北海道の明日の超高速システム
リニアモーターカー中 島 二三夫
国鉄北海道総局総合企画部
企画調整室企画第三課長
1. はじめに
昨年7月に国鉄再建監理委員会から国鉄の再建に関する答申が出されてから,国鉄は民営・分割向かってノンストップ超特急の様に突っ走っている所ですが,北海道の鉄道がどうなるのだろうかと心配されている人も多いと思います。
現在,国鉄北海道総局において,北海道鉄道の再生のために千歳線の120km/h化等各線区のスピードアップやフリークエントアップ等地域密着型ダイヤへの見直し等々輸送基盤整備のための各種施策について急ピッチで検討を進めている所です。さらに,このような民営・分割に向けての当面の作業とともに,北海道鉄道の将来の維持・発展に向けて,国鉄が1960年代から研究開発を進めているりニアモータカーシステムの導入について検討を進めています。
これまでリニアモータカーと言えば何か遠い未来の乗物で,いつになったら実用化になることやらといった感じで受けとめていた人が多いと思いますが,実はリニアモータカーはもっと手近ですぐ手のとどく所まで来ているのです。標題で「未来(又は将来)の・・・・・・」とせずに「明日の・・・・・」とした所以もそこにあります。
国鉄のりニアモータカーシステムはあと2, 3年で実用化が可能であり,北海道で数年後にその実物が走り出すのも決して夢ではありません。そこて,リニアモーターとは何かということをここで簡単に紹介させていただきたいと思います。
2. リニアモータカーとは
一般的に,リニアモータカーというと,磁気浮上(又は推進)式超高速鉄道のことをいうのですが,
これには電磁石の方式,浮上の方式,推進の方式で図−1に示す様ないくつかの方式があります。
技術的にはこれらの方式の組合せでいくつかのシステムが可能となる訳ですが,一般的には,浮上を超電導磁石による電磁誘導反発型磁気浮上方式とした推進方式にリニアシンクロナスモータ(L.S.M)方式を使用した国鉄のリニアシステム,浮上を常電導磁石による電磁吸引型磁気浮上方式とし推進方式にリニアシンクロナスモータ方式を使用している西ドイツ方式及び推進方式にはリニアインダクシヨンモータ(L.I.M)方式を使用しているHSST方式があります。また,カナダのバンクーバーで最近営業開始したスカイトレインは,車体支持方式は従来の車輪とレールによる方式で,推進にリニアモータを使用しています。
各種磁気浮上式鉄道の特色等について表−1に示します。
超電導方式によるリニアモータカーは,国鉄が1960年代から基礎研究を初め,国鉄独自の技術として開発し,現在宮崎実験線(延約7km)で実用化のための各種試験を行っております。これまでに1979年12月に517
km/hを達成,その後有人走行に切り替えて現在300〜400 km/ hで有人走行を繰り返しており,実験センターを訪れる多くの人々に試乗していただき大好評を博しております。表−2に国鉄におけるリニア開発の経過,表−3に各国の磁気浮上式鉄道の開発の状況を示します。また,写真−2,3,4は宮崎実験センターにおける有人走行の状況です。
3. 国鉄の超電導方式によるリニアモータカーの概要
国鉄のリニアモータカーは,車両に搭載した超電導磁石と地上側の電磁石(コイル)との反発力で浮上し,リニアシンクロナスモータで推進する方式ですが,
この原理を簡単に説明します。
(1) 超電導磁石とは
ニオプチタンなどの金属を極低温(マイナス270度位)に冷やすと電気抵抗がゼロになります。このような金属で作ったコイルを極低温にして電気を流すと,電気抵抗がないため,電源を切っても電気が流れ続け,電力を供給しなくてもよい永久磁石のようになります。このような磁石を超電導磁石といい,極低温に保つために液体へリウムを使います。
(2) 走る原理
図−2に示すように,ガイドウェイの両側に並んだ推進用地上コイルが変電所から送られた電気で電磁石になります。この電磁石と車両に搭載している超電導磁石とが作用し合って車両を走らせます。このリニアシンクロナスモータによる推進方式は,直接電磁石と電磁石が引張る力,反発する力を用いて推進力を得る方式のため,非常に強い推進力が得られ,
500 km/ hという超高速走行が可能となるのです。
(3) 浮き上る原理
図−2に示すように,磁石のN極とN極, S極とS極どうしの反発する力で浮上します。ガイドウエイには浮上用地上コイルが左右に2列並んでおり,この上を超電導磁石を搭載した車両が高速で走ると浮上用地上コイルに誘導電流が流れ,車両の超電導磁石と同じ極の電磁石になります。こうして生まれた反発力により車体は約10cm浮上します。
4. リニアモータカーの特徴
ここで,
国鉄のリニアモータカーの特徴についてもう少し詳しく述べます。
第一に,最高速度が500 km/ hと高く,都市間の大幅な時間単縮が図られ,図−3に示すように北海道内の主要都市と札幌とが1時間以内で結ばれ,北海道内が1日行動圏になります。国鉄のリニアモータカーはこのように超高速であることから,都市間輸送,長距離輸送においてその特性をより発揮出来ます。一般に,浮上するまでに1km以上走行しなければならず,都市内輸送,近距離輸送には向いていないと受け取られている様ですが,都市内においては支持車輪で車体を支持走行し,推進のみを超電導磁石で行うこともシステムとして可能であり,むしろあらゆる輸送形態にマッチできるシステムてあるともいえます。
第二に,非接触集電方式で浮上走行するため,従来の車輪とレールの方式のような騒音や振動がなく,低公害システムといえます。よく国鉄のリニアモータカーは車輪があるので自動車のような騒音や粉塵公害があるのではといわれますが,
この車輪は浮上走行するまでの間の単なる一時的な車体支持のためのものであり,駆動輪ではないため自動車のような公害問題は全くありません。
第三に,磁気の反発力で浮上して走行するため,従来のレールと車輪による走行方法に比べ乗心地が良く,またガイドウエイにより脱線等の心配もなく安全な乗物であります。また,
よく磁気が強く時計が止まるとか人体へ影響があるのではないかと言われますが,現在の実験車両内ての磁力は200ガウス程度です。市販されているピップエレキバンなどで800〜1300ガウス程度といわれており,
またソ連やアメリカで定めている磁力の人体への影響に関する安全基準が200〜300ガウスてあることなどから見ても,国鉄のリニアモータカーは全く問題がないことがわかります。しかし,若干時計が止まるという問題はあるため,現在この車内での磁力を50ガウス程度まで下げることを検討しており,時計に対する心配もなくなるでしょう。磁気シールドは技術的には十分可能であり,色々な方法がありますが,車両価格があまり高くならないように,シールド材料の軽くて性能のよいものを現在開発しております。
第四に,車両が軽量で勾配も大きく取れるため,従来の新幹線に比べ建設費が安く,また保守費等維持経費も非常に安くできます。表−4に,新幹線との比較を示します。
第五に、日本(特に北海道)の特徴として地震が多いとか軟弱地盤が多い等の自然条件が有り、構造物の精度をミリ単位で維持することは非常に困難ですが、国鉄のリニアモーターカーは浮上高さが約10cmと大きいため,構造物の保守が容易であるといえます。特に超高速になればなる程安全性に重点が置かれなければなりませんが,常に構造物をミリ単位の精度で保つことはほとんど不可能てあるともいえます。また,北海道の特徴である雪に対しても,これまて模型や実橋で各種試験を行いその有効性が証明されている開床式高架等の採用により十分対応できると考えております。
5. 北海道の経済と技術の発展に与える効果
リニアモータカーを北海道に導入することにより観光客の増加や道内の経済活動が活性化されることが考えられ,特に世界最先端の技術を維持するための各種先端技術産業が北海道に進出して来ること等下記の様な多くの経済上の効果が期待できます。
○世界最先端の交通機関による北海道のイメージアップ
○首都圏との時間短縮による旅客の大量誘発と地域格産の解消
○情報伝達の迅速化と商圏の拡大
○超電導技術,極低温技術等先端技術産業の進出と道内企業への波及効果
○リニアモータカー建設投資自体の効果と駅周辺整備と関連投資効果
6. おわりに
以上のように,超高速で経済的かつ低公害の交通機関であるリニアモータカーこそ,主要都市や観光地が面的に広く散在している北海道にぴったりの交通機関といえます。
最近,道内で高速道路網の整備が進み,都市間の高速直通バスがかなり発達して来ました。また,将来の交通機関として,北海道新幹線,
ローカル・コミューター, リニアモータカー, HSST,モノレール等々各種の輸送機関が話題になっていますが,北海道の将来の交通体系を考える時に,どのような分野でどのような輸送対象を考え,
どのような輸送手段を選ぶのかということを全体の総合交通体系の中で考えて行かなくてはならないと思います。この選択をするのはあくまでも北海道民の皆様であり,私達(国鉄)は皆様に正しく判断していただくために,嘘や誇大宣伝をすることなく正確な情報を提供することが役目であると考えております。
りニアモータカーの誘致運動は全国各地で盛り上がっており,北海道に全国に先がけてりニアモーターカーの走る日が来るかどうかはひとえに北海道の皆様の熱意によるといえるでしょう。
最後に,北海道の皆様の日頃の国鉄へのあたたかい御支援,御指導に深く感謝するとともに,民営・分割の厳しい試練をむかえる北海道の鉄道に今後とも変わらず御支援を下さいます様お願い申し上げます。