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交通政策についての一提言
加 藤 正 人
自動車の排気ガスによる大気汚染公害はますますひろがり、しかも排気量が普通自動車の3倍から8倍以上にもなるトラツクの大型化はいよいよ進んでいく趨勢にある。経済成長の増伸大切か、国民生活環境改善の急速解決が大切か、二者択一の時ともさへなつて来たように思へる。そこで当面考へられる一二の点を述べて一つの提言としたい。
イ) 交通秩序確立のための交通攻策
現代交通機関は歴史的頂序からいつて船舶、鉄道、自動車、航空であつてその中輸送量のシエアの順からいえば国内的にみて鉄道、船舶、自動車、航空の姿で来ていた。が戦後の経済成長と国民生活の充実に伴い、昨今の順序は自動車、船舶、鉄道、航空となり、近き将来において鉄道と航空がその順位が転換されんとしている。今試みに輸送量の分担割合を資料(道路建設10月号)について見ると次の通りである。
(旅客)
〔43年度〕
国鉄 ( 6,868百万人) …… 19% 民鉄 ( 9,318百万人) …… 25.3% バス (11,529百万人) …… 31.9% 乗用車 ( 8,214百万人) …… 22.8% 航空 ( 8百万人) …… 0.0% 海運 ( 151百万人) …… 0.4% 計 (36,090百万人) …… 100%
〔50年度〕
国鉄 ( 9,500百万人) …… 17% 民鉄 …… 21.3% バス …… 29.1% 乗用車 …… 32.1% 航空 …… 0.1% 海運 …… 0.4% 計 (56,000百万人) …… 100%
(貨物)
〔45年度〕
国鉄 ( 199百万人) …… 4.6% 民鉄 ( 59百万人) …… 1.2% トラック ( 3,813百万人) …… 87.8% 海運 ( 278百万人) …… 6.4% 計 ( 4,344百万人) …… 100%
〔50年度〕
国鉄 ( 300百万人) …… 3.1% 民鉄 ( 80百万人) …… 0.8% トラック ( 8,820百万人) …… 90.0% 海運 ( 600百万人) …… 6.1% 計 ( 4,344百万人) …… 100%
しかも自動車とくにトラツクの長距離輸送の普及については、正に隔世の感を深くするものである。
鉄道が輸送の根幹であつた戦争末期までとこの戦争終結後、 社会経済の復興が盛んとなり、輸送力の供給不足から輸送事情の打開策として日本通運が貨車打行と称してトラツクによる貨物輸送を積極的遂行に乗りだし、かつ長距離化が計られて来て以来、この輸送方式が民間にも普及しはじめ、さらに経済成長に伴つてトラツクの大型化が取入れられて今日に至っている。 しかもこの大型化は道路の改善に伴って将来ますます推進されつつある現状である。また省力化、生活活動の経済化を計る上からは、避けられない現象である。
だからといつてこのまま無制限に看過していてよいものであろうか、疑問とするものである。
只単に経済上の利益をつかむことのみに終始することが、人間社会生活に幸を齎すものであろうか。 (最近ようやくやかましくなつた国土汚染、沿岸海域の汚濁による公害状態をみても解るように、あたかも売春婦が体内から「ウミ」を出し乍らも金の身入りが多いからといって稼ぐ姿に似てやしないか………)
今日の輸送状況とくにトラックの場合をみて見ると、大型貨物が九州から北海道まで(北九州から札幌まで三日間で)輸送が行われている。この間の乗務員の疲労は相当なものである。―大体1日の実運転乗務時間は、4時間位が限度であろう。この情勢はますます盛になろうとし、交通事故災害の発生に有力な原因をなすものと考え、今後が心配されるのである。
この様な輸送状況が急速に進んで行く結果、狭隘な国土で、しかも日本縦断幹線道路が今日から既に将来共不足を告げて来ているということは、自動車増勢とこの様な長距離化して来た輸送が続進して行く限り、 当然招来する現象であって、これに対処する革新的対策が打ち立てるべきときに来ている思うのである。
しかもこうした情勢下にあって、一方の鉄道輸送はその分担量が過少となり、かつその輸送能力は宝の持ち腐れ的に時代を空費して行く有様である。国家社会的にみてもその輸送施設能力の放棄化的な姿は不経済かつ不合理といわねばならない。
ここで私が提言したい事は、先ずこれ等輸送機関の輸送分担と輸送範囲についての秩序をつくることである。分担は貨物の種類でも系統でもよい。また範囲はそれぞれのシェアを定めこれを守ること。
トラツク輸送の範囲としては半径150〜200粁の間を限度として、 その地域の輸送範囲を基準として考える。そしてこれ等の範囲を超える輸送については、 その都度許可制とする。したがつてそれ以外の区域輸送は鉄道によることとする。すなわち長距離輸送は、その能力を充分保有する国鉄に委ねるべきである。
こうした輸送分担秩序を交通政策として行政を施すべきである。
ロ) 公害防止としての交通政策
自動車の排気ガスによる公害は増加するとも、現象することは避けられないであろう。排気公害を除去することが早急簡単に避けられないとすれば(電気自動車、蒸気自動車はその大型化は経済的にみて普及は望めない)、現実に採り得る処置としては現在のトラックの大型は取りやめ4t積以上は見合わして小型トラツクにすべきである―前述の輸送範囲で考えれば小型で充分である。
一体小型自動車と大型自動車とではその排気量は少なくとも3倍から、多くては8倍以上で、平均5〜6倍位にもなるであろう。一台の自動車でこの有様であるから自動車の現台数を掛けたら大変な多量の排気量となることが解ろう。
しかも大型は道路の破損率も大きいのみならず砂塵や泥雨水の飛散量も猛烈に多量である。すなわち、この大型を小型化することは現在の排気量幾何級数的に減少させることであって、なおこれ以外の前記難点から救済することが出来ると思うし、現在の排気公害の救済には速効的であると思う。
この公害の点から見ると、鉄道は将来完全電化であるから排気ガスはない。むしろ電気のスパークによつて有効なガスが空中に醸成されもするのである。 ―デーゼルエンジンからは排気ガスが出るが、その使用時間と輸送単位当りで比較すれば、問題にならぬ程僅少ないものであろう。
簡単乍ら以上の様に考えてきたのであるが此の見地で改行改革を進めることによつて交通政策上の秩字が樹立され、それぞれ整頓された分野における混乱なき輸送成果を収め得て、無限の業績向上が期待出来得ると思うのである。
(筆者は秋津道路KK勤務)