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21世紀の交通システムを考える

<講演> 平成8年2月

北海道大学工学部 教授 佐藤馨一

私の今日の演題は、「21世紀の交通システムを考える」ということになっております。21世紀はももうすぐきます。その21世紀の交通システムは、いかに有るべきかという話をする前に、現在の北海道の交通問題について整理してみました。その整理の仕方として、こういうハコをつくり、問題を3つに分割し、その問題をさらに3つに分割し、それをさらにまた3つに分割するという方法を用いています。

<北海道の交通問題とは>

「北海道の交通問題は何か」ということを考えたときに、陸・海・空という3つの交通システムに分けて考えました。次に、対道外交通、道内の都市間交通、そして、都市内交通という分け方があろうかと思います。

(対道外)

まず対道外の交通についてどういう問題があるか、ということについてまとめたのが次の3つであります。1つは、まずは新幹線を上げたいと思います。新幹線は盛岡まで来ていますので、北海道新幹線の実現を21世紀に是非具体化していきたいと思っています。対道外の交通として、北海道にとって一番大事なのは、物流だろうと思います。物流に対してこれから北海道はどういう交通システムを整備していったら良いかということを考える必要が有ります。さらに、第3番目として、人の移動ということで、観光交通を重視する必要が有ります。

(都市間)

次に、北海道内の都市間交通を考えたとき、一番に取り上げたいことは、コミューター航空です。コミューター航空の実現を21世紀にはぜひしたいものだなと思っています。2つ目に取り上げたいのは、北海道内の交通事故の問題です。これはここ20年ほとんど改善されていません。交通システムで最も大事な要件は安全ですが、道路交通に関しては、交通事故死日本一というのがずっと継続しています。これは道民のモラルの問題とか交通違反が多いとかということでなくて、社会システムとして大きな欠陥があるんじゃないかと考えています。例えば、車しか使えない都市が余りにも多くあります。それが交通事故を誘発しています。都市間の移動において早く、安全な交通システムがあれば、車を使う人は少なくなります。そこまで考えながら交通安全対策を進めるべきだろうと思います。それから高規格道路がどんどん整備されてきますが、つくったものをどう使うかという話が余りされていません。これも研究会として勉強していったほうがよいと思います。

(都市内)

都市内交通に目を移したときに、これからの課題になってくることは、違法駐車問題です。都市内の違法駐車問題をどうやって解消していくか、都心部の交通渋滞をいかに解消するか問われています。北海道で交通需要の抑制方策も、これからの課題です。しかし、 北海道において、本州で打ち出してきた交通需要抑制ということに関して、どのようにそれを受け入れるか、またはそれは返上するか、という理論武装はできていません。

最後に、歩行環境という問題であります。特に冬期間の歩行環境が改善されていません。歩道が除雪されていないということを、私たちは余りにも当然視してはいないでしょうか。

<対道外交通>

2枚目をお開きいただきたと思います。対道内交通問題をより具体的に3つに分け、さらにそれを3つに細分化しました。

新幹線は現札幌駅以外にない

まず新幹線の実現を図るという問題が有ります。それは、そうすると、新幹線の実現に際してどういう問題がいま北海道にあるのかということで、これを、さらに3つに分けていきます。1番が基本スキームの見直しということであります。整備新幹線が青森まで一応認められて、基本スキームとして採択されているものを平成8年度に見直しをする際に、整備新幹線が札幌まで来ることを基本スキームの中に入れることをやる必要があります。まさに、いまそれを一生懸命やる時期にきております。関係者の方々は、そういうことの問題意識を持っていますけれども、なかなかそれが道民一般の方々に理解されてなく、多くの道民は無関心です。例えば、北海道新幹線が札幌まで来るとして、それを前提にしてどれだけの地域開発計画を策定いるでしょうか。ほとんどの地域は、新幹線が来るわけがないとして、新幹線を含めた地域開発計画は作成されていません。都市計画的に言いましたら、新幹線がきたならば、その町はどうなるんだろうか。または積極的にこういうまちづくりをしたいんだから新幹線の駅はこういうところに立地させたい、と言う働きかけもほとんどされていません。その点で一番問題なのは、実は札幌市であります。北海道新幹線の札幌駅は、当然、現駅に来るという思い込みがあります。しかし、新幹線駅ができたとき、札幌の都市計画がどのように変わるのか。それを受け入れるまちづくりがなされているんだろうかということが心配の種となっています。

新幹線に関しましては、飛行機と新幹線の分担割合はこうなりますとか、さらに新幹線が350キロの最高速度で走ったときに、札幌・東京間が4時間切るようになり、それを踏まえたダイヤ設定等をずっと研究してきました。今年は、「新幹線札幌駅は現札幌駅でいいのか」ということに問題意識を持ちまして、その研究を始めました。

新幹線駅の候補地として、手稲東、琴似駅、新琴似駅、苗穂駅、現札幌駅と幾つか上げ、その新幹線駅に要求される機能、新幹線駅を踏まえたまちづくり、さらに、札幌圏の将来の発展の方向、また、工事費が多いか少ないか、いろんな問題を考慮して立地評価をしました。踏まえて、新幹線駅の立地点としたんです。

この研究テーマを指示するに当たり、私は、「新幹線の駅は琴似にする」ということを特に強く学生に言っておきました、琴似にしたら札幌駅に入らなくていいから工事費は安くなり、さらに札幌駅に当然来ると思って努力していない人たちにびっくりさせる効果が

有ると説明しました。本心は、私の自宅が琴似にありまして(笑い)、歩いて12分ぐらいで行けるんです。しかし、研究の成果によると、「裏から見ても表から見ても、上か

ら見ても下から見ても、現札幌駅以外ありません」という結論が出て、私はあきらめた次第です。

道路系で本州と北海道を結ぶ

次に、2つ目の対道外の物流システムという問題に入ります。

北海道の対外物流は、基本的に海を越さなければなりません。海を越す方法として、船と青函トンネルを通る鉄道の2つの手段が有ります。

最近のフエリーは、非常に性能がよくなって高速化がどんどん進んでいます。しかも、テクノスーパーライナーの実験船が、去年小樽・苫小牧等に来て台風のあとのあの荒波でも荷崩れを起こさなかったという実績が示されています。そういう点で、船にかかわる物流システムの整備は急速に進んでおりますが、鉄道システムに関しては全く放置されています。青函トンネルを通ることによってJR貨物が随分伸びましたけれども、現在は頭打ちになっております。それは青函トンネルの前後の津軽海峡線は単線であり、非常に線形

が悪くスピードを上げる事もできません。

さらに新幹線ができましたら、現在の在来線は並行在来線の扱いになっています。そうしますと、JR北海道とJR貨物のお互いの費用負担の問題等が出てきて、これが東北本線になったらもっと深刻です。東北本線の青森と八戸の間が並行在来線になります。JR東日本は、この路線を引き受け無いと宣言しています。青森県が第三セクターで運営してくださいと要望しています。東北本線が並行在来線として切りはなされると、一番困るのは北海道の物流システムです。そのことを北海道の方々はどれほど意識しているでしょうか。もし、JRの輸送力が弱くなったら、北海道の農産物に大きな影響が出てきます。これから日本の食糧基地になっていこうという北海道の戦略に大きな支障が生じます。

そういう点で、新幹線問題と道外物流としての並行在来線問題というのは、いまから方針をしっかりと打ち立てておく必要があります。

行政では、なかなか言えないこととか、研究できないことを本研究会において、あるべき姿をきっちりと考え、理論武装をしておくことが必要だと思います。

次に、テクノスーパーライナーの問題を考えてみたいと思います。すでに、実験が終わっており、次は、実用船の建造や、港湾整備の仕方が課題になってきます。

北海道ではテクノスーパーライナーをぜひ我が港にという運動はしますけれども、それ以上の運動は何もしていないです。本当にこのテクノスーパーライナー交通システムとして北海道に定着するためには、やるべきことはまだまだあります。

青函トンネルが物流の基幹でもありますけれども、北海道と本州の海峡大橋や水中トンネルを含めて、道路系で本州と北海道を結ぶシステムは必要だと思います。

津軽海峡に青函トンネルのほかの施設が必要であろうということは、21世紀において、ますます高まってくると思います。このような施設ができましたら、国際エアカーゴの実現化が非常に促進され、新千歳空港がエアカーゴ基地として発展すると思います。

観光を膨らますニセコ空港

3番目として観光交通の問題を取り上げたいと思います。観光客をメーンに空港をニセコにできないかということを考えています。ニセコ空港は、夏の洞爺湖、冬のニセコスキー場、入り込み客数で150万人以上ある地域に建設する空港です。さらに函館と千歳の間は空港空白地域となっています。この間に全く空港がないというのは極めて不公平であり、道東の釧路、女満別、帯広に3つのジェット化空港のあることを考えますと、函館と千歳の間に空港がないのは不思議な話です。この地域は母都市となる大都市がないため、いままで注目されませんでした。ニセコ空港と女満別空港、釧路空港等がお互いに路線を持ちあったら、北海道の観光はものすごく膨らみを持ちます。

観光問題でもう1つ考えたいのは、レンタカー料金の問題であります。現在のレンタカーの乗捨て料金が余りに高過ぎます。乗捨て料金が高いのは、運輸省の省令がネックになっており、レンターカーの車両はその営業所の管轄以外に使っちゃだめだという規制が有ります。例えば千歳で借りて釧路で乗捨てるとき、釧路の営業所は、その車両を釧路で営業に使うことは許されていませんでした。それがようやく緩和され、乗捨て料金が随分安くなりました。乗捨て料金がどんと安くなりましたら、ものすごく観光交通が活性化すると思います。

<都市間交通>

丘珠問題もシステムとして考える

道内航空の話をしたいと思います。

特に、コミューター航空の実現化を図る必要が有ります。北海道コミューター会社の立ち上げに関して、定期旅客会社が協力すると言う内諾が得られていると聞いていますが、政治的な思惑でこれ以上動き出せないということも聞いています。

さらにコミューターのハブ空港の問題があります。これは実は丘珠空港問題です。丘珠空港が、北海道の航空ネットワークでどんな位置づけなのかということをきちっと吟味していく必要が有ります。

交通はシステムであります。システムであることは全部つながっていることなんです。例えば丘珠がジェット化されたら、新千歳空港との役割分担はどうするのか、また、丘珠のジェット化のため、滑走路の延長が1,800か2,000でいいんだろうか、という問題があり

ます、いろいろなことがシステムとして考える必要があります。そういうことがほとんど議論されていません。

JRの高速化で交通事故日本一を返上

次に、交通安全の問題を考えたいと思います。交通事故死日本一を私たち返上しなければなりません。それが交通を専門とし、交通にかかわる者の責務だと思います。そのためには、道路以外の交通手段の整備、例えばJRの高速化が交通事故死の減少に寄与しているとしたならば、それを積極的に進める必要が有ります。ですから函館本線が高速化され、3時間で函館が行けるようになりました。そのことによって新千歳空港と函館空港のジェット便がなくなりました。また、多くの人が自家用車から鉄道に移っています。現在、根室本線の改良が行なわれており、釧路まで3時間半程度で行くようになります。札幌・釧路間のJR利用者は増加します。そのことによって交通事故死者が減少したら言うことはありません。

高速道路4車線化のスケジュールを

3番目は、高規格道路の整備に関する問題です。

高規格道路のネットワークができてますが、そのネットワークを有効活用することをどれほど考えているか問題です。また、有料になるとしたらだれがその金を集めるのか決まっていません。北海道には道路公社が有りません。この道路公社がないことによって、どれほど私たちは新しい制度、財源によって、道路をつくるチャンスを失ってきたかということに気がつく必要が有ります。北海道の高規格道路は、これからほとんど暫定2車線で整備されています。暫定と名がついている限りはいつかは暫定が無くなるはずです。いつ暫定をとるかというスケジュールを示す必要があります。しかし、これが永遠に暫定だといったら、これはもう、うそつきの言い訳です。これからの北海道の高規格道路は、暫定をとって4車線にするスケジュールを示して、21世紀の交通システムの中心に据えていく必要があります。

<都市間交通>

機能していない駐車場案内システム

次は、都市内の交通問題の話に移りたいと思います。

違法駐車問題に関して、これまで沢山の調査・研究を行なってきました。荷さばき駐車の問題についても、商業者が先行して対策案を作る仕事を手伝ってきました。

札幌市内には、駐車場案内システムが設置されていますが、ほとんど機能していません。それは、駐車情報が個別的でないために、本当に必要な情報になっていない事にあります。案内板に駐車場の名前が入れば効果的ですが、関係者の合意が得られていないため、実現しておりません。

直進専用車線を地下に

交通需要の抑制方策という問題もこれから重要になります。

21世紀において、私たちが理論的にも、そして施策的にも一番、問われることになると思われます。インターモーダルという交通政策があります。これは後ほどもう少し詳しく説明します。

このインターモーダルに関係するのは、環境コストの試算です。地球環境を、私たち人間としての生物が自分たちの環境をどうやって保つかというのが、21世紀の最大の課題になってきます。そのためにはコストがかかり、私たちはそれを相応に負担しなければなりません。環境コストの計算の仕方とか、その大きさ、その支出の仕方がこれからの課題になってきます。

20年ほど前に、自動車の社会的費用という本が随分注目されましたが、社会的費用ということをもう少し越えて、環境コストということの考え方が大事だろうと思います。

交通需要の抑制をなぜするかといったら、都心が混むからです。都心が混むから車を減少させようというのが今の制度です。ところで、車が混むのは本当に車がたくさんいるせいなのでしょうか、それは違うと思います。札幌の都心部は車が多いから渋滞しているという理解が、ひとり歩きしていると思います。といいますのは、札幌都心部の交通管制の上で、最大の問題は、100メートル間隔の信号交差点のあることです。パーソントリップ等で行なう配分計算は、おもに、最短径路法を使います。ここで、最短径路を算出する時に、信号によって、赤であるとか青であるとかというのは全く関係なく、すべての交差点は立体交差である、という、暗黙の仮定の上を設けております。たとえば、西から東へ行くとき、信号が赤だったら車は止まります。1時間のうち30分は赤信号時間です、したがって、ネットワークの容量は半減しなければなりません。それを現在のモデルは取り込んでいません。結局、都心が渋滞するのは信号交差点があるため、交通容量がないためであります。札幌では、都心を通過する交通が非常に多く、都心に目的地を持つ交通と、混在しています。特に札幌の場合は、右折専用車線を有している道路が本当にありません。直進と右折・左折交通が混在しているわけです。2車線道路の場合、1台の車が右折のため停車したら、直進ができなくなる道路が大部分です。しかし、右折専用車線をつくるくらいなら、直進専用車線をつくるほうが札幌の交通に適しています。直進専用車線を上につくるか下につくるかという議論は当然あります。しかし、札幌は積雪寒冷地です。従って、これからの直進専用道路は地下に作るべきです。

最近、北大を通過する18条通がようやく承認されました。あと5年後には北大を通過する18条通が全部地下になります。さらに、750メートルの地下道路ができます。そうすると、さらに、地下道路のネットワークを整備してほしいというニーズが高まってくると思います。

ポストスパイクタイヤ問題を真剣に

歩行環境の整備というのは、これまた大きい問題だと思います。特にスパイクタイヤの禁止によるツルツル路面の発生と負傷者の増加の問題は、スパイクタイヤを禁止することに、積極的に参加した道路の技術者が責任を持って処理すべき課題だと思います。環境だけを考えると、スパイクタイヤを禁止することは妥当です。しかし、その副次効果で、負傷者が増えると言うことは真剣に考える必要があります。

インター・モーダル

最後に、インター・モーダルの話をしたいと思います。

インター・モーダルというのは、アメリカが1991年に制定した法律で使われています。日本語でいえば総合陸上交通体系化法という法律があり、交通と環境の関係を定めたものです。インター・モーダルとモーダル・ミックス、モーダル・シフトとは、どう違うのでしょうか。モーダル・ミックスというのは建設省の政策であり、モーダル・シフトは運輸省の政策です。いずれも、自動車から公共交通機関、特に鉄道にシフトさせるということが主体になっています。建設省のモーダル・ミックスは、都心の交通需要抑制策であり、積極的に、大量交通機関を活用しようというものです、しかし、インター・モーダルというのは、ちょっと違っており、根底にあるのは、環境コストからすべての交通システムの利用計画を考えるものです。

インター・モーダルというのは、公共交通機関の相互連携帯を図ったものであり、色々な交通機関をトータルで考え、その社会コスト、環境に及ぼすリスクを少なくするという、考え方です。

いずれにしましても、これだけの問題があります。実際はまだまだあると思います。そのまだまだあることを、私たちが分担し、この交通研究会という組織を通じながら、札幌ではこうしよう、函館ではこうしよう、旭川はこうしょう、ということを考えていく場が必要です。

交通研究会は、そういうことを当初から意図してつくられたものであり、今後の発展を期待しています。

どうもご静聴ありがとうございました。 (拍手)

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