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         北海道の中小企業に期待したいこと

                                   北海道通商産業局技術振興課
                               技術企画係長 田 中  雅 智
                                          (札幌市在住)



 今回、妙な経緯からからこの原稿を書くこととなりました。というのも、たまたま、昨年2月に前たくぎん総研会長であった石黒直文氏が主催するインド訪問ミッションに参加させて頂き、異国インドにて同メンバーのおひとりであった緑進建設(株)の萩原氏とお会いしたのがきっかけであります。そんな経緯のもと、萩原氏から「おまえの仕事の範疇でかまわないから、日頃思っていることを書け」というご指示に対し、反発出来なかったのは皆様のご想像のとおりであります。諸先輩を前に、はなはだ失礼とは存じ上げますが、若干紙面をお借りします。


国家は倒産寸前
 昨今の経済事情のとおり、国の財政は危機的状況を迎えています。
 私たち公務員が言うのも変ですが、「公務員の良いところは給料は安いが、安定しており、絶対に倒産しない」と考えていました。しかし、絶対と言うことはあり得ないもので、私たち国家公務員の「会社」は倒産寸前という状況にあり、今後の「会社運営」を見通しても高齢化に伴う医療費の増加、さらに所得者層の減少に伴う税収の減少、企業活動の低下・海外移転に伴うに税収の減少等々難題が山積みであり、さらに将来を見通しても楽観出来そうな要因はありません。現に、役所の数を半数に激減するという方針のもと、様々なリストラが実施されることとなっており、言い換えますと(多大な国民からの税金を使って)国が必ず実施しなければならないこととそうでは無いことを区別し、公共投資など多々ある国の施策を見直すということであります。そんな状況の中、今後の北海道に対する「従前同様の公共投資」の延長は極めて厳しい(ちなみに、平成9年の公共投資は全国の1割は死守できそうとの事ですが‥)ものと考えることができます。


北海道通産局は今
 私たち北海道通商産業局でも同様の側面を迎えていますが、現在の大命題として既存産業の高付加価値化、新規商品の開発を通じた新規産業の創出をキーワードとして地域産業の創出・確立による雇用の増加等々地域経済の発展に全力を投じているところであります。

 現在、私は北海道通商産業局の商工部技術振興課という組織に属しています。ここでは、道内の企業、大学・公設試が実施する技術開発、研究開発を支援し、道内経済の活性化を支援する部局であります。技術開発に関連する業務もそのすそ野は広く、企業の技術開発相談窓口から、苦情対応、企業に対する研究開発助成金の補助、異業種交流の支援、知的所有権の問題、大学と企業の産学連携の推進等々、多種多様の難問が山積みの部署であります。そんな業務を担当させていただいてる一担当者が日頃抱いている事柄について皆様にご報告させて頂きたいと考えています。


少ない補助金への要望
 私が担当している業務の中で企業・自治体と折衝することが多い業務の一つとして補助金関係業務があります。補助金といっても、企業が行う研究開発業務のうち技術的に高度であるが一企業が実施する事に対してリスクが大きい事業あるいは地域の産業政策上重要な事業について補助するというものですが、この研究開発助成の補助金関係業務は国の経済対策の一貫としての位置づけ及び業界からの要望を取り入れながら随時その形態を変えてきています。極端な例では、昨年あった補助金が企業のニーズが少なくなって来たことから今年は無くなったり、別なメニューに変身するという具合です。しかしそのような場合であっても、大半は前年の秋頃から、来年はこの形態で行こうという方針が示されてきます。
 このようなスキームのもとで、北海道の企業・自治体の特質が見えてきます。
 全国の通商産業局担当者会議等に出席して感じることですが、積極的な企業・県を管轄している通産局の担当者は予算制度の詳細はおろか概要すらもよく見えていない状況の中でも、(企業・自治体の敏速な働きかけにより)補助金獲得に向け予算の概要、申請すべき内容・時期、さらには研究開発課題の選定など行わなければならない状況におかれています。しかし、道内の企業・自治体の動きは必ずしも敏速ではありません。
 その結果として、他地域の通商産業局が「企業・自治体の要請により」必死になって次年度の補助金概要を調べているのに対し、当局では私たちが「企業・自治体に使ってもらうため」新設補助金の概要を調べているという「違い」が生じております。

 研究開発費が少なく、困った困った!あるいは国・道等の研究開発助成制度が悪いとは叫ぶ声は大きいものの、実際に行動に移している企業の数等を見てみる、と、実はさほど困っていないのではないかと感じる次第であります。
 例えば、地域の中小企業のニーズに基づき新しい研究開発助成制度を創設しても、実際に申請してくるところは極めて稀で、大半の企業は忙しいあるいは申請書を書くのが面倒ということで申請すらしません。ちなみに、他地域では制度新設時は過去のしがらみも無いことから多数の応募企業が集まっています。これは、企業の絶対数の比較だけでは説明出来ないものがあります。
 確かに、補助金の良否については色々な議論があります。
 補助金事業そのものに真剣味が無くなる、申請書が面倒である等々指摘する方もいます。しかし、企業にとって研究開発業務=即座に収益に結びつかない業務に 1,000万円投資するには非常なリスクが生じる訳で、さらにその 1,000万円の経費(企業の利益)を支出するため1〜2億円の売り上げを計上をしなければならない状況を考えると、研究開発に補助金を投入することを否とする選択肢は説得力に欠けると考えられます。
 幸いこれまでの北海道は、公共投資に助けられ、それなりに明日の飯は何とか食えていました。しかし、前述のとおり国の財政は逼迫し劇的な改善は望めそうもなく、さらに、今後も(皆様の察しのとうり)非常に厳しくなることが予想される現時点で、今後の公共投資に楽観は出来ないのではないでしょうか。
 他方、北海道全体が均一に発展し、道内全企業が日本に通じる企業になって欲しいという夢はありますが、現在の状況を考えると、北海道から日本・世界に羽ばたく会社を一社でも多く創出し、地域全体として支援して行くということが必要ではないでしょうか。この観点から考えると、補助金は有力な武器になると認識していますが、残念ながら現実には新設の補助金はおろか既存の補助金も含め、積極的に用いて新商品・新技術を産みだそうとしている企業は僅かの数しかありません。


「北海道だから」は通用しない
 さらに、その様なことを議論している時期はもう過ぎようとしているのではないでしょうか?取り組みに取り残されてしまっては、“肝臓病”のように病気が進展し、気がついた時点で不治の病とならないよう意識改革が必要であると認識しています。
 この問題は、研究開発が直接関連する製造業だけの問題ではないと感じていますが、皆様方の業界は如何なものでしょうか。
 私たちが生活している北海道は、歴史が浅く他地域から比較すると公共投資・整備も遅れがちであるのは事実であります。また、私たちが直接関わっている研究開発投資といっても公共投資的意味合いがあることも伺えます。しかし、これからは投資したお金が「北海道」だから予算が付いたのではなく、この事業に対してだから予算がつきそれがたまたま北海道であったという具合に代えていく必要が有ると感じています。

 そのためのテーマ作りの基盤として、このような交通問題研究会のような異業種、異団体からなる研究会が基盤となり、さらに大学の頭脳、行政機関の支援を通じて新たな研究テーマを生み出し、そこから21世紀の北海道が生まれてくるのではないかと考えています。(実は産学連携とは、このような動きを定義するものであって、決して難しい取り組みでは無いと感じています)
 幸い、昨年度の北海道内を見てみますと、21世紀産業基盤フォーラム '96が創設され、産学連携を進めようという意識のもと、産業界、大学等研究機関、行政機関が一体となった活動を取り組み始めています。
 具体的には、産業界において北海道産業クラスター創造研究会等による今後の北海道のあるべき姿の策定、大学等研究機関においては北海道大学を始めとした地域共同研究センターの設置による地域企業との連携機能の強化、北海道庁による国内最大規模の道立公設試験研究機関のさらなる機能強化するための施策を立案中とのことであります。
 このように、すでに各機関がそれぞれの機能を持ち寄って取り組み始めています。しかし、一番大切なそれぞれの地域企業の一社々が積極的に自ら取り組んでいなければ、それはただ単に絵に描いた餅にすぎません。
 今後、皆様方企業が自社として取り組むテーマはもちろんのこと、地域として取り組むテーマをこのような研究会で取り組み、実行するには何が不足しているのか‥‥それは、「皆様方の意識」一つではないでしょう。

他地域に無い資源を武器に
 蛇足ながら、これら取り組みは産業界が主導し実施すべきと感じています。自分たちの地域を自分達で何とかしなければという感覚を呼び戻し、行政機関はそれを支援するというのが本来の姿であり、産業界、行政機関の係わり方だと認識しています。
 前述のとおり、北海道を取り巻く情勢(予算)は劇的な症状が発症するには、まだ若干の時間がありそうですが間違いなく肝臓病のように病状は悪化しているのではと危惧しています。いま、足りないのは薬でしょうか?それもyesですが、一番必要なのは自分で病気を治すという気持ちの方がより必要なのではないでしょうか。
 さらに、今後の北海道を考えたとき、私の個人的見解で恐縮では有りますが、既存の産業を体力として、さらに北海道に有り他地域に無い資源を武器にして他地域と戦う以外選択肢は無いのでは無いかと認識しています。例えば、「農業・水産業等、さらにそこから派生する工業」、「広大な土地活用による地域における機能分担」、「積雪寒冷地環境」等々の分野において技術力を増強し商品の付加価値を増大させ、日本あるいは世界に対して貢献出来る北海道を構築することが必要であると認識しています。

 全国民の大切な税金を、北海道に多大に投入しても他地域から納得をしてもらえる北海道を作るにはそれ以外方法が無いのではないでしょうか。

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