲れないようある程度弾力性のあること, 足裏には3点以上の支点があり安定性のあること, また,合成樹脂系のものは,既設の歩道に張り付けるため,剥離し難いもの, これらに留意して選択する。
 点字ブロックは,誘導のためであるから一担切れると一時止り,それから先がどうなっているのか判断しなければならない。 このため,連続性を持たせることが必要である。また,直進を示すにはl枚で誘導できるが横断歩道や危険物がある場合には, 1枚ではまたいで通過してしまう危険があるため2枚以上敷設するのを基本とする。

(ア) 横断歩道
 横断歩道の幅員に対して,最低2枚幅の点字ブロックを配置し,横断歩道中央より民地側最低3枚幅(但し民地部より最低1枚分除く)T字型に敷設し,歩道幅員の中央は線ブロックとする。尚,横断歩道中央に誘導するのは, サイドに誘導するよう, 左右にセフティゾーンがあるためコースの逸脱を防止できるためである。

(イ) 歩道巻込部
 歩道幅員(路上施設帯を除く)のうち,巻込縁石より30cm離して,縁石に添って敷設し,歩道幅員の中央部は線ブロックとする。これにより方向性と歩道の中央の位置の確認ができる。縁石より30cm離すのは,車輌の内輪の踏み込みによる危険を防止するためである。

(ウ)階段・スロープ昇降部
 階段・スロープ昇降口から30cm離した地点から車道と平行に(4枚幅×歩道幅員)に敷設し, 階段・スロープの中央部は線ブロックとする。尚,歩道橋,スロープ斜路,橋脚への衝突を避けるため,構造物に沿って最低1枚幅で連続して誘導する。

(エ) 施設部(公共施設,利用の多い建物等)
 施設入口部を中心にして(最低3枚幅×歩道幅員,担し車道部より最低1枚離す)敷設し,施設入口部に対して中央は線ブロックにする。尚, 広幅員の入口部には, 線ブロック2枚幅以上に敷設する。

(オ)バス停部
 バス停ポールを中心として縁石より6ocm離した地点から,最低3枚幅×歩道幅員(但し民地部よりl枚幅離す)に敷設する。

(カ)中央分離帯部
 中央分離帯は,横断部全幅に敷設し,幅の広い場合は2枚幅とし中央部は敷設しない。狭い場合は全部敷設する。

(キ)屈折誘導部
 屈折誘導部は, L字, T字, 十字部があるが, 誘導部全体として1枚幅より2枚幅の方がわかり易い。

7. 照 明
 
車イス使用者や杖使用者は健常者より足元が見え難く,夕方や夜はより物が見え難くなるため,路上の凹凸や障害物につまずいたり衝突したり接触する危険が更に多くなる。
 視機能障害者(弱視者,色盲者,視野狭さく者)は夕方や街灯のように薄暗い所では平均に物が見え難く,全盲に近い状態になったり,物の色別がでぎなくなったりする者がいる。
 このため,照明は,道路に連続して設置することが望ましい。特に,横断歩道, 分岐点, 曲り角,施設入口部, 歩道巻込部, 階段・スロープの昇降ロ, 特殊な占用物件(ポスト, 公衆電話ボックス, 火災報知機, バス待合所, バス停標識等)に設けることが望ましい。
 平均照度は,50ルックス以上とし可能なら100ルックスとすることが望ましく, 均一になるように配置する。
 更に, 階段やスロープのように勾配の変化する場所では, 全体が見えることはもちろんだが,特に下方が見やすいように照明を設置する。
 下方が見えることは, 転倒に対する不安感をなくするのである。

8. 駐 車 場
 
今日, 自動車は身体障害者にとって, 行動半径を格段に広げ,職場にも買物にもレジャーにも自由に行け,社会に出て自立する可能性を大きくする機能を持った機械です。
 最近,話題となったサリドマイド児の吉森こずえさんが自動車の運転免許を取得し,明るい性格と健常者と変らぬ働きぶりで,全国の身体障害者に自立と更生の大きな夢と希望を与えていることは,ご承知の方もあると思うが, 彼女は, 自動車を得たことで世界が広がったとし, 自分自身が大変動き易くなり, これまで電車ひとつ乗るのが大変だったのに, 車で目的地に簡単に行けるので, 乗り始めてから自動車の素晴しさに実感が湧いてきて本当に世界が拡がってきた, と言っている。
 しかし,混雑した道路は走り難いし, 高速道路の料金の支払いにも苦労するし, 非常電話や雨の日の駐車には困っており,特に路上には,駐車違反の車が多くなかなか駐められず目的地の近くに駐車のでぎる所があればもっともっと便利になる。と言っている。
 全国の身体障害者の自動車運転免許取得者は,昭和56年末で約12万人,北海道で5,732人居り,最近これらの人々が増えつつあるが,狭いスペース,車がひしめく道路では安全な運転,快適な走行はてきない。また, 目的地における身体障害者のための駐車場やそのスペースが確保されていないことを痛感している。更に, 車に乗っていても「車イスマーク」をはってあるのに無茶な割込みをされることがあるため, 安全, 快適に走れるような, 道路構造やネットワークの完備をすることを望んでいる。
 道路においては, 観光地の展望台や休息所, 公共施設などには, 身体障害者用の駐車場や便所を設置し,更に,これを知らせる案内標識を設置する必要がある。
 駐車場の大きさは, 自道車の大きさと車イスの者が乗降に必要なスペースによって決まり,一般の駐車場より多少大きなスペースを必要とする。
 駐車場の設計上の留意点として,玄関に近い位置に設ける, マンホールや側溝は近ずけないこと,専用の標識とマークを付ける,横断歩道を渡らなくてく済む位置とする, などである。
 また, 交安委員会では, 身体障害者用の自動車であれば,通常の路上駐車を認める「許可証」を発
 行しており身体障害者の自動車利用の便を図っている。

9. 道路の占用許可
 
はじめに例を上げているが,道路を見ると狭い歩道に道路管者の施設以外に,道路占用許可を得た施設や不法占用物件が数多くあり, これらの施設には端部の突出,周囲の沈下,突出や中空ての張出しているものがあり, 身体障害者のみならず健常者でも危険なものがある。
 視覚障害者は路上に立ち上っているものは, 杖で感知することもできるが,構造物の基礎の先端,マンホール,桝,非常用袋固定環の凸凹等は感知できず, ほんの数センチでもつまづき転倒する危険がある。
 日よけ,雨よけ,旗ザオ,街路樹,電柱等に巻きつけた看板や針金, バス停標識などのように中空に張出しているものは,杖で感知できず顔や頭をぶっけたり被服をひっかけたりする危険がある。更に,不法占用の立看板, ゴミ容器, 露店商品台, 自転車,花壇などはいつも同じ位置でなく色々な所に突然置かれており歩行には大変苦労している。また, いつも歩き慣れている所が工事現場になっていたり工事用資材が置いてあったりすることも大変危険である。
 車イスの者にとってもバス停車帯で歩道が狭められていたり,バス待合所, 工事用資材が置かれていたり,商店の露台,放置自転車などて歩道が狭められており大変通行を困難にしている。
 最近,身体障害者の自動車利用が多くなってきており路上施設でも,郵便ポスト,公衆電話ボックス,火災報知機などは, 車から離れず利用できるよう,占用位置について工夫が必要である。
 占用許可に当っては,次のことを必ず守って指導に当って欲しいものである。

(ア) 建築限界内には絶対に入れない。
(イ) 工事期間はできるだけ短くし,標識や仮設物は安全な構造としできるだけ早く撤去 するようにする。
(ウ) 共架できるものは,関係者間に対し共架について調整するよう指導する。
(エ) 2重3重の掘り返しは絶対にしないよう関係者間に対し調整するよう指導する。
(オ) マンホールや構造物の基礎は平担にし,勾配は路面と同一とし,施工後沈下のないよう周囲を十分締固める。
(カ) 施工後の維持管理には,責任を持って十分対処できる社会的信用のある者であるこ と。
(キ) 占用工事は机上審査のみでなく,現地の施工指導監督検査についても管理瑕疵の生じないよう指導する。

 従って, これらのことから, 歩道の計画設計の時点で当面の占用物件の位置,構造規模,規格について調査する外,将来,占用物件となる管理者とも事前に十分協議し路上施設帯の幅, 歩道有効幅員を決める必要があろう。

10 維持管理の強化
 
道路の維持管理は, 車道部についてだけでなく歩道部分についても, もう少し強化する必要があると思われる。
 本道の道路や路上施設は,寒暖の差が激しく厳しい自然条件の中におかれており,凍結融解の繰返し等が多いため,この気象条件による破損や除雪排雪による損傷などがあり, 強固に造った構造物でも破損し欠陥となることがある。
 しかし, 一旦道路の欠陥による事故があると,道路本体, 占用物件, 不法占用物件, 路上放置物の如何を問わず,道路管理者に管理瑕疵の責任を問われる判決が,数多く出されている。このようなことを教訓として,道路維持管理についての通達もいろいろ出されている。
 維持管理の強化により,歩道通行の円滑化, 安全性,効果的利用が図られることにより,身体障害者のみならず交通弱者にとってもよりー層歩き易い歩道となる。
 このため,道路管理者は道路パトロール体制を強化するほか管理体制を補う意味において,沿道の利用者による道路モニターの委託等を行い,情報を早くキヤッチすることも検討する必要があろう。

11 冬期の交通確保
 
北海道の身体障害者対策の中ては,冬期間の生活の充実を課題としているが,道路については,歩道の除排雪と消融雪の整備である。
 特に,除雪時には歩道や側帯は滞雪スペースとなってしまう場合が多い。まして,歩道のない道路では路側帯は完全に滞雪スペースとなり歩行者は車道を通行しなければならなくなる。更に狭い歩道では歩道上に路上施設があり, 除排雪すらまゝにならない状態てある。
 このため, 車イスや松葉杖使用者は一人歩きはもちろん,介助者付ても歩くことは困難である。 また,視覚障害者にとっては,圧雪された歩道などでは,点字ブロックは無用となるばかりではなく,場合によっては滑り易くなり危険が伴う。
 現実として,冬期に一番先に困るのは,居住地からバス停や駅などの公共輸送機関までてある。居住地から公共輸送機関までの間は,一般に小路や裏路であり,除雪時間帯も遅く,車1台分の通行幅だけの除雪が多く思うように外出できる状態でない場合が多い。
 このように, 冬期間身体障害者が交通の不備によって外部との生活を遮断されることは,心身とも苦痛であり, また,冬期間戸外での運動や外気や日光に当ることは,身心の健康上不可欠であるのに,外出したくてもできなく在宅生活を強いられることは,社会に対する不信感と,阻害感を助長する。
 これらのことから,店住地から公共輸送機関までの間の交通確保は,地方自治体が十分行うのが望ましいが, 現在の地方自治体にも出来る限界があると思われる。
 そのため.地域住民一人一人が地域の身体障害者に対して温い理解と手を差し延べれるよう, ボランティアの意識を高揚させ,協力を得る体勢作りが必要と思われる。
 また, 今後の北海道の歩道は,積雪及び特別寒冷地の特殊事情を考慮して, ロードヒーティング,散水消雪,温水防氷,雁木付歩道等を積極的に取り入れて冬期間の歩道交通の確保をすべきである。このためには,道路担当者に理解を深めてもらうほか,除排雪,融消雪,防水,その他新技術の研究開発のための専門技術者の養成,研究開発機関の設置,財源の確保手法などの問題解決を図る必要がある。

§6. ボランティア活動について
 身体障害者は,障害者になりたくてなったわけでなく何らかの気の毒な理由があってなった人ばかりてあり,彼らが,道路を通行している時は道をあけたり障害物の取除きや誘導したりし,安心して安全に通れるよう手助けしてあげる必要がある。
 道路担当者は, 施設を作ったり,改善したりするだけでなく,街で障害者に会ったら真心を持って,自然に声をかけ,手助けするよう一人一人が心がけることが本当の障害者に対しての対応てある。
 しかし,我々は, 日常身体障害者と接する機会が少いため街で身体障害者と会っても何が困っているのか解らず, またどのように手助けしたら良いのか解らないため, 困ってしまい目をそらしてしまう場合が多いのではないだろうか。
 我々も,何時交通事故や怪我に遭い身体障害者となるかも知れない。道路で困っている人がいたら,人間としてお互に助け合う必要があるのではないだろうか。
 このようなことも含め, 北海道では,昭和58年5月24日に,次のような, ボランティア憲章を制定しました。

北海道ボランティア憲章

 北海道に住むわたくしたちは, たくましさと温かい心をもって.生きがいのある郷土づくりに力を合わせます。
 ここに, わたくしたちは, ボランティアのもつ役割の大切さを自覚し, この憲章を定めます。
1. わたくしたちは, すすんで地域社会に奉仕することをよろこびとします。
1. わたくしたちは, 自らを高め, 人間愛にもとづいて実践するようつとめます。
1. わたくしたちは, ふれあいを大切にし, 友愛と信頼の輪を広げます。
1. わたくしたちは, 豊かなまちづくりに参加する気風が満ちあふれるよう, そのさきがけとなります。

 この憲章の精神を尊重し,進んでボランティア活動に参加することにより,よりー層,自信の持てる道路設計ができることになる。

あ と が き

 人は必ず老人となり,現代の交通戦争と言われる車社会において, 自分自身, 身内,友人,周囲の人々もいつどのような事故や災難に遭い身体障害者となるかわからない。
 今, 身体障害者の利用し易い施設を整備すると言うことは, 健常者にとっても, 当然,安全で使い易くなることである。
 このことから, 「身体障害者を配慮した施設」とは,身体障害者専用施設でなく, 「身体障害者にも利用できる施設」と考えるべきである。
 本稿で, 「身体障害者にも利用できる施設」を整備すると言うことは,何も,新しいものを作るのではなく,現在進めている事業そのものが身体障害者も考慮した施設であって, それにほんの少し注意を向けわずか少しの補修をしたり, ちよっとしたアイディアを取り入れることにより身体障害者には今までより大変使い易い道路となる, と言うことである。
 しかし, 大切なことは身体障害者のみならず社会全体が高令化に向っており, 高令者の余暇利用と共に高令者のモビリティ等があり,将来とも利用し易い道路とするため,今こそ我々道路担当者は,道路と言う貴重な社会資産の質を高め,親しみとうるおいがあり,快適で安全に利用できるように道路を作っておくとともに, その維持,管理にも十分配慮する必要がある。
 尚, これらの施設整備するには当然財源が必要となるため,国民(住民)の関係行政当局の理解が得られ, これらが達成されることを願うものである。
 最後に,筆者は,道路技術屋として北海道に奉職しあと数年で20年になるが, 今回, 民生部に席を居くことになり初めて交通弱者と言われる人々が,歩道についていかに困難を惑じているか知る機会を得たので,今日までの現場の経験や現実の道路状況及び各種参考資料等により本稿を取りまとめたものてある。独断と偏見や考え違いの事も多々あると思いますので,皆様方のご意見, ご感想, 叱唖を受け賜われれば幸いです。また, これらのことについて, アイディアを寄せ合い勉強会等を行い,技術指針でも作成できれば,更に喜びにたえないものであります。

(北海道民生課 総務課 主 査         
前・帯広土木現業所道路建設課道路係長)

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