「エキスポ‘86カナダ・アメリカ都市計画及び景観視察団」に参加して
高 谷 俊 臣
林 享北海道住宅都市部都市計画課交通計画係長
北海道開発コンサルタント(株)技術開発部次長
1. はじめに
WORLD IN MOTION, WORLD IN TOUCH (動く世界,ふれあう世界)をテーマにカナダ,
バンクーバー市の市政100周年を記念して, 同市において,
国際交通博覧会(EXP O'86)が開催され,機会を得てこの博覧会を中心としてカナダ,
アメリカの西岸の視察に行って来ましたので報告を中心に街づくりや交通についての所感を交じえて報告したいと思います。
海外研修ということで,
皆様方から多くの期侍をされることがありますが,研修の目的や動機あるいは成果についてが大切なことであると思います。
私は今回の研修に当り,
日常の業務のなかで最近の話題となっている高速交通システムについての見聞を広めたいと思い,折よく開催されている,
国際交通博覧会を中心に視察をし, 先進国の様々な中,
大量輸送機関を見て回ろうと思った訳です。
道職員を対象に行なっている,北海道職員外国派遣研修(技術職)に応募し「北海道に適した新世紀型高速交通システムの開発整備導入の技術的研修」と銘打った小論文を提出したのでありますが,最終選考で落選したのであります。こうした意味では目的意識が少し後退したのですが,住宅都市部においても,
新世紀型交通システムに対する関心の高まるなかで特段の配慮をいただき派遣が決まりました。
最近の情勢のなかでは,札幌〜新千歳空港間へのリニアーモーターカーの導入の動き.
旭川市におけるHSST推進協議会の発足など益々こうした交通システムに対する関心が高まって来ているのを体感し,合せてこうした高度技術及び関連産業の発達や道内進出を願っているところです。
海外研修の体験のある諸兄にとっては当然のことであろうと思いますが,「行って良かった」,あるいは「若いほど,早いほど良い」というのが実感です。海外研修の目的や動機に多少の差異があってもその成果は知識を深め,
体験を広める源動力なるでしょうからぜひ皆さんにもお進めしたい。
2. バンクーバー市と博覧会場について
バンクーバー市はカナダ最西端のブリティシュコロンビア州の経済,文化の中心都市です。1886年に市制を施いており,人口40万人を有しております。大バンクーバー圏は周辺14市町を合せ約130万人の人口となり,
カナダ第三の都市圏です。
バンクーバー市は北部は大平洋から入り込む湾や入江によって分断され,
南部はフレーザー川によって分断されていますが,市内は,乗合バス,
トロリーバスと乗用車による交通あるいはスカイウェイと呼ばれるリニアモーターカー(交通博に合せて開業)による交通あるいはシーバスと呼ばれる海上連絡船等によって市民の足が確保されています。
博覧会場について若干ご説明しておきますが,以前は鉄道操車場や木工場等が建ち並んでいた地区であったそうですが,
港湾機能の老朽化等に伴いこの地区に対し「BCプレイス再開発計画」があり,
この計画遂行の第一段階として博覧会々場として造成したということでした。博覧会後は高級住宅街として整備する予定であるということで,
この計画は北米最大規模のウォーターフロント開発となり住宅地,事務所,
商業地区などに生まれ変ることになるそうです。
博覧会場には過去,現在,未来を象微するテーマパビリオンが配置されており,
ラウンドハウスは旧機関車庫やターンテーブルを利用し交通,通信に用いられた各国の歴史に残る出来事を展示し過去を表現し,
ハイウェイ'86ではハイウェイを模したルート上に現在使われている自動車,
オートバイから月面探査機まで全て灰色に塗りつぶし幾百と並べて現在(過去)を表わし,
エキスポセンターは, 未来を象微するかのような,
ステンレスミラーボウルのような球形パビリオンでありますがこのなかでは,
27メートルの大オムニマックススクリーンにローマ街道を歩く戦士たちからスペースシャトル打上げまでを映し出すオムニマックス劇場となって未来へとつなぐという演出がなされておりました。
入江沿いの幅200〜300メートル,延長3,000 メートル,66ヘクタールの会場は紫,赤,青,桃,緑,黄色の6色のゾーンに分けられて,
参加国の区分やユニホームの色,
花の色を統一し賑やかにそして判りやすく演出効果を高めていました。
3.新交通システムについて
初めての海外旅行でありまして, 日本とカナダ,
アメリカの往復はいうまでもなくジャンボジェット機による8時間の旅はエコノミー座席から姶まった訳で,
この窮屈で退屈な旅は,
私の目的である新世紀型交通システムの研究を屈曲させる事になるとは思いつかなかったのであります。何しろエコノミーというのは逆にお金のかかるもので,
イヤホーン使用料3ドル. スコッチ1杯3ドル, ワインも3ドルという具合です。そのかわり注文の度にかわいいスチュワーデスの微笑みと
「サンキュー」,
「ドモアリガトウ」が聞ける楽しみがありました。また,
グルメを自認する私としては食事も興味しんしんでした。機内食はユナイテッド航空自慢のシーフードかチキンかビーフであります。肉の国へ行く以上は肉,肉でなければと決心していたので,まず肉からということで注文し,ホットパックに入ったビーフの小片(100グラム程)とちぎったレタス,
スライスオニオン,
トマトなどとフレンチドレッシング、ミックスベジタブルの沙めもの,デザートにヨーグルトケーキ,パンにバターにジャム,
コーヒーなどという具合で,
食前のスコッチやワインで十分刺激した胃袋にはペロリと消化してしまうものでありました。その後も日本を出発する時に仕入れた免税のスコッチをチビチビとやりながら,
アメリカ人のスチュワーデスに水をもらっては,
ニコッと笑って時差調整をやっていたのですが,日本女性のスチュワーデスに「持込のお酒は困ります,
おやめ下さい」とお吐りをうけたのでした。比べてみますと外人のプロフェッショナルは,本当に優しく,
お愛想も格段にいいのです。
さて私は交通屋ですから出来る限りの交通機関に乗る決意で参りましたので,
ただ珍しく色々な物に乗りました。解説はべつの機会にして,新交通システムを含めて乗物についていくつかご紹介します。
まず. シアトル空港内の乗継ぎ用の新交通システムですが,空港ターミナル内の各ウィングを連絡するもので,
コの字型に各線がそれぞれ往復運行しているミニ地下鉄といった感じのものがあり順路に従って待っていると空港側のドアが開き,
ミニ地下鉄のドアも開いて乗降りするもので,横走りのエレベーターの様なものです。
次はバンクーバーにおいては博覧会に間に合せて完成した、BCスカイトレイン(別名ALRT)です。鉄輪支持,
リニアモーター駆動の世界でも初めてのシステムであります。連続レールの使用とも相まって.
大変静かで加減速もスムーズな新交通システムでした。地上部4km,
高架部7 km, 地下部10.4 kmで, 15駅21.4 kmを70〜80km/時の速度で24分で完全自動運転,
コンピュータ制御されているというものです。
サンフランシスコにおいてはバート (BART)に短区間ですが乗りました。湾岸に点在する10市町余りを連絡する公共交通機関で120キロの営業距離を持つものです。地下部32.5kmを有し,駅数34駅をx字状に連絡し,
これも時速80km/時で無人運転し,改札等も完全自動化されていました。切符もオレンジカードのように料金分だけ何度でも乗ることが出来、自動販売機で売っていて省力化の進んだ乗物と思いました。
その他新交通システムとして,博覧会々場内の日本館の横で実験線をひいてPRしていた日航のHSST03型がありました。駅部でいきなり浮上しなめらかに浮上しながら,25km/時で往き,40km/時で帰って来るというわずか数分の試乗でしたが,乗心地はダイアナ妃が「シルクのような乗心地」と言われた程素晴らしいものです。十分21世紀を指向するものと思えました。又会場内を連絡するモノレールにも乗りましたが,細くて長いスパンのモノレールを走行するためか乗車制限があったり,
停車駅のコントロールなど十分理解できない運行システムをとっておりました。
また, サンフランシスコのケーブルカー,
コロンビア水河での雪上車, イエローキャブと呼ばれるタクシー,空港から市内へ連結する相乗りのリムジンなど、一応乗れるものは全部乗ってみたという具合です。
やはり公共交通機関は, 路線が明示されている事,
料金体系も安くて判りやずいこと,迅速で定時性のあることが大切な要件でありますし、合せて日本語の説明や表示があればもっと楽に日本人観光客も利用できると思いました。
ALRTもBARTもそうであったように地形や利用形態に合せて一部は地下,一部は地上あるいは高架といった軌道形式も柔軟に使い,
スピードばかりではなく景観にマッチした構造やデザインも考慮していく事も必要だと思いました。
4. 景観と観光について
カナダもアメリカも広い広いと聞いていた通りでありますが,地平線が見える,
カナディアンロッキーの山並みが創出するスカイラインがはるか遠くに見える,
どこまでも続くハイウェイ.
という具合に大陸を実感するのです。大陸的民族の根本的な体質や民族性,思考の原点の違いはここにもあると思えるのです。例えばインディアン保護区はこの道路からずっと向こうに見える稜線の手前までというような説明ですから,○○km2という表現が適切でないように思えるのです。ちなみにカナダインディアンもアメリカと同様に保護区を定めた中で生活をさせ手厚く保護しており,
教育施設も整えているようですが,教育を受けることを拒否し,若年の者まで朝から飲酒におぼれ,
アルコール中毒になっているケースも相当多く,
新たな社会問題となっていると聞きました。
カナディアンロッキーのふもとのバンフ国立公園、ジャスパー国立公園をまたにかけた今回のツアーではカルガリーからはチャーターバスに日本人ガイド付きでバンフにむけてフリーウェイをひた走るのです。時速110km/時は何の速さを感じさせないまま,時差ボケでボーツとした我々を眠りにつかせたまま,途中ナントカマウンテンを幾つも通り過ぎていくのですが,
3,000〜4,000M級の山は木もあまり見当らない荒涼とした砂利っぽい岩肌の山々でどれもこれも同じように立並んでいるという具合です。こんなカナディアンロッキーのなかに数万年前の水河が数ケ所あるそうですが,毎年数センチ下って来ている氷河の一つコロンビア水河に行きました。遠くの山から押出されて来ている水河の先端まででしたがクレバスも,
表面を流れる水もない最も安全なところであったのです。雄大な雪原に見えるのですが実は巨大な氷塊の上で,
表面の雪状の下は確かに固い氷でありましたが押出されたガレキの付近の水では流石にオンザロックとはなりませんでした。
サンフランシスコで印象に残ったのはフイッシャマンズワーフでした。釧路市でもこれを真似て同じような港湾区域の再開発があると聞いていたので楽しみにしていたものですが,
アメリカ経済の低迷と港湾機能の低下から不要となった港湾地区の再開発です。39番埠頭から41番埠頭にかけての埠頭倉庫,
岸壁などを再開発し, ショッピング街に改造した地区です。 ピア39からピア41にかけての港湾地区は木造二階立,古材(木材)使用を義務づけ.
統一的な景観づくりを行ない,倉庫跡を感じさせないものです。
ピア39の入口附近にはカニ、 エビ,
ハマグリなどを売る露店が立並び, 1ドル〜2ドルくらいで,
ゆで立てのカニ, エビを買い求められ,
ほおばりながら歩く姿もあたりの風景に似合って見えました。
又港湾区域の外側にもショッピングタウンと呼ばれるザ・キャナリーやギラデリースケアなどがあり,
レンガ造りの倉庫を改造したこれらの建物は中庭にはアイスクリームスタンドやコーヒースタンドもあり,フラワーポットや花かざり,控えめなショーウインドなど,
霧のサンフランシスコのシックな感じに大変よく映えるものです。
日本においてもリゾート開発,観光開発の計画が進んでいますが,
高令化,情報化社会の到来と共に,観光目的も多様化し,自然と親しむ,スポーツやレジャーを楽しむ,
あるいはショッピングを楽しむ等々.様々な形式を組合せた観光が生じて来ています。今回のツアーでは数千キロも離れた広域的な観光を行なったのですが,
広大な景観と人工的に再開発され創出されたショッピング街の景観やグルメ観光,
全く異なる観光のなかで痛切に感じたのは基本的要件は目的地の持つ魅力の大きさとそこへ到達する交通の確保であるといえます。ぜひ釧路市のフイッシャーマンズワーフや小樽市の中心市街地活性化計画と運河沿いの再開発などの成功を期待したいと思います。
5. 雑 感
街かどで見かけた幾つかのトピック的なことを羅列してみます。カナダもメアリカも右側通行ですが,
信号のある交差点で進行方向が赤信号でも車の流れを見ながら,
次々と右折して行きます。車線数が多く交通量が少ないから出来る事ですが,原理的には可能ですし日本でも応用ができます。
発想の違いによることとは思いますが,
バスベイは日本では切込み式になっておりますがサンフランシスコで見かけた突出し型のものもあります。自転車を歩道側の高欄にチェーンロックで吊さげた例もあります。信号機も樹木から覆されないように張出しの大きいもの,
吊下式のものなど,あるいは公園の地下利用の駐車場,ダウンタウンでもホテルやビジネス地区に隣接したスーパーマーケットやリカーショップが立並んだシッピングコア的なものなど様々な工夫がなされていました。北のまちづくりにも生かすことの出来るアイデアが沢山あると思います。快適で安全,豊かな生活をつくり出すことと,整然とした緑豊かな街並みの創出,
イベント主義や商業主義に落入らない,
生活に密着した落着きのある街づくりが必要と思います。
約2週間の駆足視察で, しかも観光旅行的な内容で.新世紀型交通シススムの研究云々とはいきませんでしたが,海外視察のみならずこうした派遣研修の二次的意義であります広く見聞をひろめる方が重点的になりましたことをご容赦下さい。皆さんと知恵を出しあって,北海道のまちづくりのお手伝いをできれば幸いと思います。