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北海道の高速道路の整備

北海道建設部道路計画課
課長 戸谷 有一

.はじめに

国土面積の22%を占める北海道では、図ー1に示すように、人流の約90%を、物流の約98%を自動車交通が支えており、道路の果たす役割は極めて大きいが、道内の高速道路の供用率は全国の約半分となっている。北海道の特性を踏まえ、北海道の自律的な発展基盤としての高速道路の必要性と、今後の整備にあたって、その便益を各地域が十分に享受するために必要と考えられることを、以下に概説する。  

図ー1 輸送人員、輸送貨物

<輸送人員(H10)>
<輸送貨物(H10)>

      

北海道の道路を考える上での留意点

北海道の道路整備及び管理にあたり、以下の特性に留意する必要があると考える。

  1. 広大な面積(国土の22%)に都市が分散しているため、都市間距離が長いこと。
  2. 厳しい冬期間の交通を確保すること。
  3. 北海道外への移動には、鉄道を除き空路、海路などの交通手段(モード)の変換が必要であること。
  4. 北海道の特性を活かした農林水産業、観光は人と物の円滑な移動が前提となること。

上記の4点の特性についてデータをもとに以下に整理する。

  1. 都市間距離が長いこと

    北海道は、広域に都市が分散し、約570万人が住まいするため、図ー2に示すように、全国に比べ都市間距離がいずれの都市規模についても約1.5倍以上であり、都市間の移動距離が長い。
    さらに、圏域間の移動の一つの目安となる地方生活圏中心都市間の距離は図ー3のように、北海道は20の地方生活圏にある中心都市間の距離は84.7kmであり、本州の平均値47kmに対し、1.8倍となっている。また、道南圏、道央圏、道北圏、オホーツク圏、十勝圏、釧路・根室圏の6中核都市圏間の平均距離は122kmであるため、高速道路ネットワークが整備されてはじめて、隣接の圏域への車による相互の移動が、約1時間に短縮されることになる。    

図ー2 都市規模別・都市間距離
 図ー3 地方生活圏中心都市間の距離

注)北海道(6圏域):北海道長期総合計画において「地域経済生活圏」として設定されている。

  1. 厳しい冬期間の交通確保

    道路路面、歩道の凍結のおそれのある0度以下の時間数が、図ー4(平成11年暦年アメダスデータ)のように、札幌で年間2,340時間(98日)、旭川で2,879時間(120日)と、地域の中核となる都市においても、年間の約3分の1を占めている。

    さらに、図ー5のように、高緯度に位置する北海道の植生と我が国の他の地域のそれとを比較すると中部地方の2,000m級の植生が、北海道の500mに相当する。従って、比較的低い標高での峠越えも北海道では、冬期道路交通の大変な難所となっていることがわかる。

図ー4 年間の0゜C以下の時間数(H11)
図ー5 地域別、各峠における植生状況

  1. 北海道外への移動にあたっての交通モードの円滑な転換

    図−6のように、道内には、定期便が運行されている空港は13空港、道外へのフェリー定期便が運行されている5つの港湾を含む特定・重要港湾として13港が配置されている。人、物の移動にあたり、本州間等の交流をスムースにするためには、空港・港湾など交通拠点と高速道路を直結するなどアクセスの改善を一層推進する必要がある。  

図ー6 道内の空港、港湾

 

  1. 人と物の移動を前提とした主要産業 道民及び道外客の総観光消費は年間1兆2,163億円で、観光消費を通じて得られる産業間取引による生産誘発効果や家計消費を迂回する効果により、道内観光による生産波及効果は1兆8,773億と推計されている。一方、道内の農林水産業の粗生産額も1兆5,177億円であり、観光、農林水産業は北海道経済を支える主要産業となっている。

    また、平成10年度道民経済計算推計結果から、北海道と域外との財貨・サービスの取引をみると、移輸出額が約5兆8,612億円に対し、移輸入額が約8兆3,134億円と約2.5兆円の入超となっている。すなわち、本道が道外に売った財貨・サービスより、道外から買った財貨・サービスの方が多く、この差額が約2兆5千億円である。域外への移輸出額を高め、「入超」を少なくするためにも、北海道からの農水産物の出荷を増やし、道外からの観光客の入り込み客数を増加させるよう、道内の環境を整えていくことが重要である。

    北海道の豊かな自然環境、四季の変化、豊富な味覚や温泉などを活かした観光や食糧基地としての役割を発展させていくためには、観光にしても農林水産業にしても、道内での人(観光客)と物(生産物)の移動を前提としていることから、その振興を図るためには道路は欠くことのできないインフラである。


道内の道路整備の現状

北海道開拓以来の約130年間で、先人のたゆまぬ努力により、道路ネットワークの整備とその機能の充実を図り、高速道路から市町村道までの約8万7000kmの道路網がつくり上げてきた。その結果、道道以上の18,000kmは改良率を約95%までに押し上げるに至っている。(表ー1)

しかしながら、高規格幹線道路については、高速道路全体の採算性の確保が課題となっているなかで、道内で計画されている高速道路は利用交通量が十分見込めない路線もあることなどから、図ー7、表ー2のように、その整備率が全国の54%に対し、27%と約半分に止まっている現状にある。また、その整備状況をみると、道央圏と十勝圏を結ぶ「夕張〜十勝清水」間(延長80km)のように、ネットワークが欠落している区間が存在するなど、高速道路の高速性、長トリップ対応などのメリットを享受しづらい課題を有している。

表ー1 一般道路の現況(H12.4.1) 図ー7 高規格幹線道路整備率(H12.4.1)
 
表ー2 高規格幹線道路の整備状況(H12.4.1)

     

高速自動車国道については、昭和41年に国土開発幹線自動車道建設法が制定され、32路線約7,600kmが定められたが、その後、昭和62年に同法が改正され、現在の43路線11,520kmで網を構成することになる。未整備の夕張〜十勝清水間は、法改正前の7,600kmの一部を構成していたが、全国的にも、7,600kmベースでネットワークが欠落している区間は少なく、現在工事を中心に事業が進められている東海北陸自動車道の清見〜五箇山間41kmなど、ごく一部となっている。



今後の道内の高速道路を整備するにあたっての視点

 

 1 )夕張〜十勝清水間をはじめとした未供用区間の整備効果 道央圏は約337万人の人口を有し、旭川、稚内などを圏域に含む道北圏の人口は約71万人、帯広を中核とする十勝圏と釧路・根室圏をあわせた人口は約73万人である。これら圏域間の自動車交通の断面交通量は、図ー8のように、道央圏ー道北圏断面が約37,500台/日、道央圏ー十勝圏断面が約9,500台/日と約1/4であることは、歴史的背景による両圏域と道央圏との結びつきの違いはあるとしても、道央圏と十勝圏以東との結びつきを日高山脈が阻んできた地形的制約が大きいものと思料される。

現在供用中の十勝清水〜池田間の利用交通量はネットワーク化されていないこともあり、約1千台/日と十分な利用がなされていないが、図ー9のように、夕張〜十勝清水間約80kmが高速道路で連結されれば、単に高速化が図られるだけでなく、現在、標高1,020mの日勝峠を走る一般国道274号に変わり、2,000m級のトンネル群により標高500〜600レベルで峠越えが可能となり、冬期の交通条件もかなり改善されることが予想される。

本州においては、背骨となる縦貫道路の整備を概ね完了し、引き続き横断道路の整備による新たな太平洋側と日本海側の交流・連携の効果を高めている。たとえば、東北横断自動車道酒田線の整備により、宮城県の仙台港と山形県の酒田港が高速道路で直結し、太平洋側から仕入れた原料を内陸で加工し、日本海側からアジア諸国へ出荷するといった新たな国際物流ルートの形成が期待されたり、磐越自動車道(東北横断自動車道いわき新潟線)の整備により、新潟で生産された乳製品の販路が東北地方に拡大するなどの具体的な変化が生じてきている。

一方、北海道においては、現状でも、図ー10のように、道内の水産品は、函館港を中心とした水産加工施設の集積とフェリー輸送の利便性などから、道内各地で漁獲された水産品はその約45%が函館港から全国各地の市場へ運ばれている。また、道内の農産品についても、道央の港を中心として集積し、全国各地の市場に運ばれている。このように、全道で生産された農水産物をフェリーで道外へ輸送する場合には、生産地から道内を北から南へ、東から西へ道路輸送し、道央、道南のフェリー港から、全国の市場へと運ばれていることがわかる。

夕張〜十勝清水間の整備をはじめとした道東、道北、道南の未供用区間の整備により、本州でみられるように、圏域間の交流・連携に大きな変化をもたらすことが期待される。整備のインパクトを各圏域で享受するためにも、道東の太平洋側と道央、道南などの日本海側を横断する結びつきや道北、道央、道南の連携強化など21世紀型の交流・連携の可能性について、各界で議論を深めることが重要である。

図ー 8 断面別交通量
図ー9 圏間ネットワーク状況
図ー10 道内産品のフェリー港湾選択率


)北回りバイパスの整備

平成12年6月にとりまとめられた「北海道活性化懇談会報告書」では、苫小牧・室蘭を回り、函館・本州を結ぶいわゆる南回りルートが有珠山の噴火により寸断されたことを踏まえ、「災害が生じても人流・物流の確保が可能となる札幌から小樽を経由して函館・本州を結ぶ北回り札幌ルートを北海道のライフラインとして緊急に整備することが極めて重要な課題となる。」と指摘し、黒松内〜小樽間の高速道路などの早急な強化の必要性をうたっている。

現在既に整備されている南回りに加え北回りルートが整備されれば、半径30kmの高速環状道路が北海道で唯一整備されることになる。環状道路の沿線及びこれに囲まれた地域は、北海道を代表する農林水産業の生産地であるばかりではなく、支笏洞爺国立公園、ニセコ積丹小樽海岸国定公園など我が国を代表する観光地であり、年間の来道客の30%延べ約1400万人の入り込み客数を有している。

したがって、北回りルートの整備は災害に強い道路網の確立のみならず、観光、農林水産業等の振興に大きく寄与することが期待される。また、高速環状道路の沿線、内部の道路網についても、北海道の豊かな環境を満喫できるものとなるよう、景観や情報提供などに配慮していくことが重要と考える。


)冬期の交通確保

道内では高速道路が現在約480km供用しているが、通過地点の最高標高が道央道常磐トンネル坑口(旭川市)の約300mである。これは、これまで道内の高速道路は河川沿いもしくは海岸線など比較的地形が急峻でない地域において、優先的に整備が進められてきている経緯によるところが大きいが、今後は日高山脈付近などでは、長大トンネルを整備し、500〜600mレベルの峠越えを整備していかなければならない。工事自体も地形・地質条件等により困難を極める可能性があるが、供用後の冬期交通安全を確保するために、極寒での高速道路管理に必要な備えを道内の国道などの実績を踏まえ、十分に練る必要がある。  


)高速バスネットワークの形成

高速道路ネットワークが充実されていくにつれ、都市間バスの高速道路利用が進み、そのサービス水準も向上してきている。

札幌・留萌間を例にとると、表ー3のように、昭和58年11月の札幌IC〜岩見沢ICの供用後、昭和59年5月に初めて都市間を結ぶバス路線が開設され、その後、平成元年9月の滝川IC〜深川ICの供用まで、逐次サービスは改善され、所要時間は3時間10分から2時間36分と34分短縮され、便数も日8便から17便となった。現在整備が進められている高規格幹線道路深川・留萌自動車道(延長約50km)の利用が可能となれば、さらに利便性の向上が期待できる。

高速バスは運行時間の24時間化が可能であること、需要に応じた便数の設定がしやすいなどの特性があるが、今後道内の高速道路の整備にあわせ、都市間移動の交通手段としての役割が増大することが予想される。また、高速道路本線に設けられているバスストップは高速道路の通過する地形的要因などにより現在利用が十分ではないが、今後整備される高速道路については、地域の「駅」としての機能を十分発揮させるため、沿線市町村等において、事前にどのような工夫をすべきかを検討することも必要と考えられる。


表ー3 札幌〜留萌間の高速バスの運行状況

 


おわりに

今後とも北海道内の高速道路整備を円滑に進めて行く上で、配意すべき点を以下に記す。

第一に、全国に比べ、道内の高速道路の整備が遅れていることだけを捉え、兎角キャッチアップの視点からだけ、論じられるむきもあるが、高速道路の全体の採算性を確保しつつ、道内の高速道路を促進する手だてについて、地域としても考えていく必要がある。

第二に、北海道の高速道路をしっかり整備していくことは、北海道内の利便性の向上や活性化につながるばかりではだけでなく、明日の日本を支える北海道の果たす役割を確かなものとするためにも、欠かせない基本的インフラ整備であることを、大都市圏で生活する人々にそして国民全体に発信していくという不断の努力が必要と考える。すなわち、全国の食卓を豊かに彩り、人々に北海道の自然とのふれあいのなかで心豊かなを時間を提供することにつながることを理解していただくことが重要である。

第三に、高速道路に限らず、北海道の道路管理の最大の課題は、冬期道路交通の確保である。来年(2002年)1月には、アジアで初めての第11回国際冬期道路会議(PIARC札幌大会)が札幌で開催される。国内外の冬期道路の機能確保にあたっている専門家が一堂に会し、国際的な技術交流を通じ、得られた成果を今後の対策に反映していくことが期待される。また、最先端の情報通信技術を用いて、人と道路と車両とを情報でネットワークするITS(Intelligent Transport System:高度道路交通システム)の今後の展開にあたっても、北海道については、冬期路面の状況、気象状況の把握そして道路と車の相互の情報やりとりや効率的な除雪システムに情報通信技術を活かしていくことが重要である。北海道で開発された寒地のITS技術が北海道のみならず、全国に、そして世界へと展開するなど、ニュービジネスの創造にもつながる可能性もある。

第四に、広域に都市が分散している北海道においては、道民の生命を守るため、救急医療体制に対する期待は大きい。より短い時間で高度な救急医療体制の整った救命救急センターなどへの重篤患者の搬送には、高速性と安定性を有する高速道路の利用が極めて有効である。今後、救命救急センターの配置計画や整備計画の立案にあたり、利用が想定される幹線道路との連携が重要と考える。また、ドクターカー、ドクターヘリ、救急ヘリなど高度な救急システムと高速道路システムとの融合についても、北海道の特性を念頭に検討が進められることを期待する。

最後に、高速道路は地域間の連携・交流の状況をドラスティックに変える可能性のあるインフラである。いづれにしても、道内の高速道路整備を起爆剤として、北海道の強みを伸ばし、弱みを補う種々の方策を、産学官の連携のなかで大いに議論すべきであると考える。

本編をまとめるに際し、データととりまとめなどに際し、北海道建設部道路計画課島崎課長補佐、清水主査、平野主査のご協力を頂いたことに対し、感謝の意を表する。



参考文献:特定財源制度堅持・高速道路等整備促進北海道東京大会特別講話・意見発表集     2000道路整備効果事例集(監修:建設省道路局)

北海道の観光経済、消費と経済効果(北海道産業経済効果調査委員会)

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