占冠村
観光開発と交通
観 音 信 則占冠村長
占冠村は, 日高・夕張の二大山脈に囲まれた盆地で, 上川支庁管内の最南端に位置した山村です。北東は南富良野町,
南は日高町, 平取町, 西は夕張市, 穂別町に隣接し, これらの境界はいずれも分水嶺でなりたっています。
総面積は571km2で東京23区とほほ同じ面積を有していますが, その94%が山林で占められ, 耕地はわずか2.3%となっています。 人口は, 昭和35年の4,700人をピークに減少しつづけ, 現在は1,500人と典型的な過疎の村となっています。
気象条件は内陸性気象圏内に属し, しかも高峻な山岳に囲まれているため, 気温の日格差, 夏冬格差が大きく冬にはマイナス30℃を超える日が幾日かあります。
明治35年より入植が始まり, 地理的・自然的条件を克服しながら畑作, 肉牛, 乳牛を主体とした農業, 並びに林業の村として発展してきました。 又10年前から, 森林資源の副産物であるフキ, ワラビ, ウド等の山菜か豊富にあるため, 過疎対策の一環として山菜加工場を建設し, その製品は「占冠山菜」として全道でも代表的な一村一品の物産となっています。
一昔前までは「陸の弧島」「日本のチベット」と呼ばれていた交通条件も, 国鉄最後の新線と言われている石勝線が営業を開始したのに伴い, 徐々に整備されつつあります。 この国鉄石勝線は, 村を横断し, 村内には占冠駅と石勝高原駅の二駅が新設され, 現在では一日に特急が6往復(石勝高原駅は5往復)それぞれ停車しています。 道路網は, 国道237号線が村を縦断し, 道道占冠穂別線, 道道占冠落合停車場線が村の中心部を起点として横断していますが, 国道を除いては未改良・舗装の部分が多く残っている状況にあります。
過疎化が進行するなかで, 村では産業基盤, 生活基盤の整備を講じてきましたが, 村内外の厳しい諸情勢下にあるため, 充分な効果をあげるに至らなかった。 この過疎脱却を図るため, 村民長年の夢であった国鉄石勝線営業開始を起爆剤に, 第一次産業から第三次産業まで経済的波及効果の最も大きい観光産業の導入を計画し, 本村を特色ある3地区に別け推進しています。
1. トマム地区(石勝高原総合レクリェーション施設)
本村の北東部で国鉄石勝高原駅を中心とした約1,000haに大規模観光開発計画を策定し,昭和56年企業誘置に成功し, 計画の推進母体となっています。
この開発計画の概要は, ワイルドライフとスポーツのメッカであるアメリカコロラド州, ロッキー山脈の中央部にある「アスペン」をモデルにし, 質の高い山岳リゾートエリアをめざしております。 第一期工事としてすでにスキー場(ペアリフト5基, シングルリフト1基, 4人乗ゴンドラ1基, リゾートセンター, インフォメーションセンター), ホテル(収容人員530名), テニスコート(8面)が営業をしており, 今年11月には分譲マンション(305戸)がオープンする予定です。 第二期工事として, 昭和69年を完成年度とし, スキー場, テニスコートの拡張, ゴルフ場, 野球場等スポーツ施設。 野外音楽堂, 国際会議場等の文化施設や, スキーヤーズホテル, コテージ等の宿泊施設が予定されており, 年間入込数として131万人を計画しています。
2. ニニウ地区(ニニウ自然の国)
ニニウ地区は占冠村り南西に位置し, 中心地より約10km離れた谷あいに開けた集落であるが,
離農・離村があいつぎ2戸を残すだけとなってしまいました。そのため家屋や農地がそのまま残り,
利用されない状況にありました。 一方, ニニウ地区の自然環境は, 本村にあって,
特に大自然に囲まれた山村としての条件を豊富に持っており, 周辺には赤岩青巌峡やレクリエーションの森があり,
豊かな資質を持った環境といえます。
村として, 恵まれた自然と放置されている農地, 廃校・廃屋を有効に再利用し, ニニウ集落の再生を図るため「ニニウ自然の国」構想を策定しました。この計画は「自然」と「人間」のかかわり方の原点に立ちかえり, 自然の中での各種活動体験を通して, 自己発見型の新しい社会教育が行える場として開発する, というのが基本原則であります。
整備にあたっては, 新しい社会教育の場として五房(交房群・工房群・考房群・耕房群・行房群)という概念から施設整備を計画しています。
○ 交房・・・・・・宿泊交流, 野外活動交流
○ 工房・・・・・・小果樹加工, 山菜加工, 手づくり
○ 考房・・・・・・天体観測, 自然観察乳製品, 木工, 陶芸, 織物等試作
○ 耕房・・・・・・体験農園, 体験牧場
○ 行房・・・・・・野外スポーツ, 山村生活体験
すでに「ニニウ自然の国」の中核となる宿泊施設が, 昭和59年に占冠村サイクリングターミナル(収容人員80名)としてオープンしています。 昭和60年には考房の遊歩道, 耕房の体験農園, 行房のテニスコート(2面)もそれぞれ開設し, 現在キヤンプ場を整備中です。
3. 中央・占冠地区
この地区は本村の中心であり, 国道と道道2路線の分岐点及び国鉄占冠駅が所在している。
国道274号線の全面開通や将来構想の北海道横断自動車道の建設などで主要な交通接点となるため,
占冠駅前を中心とした新たな開発と既存施設の充実, 山菜加工場を中核とした特産品の生産団地の整備を検討中であり,
トマム地区, ニニウ地区とあわせて, 将来は北海道の軽井沢としていく考えであります。
観光開発により, 就労の場が拡大されたことやUターンの若者も増え昭和56年5月末には1,432人であった人口も現在1,557人と増加し,
観光客も開発前と比較すると昭和57年度2万3千人の入込が昭和58年度16万5千人,
昭和59年度23万3千人と急激な増加をみせています。
3年前まで過疎という暗く重苦しいムードが漂っていた占冠村も, 今では希望にあふれた活気のある村へと大きく変貌をとげようとしています。
全村的には観光開発の契機となったのは国鉄石勝線の営業開始でありますが, ここ占冠村には一部不通区間が残っている国道274号線があり, これが解消されると旭川―苫小牧を結ぶ国道237号線を縦軸とし, 札幌―帯広間を結ぶ国鉄石勝線及び国道274号線横軸とする十字文差点の要に位置することになります。
この他, まだ未整備の道道石勝高原幾寅線, ニニウ夕張線の2路線が主要国道と結ばれていることから, 交通の要所として, 立地条件が飛躍的に向上しつつあることが背景となっています。
すなわち札幌, 苫小牧, 帯広, 旭川といった中核都市, 更には千歳空港, 新帯広空港, 旭川空港といった空の玄関口が3時間圏内に含まれることになり, 道内の主要都市との結びつきが強化されるものと予想されます。又, 近い将来, 北海道横断自動車道の開通が実現すれば, 3時間圏はさらに拡大することになり, 今まで閉鎖的であった本村の交通条件が逆に最も有利な交通条件を持つことになります。
観光地に繰返し来訪する人を見た場合, 3時間圏内に居住する人が主体となっており, その中でも特にニューファミリーを中心とする家族旅行が今後増加するものと考えられます。 こうした観点から見ると3時間圏内の人口は約360万人(全道の約65%)であり, そのうち夫婦と18才未満の子供がいる世帯がおよそ3分の1を占めており極めて市場性の高い地域であります。
以上のことから本村の観光開発は, 立地条件の向上と交通条件の整備をインパクトとして推進してきたところですが,
よりー層飛躍していくためには地間及び地域内両面からの,更には陸・海・空といった立体的視点からの総合的な交通条件の整備・高度化が課題となっている。
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