路線バスを考える
帯広市都心部活性化推進室駅周辺区画整理課
整備係長 浪 岡 和 昭
1.第4の交通弱者
本市のような地方都市でも、朝夕のラッシュには閉口します。特に路面が凍結する今頃の時期の幹線道路はマイカーの長い列が続きます。そのような過酷な交通環境の中でも、路線バスは大勢の通勤、通学客を乗せて今日も頑張って走っています。
近年、“バス離れ”が進んでいると言われながらも、地方都市では、路線バスが公共交通機関の代表“車”として、活躍していることは言うまでもありません。どこのマチでも路線バス網がきめ細かく張り巡らされていて、最寄りのバス停から十数分も歩けば目的地に着きます。このように住民の足として不可欠で便利な路線バスではありますが、観光客など、そのマチの地理に不案内な人にとって、果たして路線バスは利用しやすい公共交通機関なのでしょうか。
私の場合は、初めてのマチを訪れて、路線バスを利用することは殆どありません。有効に活用できれば、行動範囲も広がる路線バスだと知りつつも、大抵の場合、走り去る路線バスを横目で見ながらひたすら歩くか、資金に余裕があればタクシーを利用する程度です。それは、私が路線バスを利用するために必要な「土地感」のない第4の交通弱者だからだと思います。
2.不安要素
見知らぬ土地で、路線バスを利用するためには、事前の準備が必要になります。まず、目的地までのバス路線の選定、乗降するバス停の名称、運行時間帯、運賃、所要時間などです。この程度は、列車のような交通機関でも同じ作業が必要なのかも知れません。しかし、まだまだ多くの不安要素が、小心者の私の挑戦を阻み続けてきました。
代表的な不安要素としては、運行時間の定時性、前乗り、後乗りなどの乗降口の問題、運賃の支払い方、整理券の有無や運賃との関わり、乗り継ぎの場合の運賃割引の有無、車内での停留所の案内の方法、降りたい場合の意志表示の方法、間違って乗車した場合の対応策などです。
また、路線バスほど地域性が強い公共交通機関はないと思います。路線バスの性格上、利用者の殆どは地域の方々でありますので、うたた寝をしたり本を読むなどリラックスしている人が多い中にあって、自分だけが、「このバスの選定は本当に正しかったのか」「降りる停留所はまだか」など、緊張し続けなければならないと考えるだけでも、私を消極的にさせてきました。
3.「THE BUS」
11月中旬に数日間、単なる観光でホノルルに滞在しました。既に利用された皆様も多いことと思いますが、ホノルルには「THE BUS」という市営の路線バスが走っています。このバスを利用すると、オアフ島の殆どの場所へ行くことが出来ます。この路線バスは非常に利用し易く、私のような小心者でも十分に“足”として活用することができました。
それは、どこへ行っても1ドルという単一料金性と明確な運行経路にあると思いますが、それに加えて、周知を図るためのパンフレットや利用手引書が充実していて、周到な準備作業が出来ることです。
手引書には、バスの窓から見える建物や橋などが目印として記載されていて、降りるタイミングを事前に把握することができますので、安心して車窓を楽しむことができます。
確かに、ホノルルは観光地ですから、この路線バスは準観光バスなのかも知れませんが、これに「第4の交通弱者」にとって利用し易い路線バスのヒントがあるように思いました。
4.楽しい思い出
「THE BUS」を利用すると、勿論、観光客も大勢乗っていますが、買い物袋を抱えた夫人やお年寄り、子供達も乗り込んで来ます。
私が利用した時も遊び帰りの子供達数人が一番後ろの席に座り、わいわいガヤガヤ騒いでいました。その中に私のような白髪の東洋人が乗り込み、近くに座ったものですから、その子供達が騒ぐのを止めてしまいました。
私も、彼らの反応を察して、どうもバツが悪く、固い合成樹脂製の座席の“へこみ”部に座らず、“へこみ”と“へこみ”との間の凸部に座り、居心地は極めて悪いものの、遠慮がちに隣りの子供との距離を保っていました。
5分も走ったところで、突然、隣りの子供が私に「Excuse me sir?」と声を掛けてきました。その子供は私に時刻を訊ねるのをきっかけにして、私のような東洋人と話したかったのです。それからすっかり話しが弾んで、私が降りる時には、彼が握手を求めてきて「Take
care. Have a nice day」「Thank you.You too.」と別れました。
このように、観光地であっても、観光バスでは味わえない楽しみ方が路線バスにあることを、ホノルルで知ることが出来ました。
5.国際化が進むマチ“帯広”
帯広市には、国際協力事業団の研修センターがあり、常時、世界各国から農業技術や街づくりを学ぶために研修員が滞在しています。
この研修員の方々も「第4の交通弱者」であることには間違いありません。
先日も私の職場の仲間がJR帯広駅前で研修員から声を掛けられ、1枚の紙を見せられました。そこには「研修センターへ行くバスを教えて下さい」 と日本語で書かれていましたが、その研修員は日本語を話すことが出来ません。
帯広市にある国際研修センターは、中心部から7〜8km離れた郊外にあります。タクシーでは経済的に研修員の大きな負担になってしまいますから、路線バスを活用するしかありません。
しかし、本市の路線バスで英語を併記したり、英語のアナウンスが流れるバスは1本もないと思います。
路線バスは単なる観光バスとは違い、地域に根ざしている公共交通機関であることから、国際交流を進めるためのひとつの手段として、外国から来られた方々にも利用し易いような工夫が必要ではないかと思います。
6.バスの基調色
本市には、バス会社3社が路線バスを運行しています。車体の基調色は、赤、黄、紺とそれぞれ異なり、以前は、それがバスを識別するための目印となっていました。しかし、最近では、車体のデザインや広告を優先しているためか、基調色から外れたバスも見かけるようになって来ました。
確かに、それぞれの事情があるとは思いますが、基調色を主体とした単純明快な塗装は、やはり識別に抜群の威力を発揮すると思います。
路線バスの場合、停留所に立っていても、意志表示を行わなければ停車しない場合もあると思います。少なくても、遠くからやって来るバスが、自分が待っている会社のバスかどうかが識別できるように配慮していただきたいと思います。
このように、少しでも「分かり易い工夫」をすることにより、地元に住んでいる人々、特に高齢者や子供達などの交通弱者はもとより、帯広を訪れる人にとっても、より使いやすい路線バスが実現出来るように思います。
7.路線バスの将来像
最近、よく話題に上るのが、路線バスの将来像です。帯広市の場合は、本数、利用者ともに減少傾向を示していますが、帯広市に限らず高齢化社会の到来、エネルギー資源の枯渇、地球温暖化防止への対策など、私達の身の回りを見回した時、路線バスを取り巻く環境が、決して暗いものではないことに気づきます。
私自身、この機会に今一度、眼前に迫った自分の老後の生活と路線バスとの関わりについて考えて見たいと思います。