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北海道の地域経済と交通

町 田  真 也

 

は じ め に
 今年7月10日、第3期北海道総合開発計画が閣議の決定をみた。
 この計画は小破46年度以降55年までの10ヵ年計画であるが、 ご承知のように国は昭和25年、戦後の国民経済復興の一翼をにになわせる目的をもつて北海道開発法を制定し、 道開発を国策として開発を推進するところとなり、 これに基づいて国は昭和27年度以来北海道総合開発計画を作成し、積極的な開発の促進をはかつてきたが、第一期計画(27〜36年)を作定したのである。
 この間北海道の経済は、幾多の変遷をみながらも比較的順調な伸びをみせて来たといえよう。しかし地域経済の構造的な側面から見るならば、先づ札幌、小樽、室蘭、苫小牧を含めた道央J型ベルト地帯への集積と従来北海道の地場資源であった、石炭の後退、林産資源の停滞など経済自由化のあおりを喰つて資源的な価値を失い始めてきた。
 この間にあって農産物の占めるウエイトはまだ高いが、全国一の生産量を保つ米の生産調整問題と、大規模草地、酪農へ転換規にある事んど関連部門になお多くの問題をかかえているのが実態である。
 この為、従来の輸送パターンは大きな方向の転換を余儀なくされ、石炭、木材など大量貨物の移出方式に替って、石油、原料炭、外材、セメンとなどの大量輸移入、さらに消費材系の移入方式が進行しつつあり、今後とも一層この傾向を深めるであろう。
 つまり北海道経済は資源型の産業依存だけでは成り立つものではなく、積極的な対外依存策を好むと好まざるに拘らず推進しなければならない。
 このような情勢に対処するため、我々は道・本州間はもちろん道内交通においても各輸送機関分野を通じて高速、大量輸送を主体とした新交通体系を確立し、北海道が持つ広い土地と豊かな水を基幹とした新たな産業開発を指向したのである。このような情勢の中で、国は第三期計画期間内に投入する資金の総額を民間を含めて約20兆7,500億円と定めたが、このうち道路、港湾、治山治水をはじめとする産業基盤整備は5兆3,500億円の投資規模とするなど、政府投資の総額は8兆5,500億円と計画したのである。

 

1 道経済の道向
 本道の経済成長については一応全国なみに推移しているとみてさしつかえないが、最近の生産所得をみると43年度には1兆9,051億円と前年の14.2%の伸びを示した。(42年度の成長率は20.8%)これを産業別にみると、建設業20.3%、卸小売で19.2%、金融保険18.1%、サービス業17.6%に対し、生産部門では製造業で13.1%、農林業で7.0%、水産2.8%にとどまっている。しかし第一次産業では全国の伸び率4.7%を上まわってはいるが、第二次部門のウエイトが低く、従って北海道経済は依然として全国の4%弱にすぎず、産業構造そのものに対するぜい弱性が指摘されるところである。

(1) 道央への集中
 しかし百万都市札幌を中心として、室蘭、苫小牧、の太平洋岸から日本海側小樽市を結んだJ型ベルト地帯を中心とした道央はすでに昭和38年新産都市に指定されたが、この地域に対する集中傾向は著しいものがある。
 その主になる指標をみると、人口では全道の約40%に当る210万人、製造業出荷額は全道の48%5,560億円、商品販売額は(卸売を含む)は57%の1兆7,600億円に達している。すなわち製造業の出荷額からみると、栃木県、長野県等の中進県波に当たり、商品販売額においては兵庫県なみと神奈川県、京都府などの先進県上まわる状態にある。
 このような実態から一層人口、経済の集中が進むものと考えられるが、反面、道央以外の道内諸地帯の過疎化減少が顕在化して来た。道内経済の均衡化を企図する場合、複数の集中地域が最も望ましいが、現実には函館、旭川、釧路、北見等における人口の伸びはあるに拘らず、道央の巨大化を押える決め手とはならない。

(2) 道内産業の生産動向
 先づ石炭であるが、昭和43年度の生産実績は2,127万トンであったが、 このうち大手は0.5%の減、中小については5.3%の減産となり炭鉱の休廃止はその後も進行しつつある特に紙パルプ、鉄鋼、暖房向けのものは大巾な減少を示しており、今後の通しとしも政策需要に維持されている電力鉄鋼以外は世界的なエネルギー革命の影響を受けて、 需要はさらに減退が懸念される。
 また、他の金属、非金属についても、結局は国内需要の動向、国際競走力等に左右され、生産横ばいの傾向にある。
 農業についてみると、43年度の耕地面積は967,000haと本道総土地面積に対する耕地率は12.3%を示し、全国の15.9%に比べると低いが、41年度以降年々増加の傾向にある。このうち水田の増加率は対前年増加率は4,7%と伸びたが、畑については1.0%の減となった。しかし畑面積の内訳は69万haのうち、普通畑53万ha、樹園地7千ha、牧草地15万haであるが、これを昭和40年と対比するとそれぞれ22.7%減、46%増、64.9%増と牧草畑の飛躍的増加が目立ち、道東、道北を中心とした酪農地帯における牧草畑への転換が草地造成とあわせて活発化し従って乳肉牛については44年2月現在で、乳牛44万頭、肉牛38万頭と対前年比で16.3%、15.0%の増となり、全国でシエアーは1/4を占めている。この他、米は123万トンと全国の8.6%、馬れいしょ234万トン(全国の59.7%)、甜菜200万トンの生産状況にあり、北海道が我が国の食料生産基地のウエイトは依然として高いものがある。
 林業については、最近の生産量(立木伐採)は漸減しつつあるが、国有林、道有林、高令林が多く、成長の減退舌辛原野老令木の伐採が進展している為伐採量は成長率を相当上まわる現状にある。この為今後当分は林相改良等を加えるとともに造林の推進が当面の課題となろう。
 水産業についてみると、過去10ヵ年間概ね停滞を続けていたが、昭和42年以降、北洋転換船の増隻、大型化、イカ漁の機械化などによって、スケソウダラ、イカの大巾増となり、年間130万トン代の漁獲量は42年度には150万トン、43年には175万トンを記録し、全国の21%を占めている。特に最近の加工食品需要の増大、冷凍流通形態の進行等に伴う冷凍加工が著しく進展してきた。
 また水産物の道外移出については50万トン代の数量を示し、このうち冷凍水産物は40%を占めている。

(3) 観光客の著しい増加
 国内観光旅行は全国的にに増加しつつあるが、北海道においてもその傾向は著しく、昭和43年度の入込観光客の延べ数は、 4,246万人と前年の10.5%となつた。このうち道外客は1,507万人である。これを観光圏別にみると道央観光圏が56.3%、大雪山観光圏15.7%、道東観光圏15.6%、道南観光圏10.5%、道北観光圏1.9%となつている。
 しかし、本道観光は季節的に7月から10月までの夏季に集中していること、また道外客の来道状況は43年度86万人に達したが、航空利用客は21万人と全体の24%を占めていることが主なる特色であろう。また外人客も年々増大し、約2,300人を示している。 なお、これらによる観光消費額は560億円程度と推計される。

 

2 運輸交通の現状
 前項に述べたように道内産業の動向は、従来の大宗貨物であつた石炭、木材の減退傾向に拘らず、農産品、水産品の増大と道央における経済集積の拡大、公共投資の漸増等に支えられて総体的に北海道経済は拡大の方向を辿りつつあるといえよう。このような中で道内の運輸活動は輸送構造の変化と輸送方式の近代化が進められる中で、43年度における貨物輸送量は3億3,800万トン、 旅客輸送は12億6,000万人と前年をそれぞれ9%、3%上まわつた。最近の特徴をみると、国鉄においては小樽〜旭川間の電化が完成、地域間急行の設定、内航海運によるカーフエリー、ロールオン、オフ船、及び専用船の就航、自動車、特に地方部における急激な普及と、中長距離輸送部門への進出、航空機利用の大衆化等がその主なるものである。貨物輸送においては国鉄、私鉄、海運が石炭の減産による伸び悩みを示した反面、自動車が砂利、砂、木材などを中心に伸長し、全貨物輸送通の74%を示したほか、絶対量は少ないが航空貨物も生鮮食料品などを中心に大きく伸びている。旅客においては国鉄、私鉄の落ちこみに対して、自動車輸送は自家用車の進出が著しい。反面、 マイカーの普及などによつて鉄道、 バスともにローカル線の経営悪化が一層拍車をかけた。さらに航空旅客の伸長は著しく、43年度は166万人に達している。

(1) 自動車輸送の増大
 道路整備は筆禍移動開発予算の約60%を投入しているが、整備の進捗に伴い自動車輸送は43年度で旅客9億4,800万人、貨物2億5,700万人に達し、その伸び率は客で6%、貨物で13%、旅各においては、乗用者の増加が著しく、 対前年比で23%の増となつた。 特に、最近地方群部における人口の流出、自家用車の普及によつてバス経営が悪化し、赤宇路線は全体の35%に達し、これが対策については行政上の新たな課題となりつつある。 また自動車の保有台数は45年3月で80万台に達したが、その40%に当る32万台は、札幌を中心とする地域に集中している。 しかし伸び率については地方郡部において高い。

(2) 長距離化する国鉄輸送
 道内における国鉄は今、転換期を迎えようとしている。43年9月の国鉄諮問委員会の答申による赤字せん廃止案、或いは経営合理化などを含む再建案など、国鉄の運営とその役割について広く論議を呼ぶに至った。
 この中で小樽〜旭川間、道内初の電化、 さらに東北本線の複線電化などによつて、札幌・東京間は2時間の短縮となつた。また貨物においても、札幌・東京間、札幌・大阪間の急行貨物列車の設定など、対本州輸送の高速化強化がすすめられるとともに、道内主要都市間にも地域間急行が増発された。
 このような努力にも拘わらず、輸送実績は、旅客、貨物ともに漸減傾向から脱し切れない。昭和43年度の旅客輸送は1億4.300万人と、 前年に比し、約1,000万人減となつたが、乗車区間の長距離化などによつて、その運輸収入は若干の増となつている。しかし貨物については3,600万トン、前年より205万トンの減となり、 また貨物収入は初めて前年実積を下まわり、貨主客従の国鉄経営も転換期にさしかかつた事を示すものといえよう。この中で、青函航送については客貨ともに漸増をしている。

(3) 堅調な港湾取扱量
 昭和43年度における港湾取扱実績は5,700万トンに達し、前年を9%上まわつた。内航については、石油、 セメント、雑貨か伸び、外航については、原木、チツプ、石油の輸入と鋼材、紙、パルプの輸出が増大している。いずれも道内産業の動向と一致した動きを示している。
 港湾についてみると、道内主要港湾七港のうち、苫小牧港が対前年比で23%、 函館港が27%の伸びをみせたが、函館においては、対本州フエリー利用並びに石油取扱の増により、 617万トン、苫小牧は石炭・石油輸送機械(自道車)を中心として731万トンとなつた他、室蘭、小樽、釧路、留萌、 稚内の各港とも順調なな伸びをみせている。

(4) 増加傾向の航空客
 道内における空港の整備は着々と進められているが、千歳空港のILS、RURVOR、丘珠空港のGOAなどの施設が完成し、特に対本州輸送において強化がはかられている。 43年度の対本州客は166万人と対前年比36%の増を示した。この他道内相互は77,000人と11%の増となつたが、航空機利用の大衆化は逸そう進みつつあり、今後所得の増大などによつて、さらに利用客は増加するであろう。また生鮮食料品、自動車部品など付加価値の高い商品の航空輸送が活発化してきており、43年には15,000トンに達したが、この分野において今後新たな進展が予想されているところである。

 

3 交通体系のレイアウト
 前節において述べたような情勢に対処するため、北海道おける交通体系のレイアウトに当つては、次の諸点を柱にして考える必要があると思う。

(1) 道央諸都市における都市交通対策
(2) 道央諸都市と地域拠点との連絡体系
(3) 地域拠点と地域内の面的交通対策
(4) 北海道・本州間交通の高速化大量化

 先づ都市交通については、札幌市における対策に重点がおかれなければならない。すでに地下鉄、バイパス都市内幹線街路については、それぞれの輸送分担方式に基づいて、目下工事中であり、1972年冬季オリンピツクを目途として第一段階の完成に至るが昭和60年人口約180万人対策として今後地下鉄の延長、都市内高速道路・総合バスターミナル・市内国鉄の高架などが日程に上ることとなろう。
 なお、小樽、札幌、千歳、苫小牧、室蘭を結ぶ幹線自動車動(国土開発幹線自動車道)の建設は目下進行中であるがモータリゼエシヨンの進展に対処して地方の拠点都市である函館、 旭川、稚内、帯広、釧路、北見間と道央地域との連絡を高速化すろよう高速自動車道建設をすゝめるほか、国鉄既設幹線を強化し道央経済の波及効果を高める事が必要である。このほか前記の拠点都市は札幌を中心として概ね200〜300粁地点にあり最も経済的な航空距離にあることからこれらを結ぶ航空利用は著実に伸長している。従って、 今後とも札幌とこれらを結ぶ高速道路、国鉄幹線、空路を立体的に整備しようとすることが、第3期計画の課題でもある。
 次に地域の面的輸送対策であるが、これらの地域における過疎化現象は、急激に進んでいる反面自家用車の保有は年々増加しつつあり、このため国鉄やバスの赤字現象は一層進行するであろう。これらに対しては現在国鉄は駅の無人化、集約化などの合理化をすすめつつあり、バスについては過疎地域の路線バスに対する国道の助成を行なつているが、 今後農山漁村における過少部落の集約化をずすめこれに並行してこれらを通ずる道道及び幹線町村道の改良舗装によつてモータリゼエシヨンの急速な進展に対処してゆく外にないといえよう。鉄道は過去一世紀にわたる開発の先兵であり、これに対する地域住民の心理的依存は極めて強く急速な合理化、廃止は強い抵抗に会う。結局は今後農山漁村の近代化を促進し住民の交通機関に対する価値判断を侍つべきであり、又その時期は近いと私は思つている。さらに又、道、本州間輸送であるが、新全総による新交通体系に示されるように本州大平洋岸ベルト地帯における集中の過密化は、すでに日本経済にあらゆる形で影響を与えつつあり急速に分散化するであろうし、又その必然性を持つものといえよう。
 北海道は広い土地と豊富な水量に恵まれた新天地である。京浜、中京、阪神との時間距離の短縮と大量輸送網の完成によつて新しい産業開発の可能性は、さらに拡大しよう。今日建設を予定されている青函トンネルを始め東北、北海道新幹線鉄道、国土開発幹線自動車道、苫小牧新港、石狩湾新港、千歳空港の大型化などは、いずれもこの意味において70年代北海道の開発を約束する新たなプロジエクトとして、われわれは受けとっている。同時にこれらの建設によつて、いよいよ進展する国際化時代に対処して、北海道は産業のみならず1972年オリンピック冬季大会の例にみるごとく文化、学術等の各面においても北方圏諸国の一拠点となり得る可能性を持つものと考えられる。
 最後に付け加えたいのは交通体系の総合化についてであるが、特に地域においては、モータリゼーシヨンの進行によつてローカル鉄道を中心とした従来の交通体系は急速に崩壊しつつあるのみならず都市農山漁村地帯を問わず路線バスそのものも不採算路線を多くかかえ過疎地帯おけるバス路線の運行維持には一部国の補助があるとはいえ、これら国鉄の廃止、合理化、赤字バス等に関連する諸対策はすべて所在する自治体が行なつている始末であり、これら町村においてはさらに財政負担に拍車をかける結果ともなる。当面の課題としては、この際、速かに代替路線としての道路整備とともにバス会社の一部統合による競合路線の整理、あるいは自家用車による代替等の行政指導を押しすゝめるべきである。
 また、道路、港湾、空港、鉄道など別個の整備法に基づきそれぞれの5ヵ年計画がたてられているが、国の経済動向あるいは地域の諸情勢によつては5ヵ年をまたずして改訂に至る必要がすでにあらわれている。この際、将来の課題として、これらを総合し得る方向について国は早急に検討すべきであろう。

(筆者は道庁企画部勤務)

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