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平成八年豪雪   北海道新聞連載記事<ドカ雪を越えて>

 今冬、道央地方を中心に記録的な大雪が続いている。札幌の総降雪量はすでに昨シーズ

ンを突破し、当初用意した約一千万立方メートル分の雪捨て場が満杯になった。除雪が追

いつかず、交通機能は度々まひ、住民はうんざりしている。今の雪対策に改善の余地はな

いのか。そして住民自身、ドカ雪とどう付き合っていくべきなのか。二月五日に札幌で開

く緊急シンポジウム「都市のドカ雪対策」に向け、課題を探った。(5回連載の予定です)

.1*緊急車両*渋滞で搬送時間3倍に 96.01.31    

 「もっと道を開けてくれ」。札幌市東消防署栄出張所の佐々木武司さん(34)は心の

中で大声を張り上げていた。

 札幌圏が大雪に見舞われた九日の午前八時すぎ。佐々木さんは、めまいとおう吐で11

9番通報した東区内の女性(65)のもとに救急車を走らせていた。だが、途中で渋滞に

巻き込まれた。サイレンを鳴らしたが、除雪が追いつかないため一般車両は路肩に寄れな

い。

 現場到着は午前十時五分。病院に着いたときには十一時を回っていた。通常なら四十分

程度のコースに二時間半かかった。幸い患者は無事だった。だが佐々木さんは「もしも、

患者の症状が心肺停止状態だったら…」と今でもぞっとする。

 除雪や渋滞に関する情報はリアルタイムに現場に伝わってはこない。佐々木さんはノロ

ノロ運転の対向車にも、先の道路状況を聞かねばならなかった。

 道路の除排雪は国、道、市が分担して進めているが、それぞれの間で情報のやりとりは

ほとんどないのが実情だ。札幌市の内部でさえ、除雪情報を即刻、現場の救急隊に送る仕

組みはない。「せめて除排雪状況だけでも分かれば、スムーズな搬送に役立つのだが」と

の声は救急現場で根強い。

 今回の大雪をきっかけに、札幌市はようやく除雪情報を救急搬送に生かす検討を始めた

。現在、札幌では市内を五十三区域に分けて除排雪する「マルチゾーン除雪」が行われて

いる。区域ごとに設けられた「除雪センター」と最寄りの救急隊が情報交換し、連携を取

る案などが浮上している。

 一方、緊急車両対策として「スノー・エマージェンシー・ロードを」と提言するのは道

工大の加来照俊教授(交通工学)。救急医療機関などに通じる幹線をいくつか指定し大雪

の際には優先的に除雪する制度だ。

 加来教授は「米国ワシントン市などで導入されており、大雪時の違法駐車を厳しく取り

締まるなど徹底している」と話す。ただ「今の除雪体制のままこの制度を導入すれば、生

活道路の除雪遅れにつながる。それでもいいのか、市民論議は必要」と付け加える。

 救急車、消防車などが渋滞の影響を受けずに走れる有力なルートとして考えられる高速

道路も、今回の大雪では意外なもろさを露呈した。

 九日には札樽自動車道、道央自動車道のほとんどの区間が通行止めとなった。通行止め

の判断は、道路管理者の日本道路公団と交通管理者の道警がパトカーの巡回などをもとに

安全を第一に決める。今回は特に、小樽−札幌間が吹雪とその除雪のため、八日深夜から

九日夕方まで十九時間以上もの間封鎖され、市民生活にも打撃を与えた。

 こうした状況の中、同公団と道警高速隊は協議のうえ、消防車などの緊急車両を除雪の

終わった区間に限り、一般車両に先立って通行させた。九日の札樽自動車道だけで、優先

通行した消防車や血液搬送車は計八台に上った。

 ただこうした措置に基準はなく、現場判断にゆだねられているのが現実。道路公団のあ

る職員は「では、医師が病院に向かう一般車両は優先対象になるか、病床のシーツを取り

換える業者の車はどうかなど、ある程度の基準がなければ必ず混乱する」と指摘する。

 今回、血液不足に陥った北海道赤十字血液センターにも、広域的に交通網が寸断された場合の血液搬送マニュアルはない。関

口定美所長は「緊急時の搬送にはヘリや除雪車などの協力が必要。今後、関係機関を巻き

込んで対策を確立させたい」と話す。

 大雪の中で、一刻を争う緊急車両の運行をいかに確保するか。その決め手はまだ見つか

らない。

.2*情報“まひ”*運休決定 利用者は知らず 96.02.01

 「バスは来るのか、来ないのか」。札幌圏が猛吹雪に襲われた一月九日朝の札幌市豊平

区の市営バス停留所。近くに住む公務員(44)はイライラを募らせ、四十分以上も凍え

ながらバスを待っていた。

 札幌市営バスは同日午前七時すぎから、全面運休となった。一日の運休本数は全体(六

千二百三十本)の半数近い二千九百二十四本に達した。JR北海道の列車、バスや札幌市

電、北海道中央バス(本社・小樽市)もまひ状態となり、札幌、小樽など札幌圏の交通機

関は札幌市営地下鉄を除き「機能不全」に陥った。

 一万二千九百五十七本。JR札幌駅の「電話案内センター」には、通常の十倍を超える

電話がかかってきた。「列車は動いているのか。動いているのなら遅れはどうなっている

のか」。小樽駅などその他の駅や交通局、中央バスの電話も鳴りっ放しだった。利用者は

情報に飢えていた。

 市営バスが運休を決めた午前七時すぎ、交通局自動車部業務課にいたのは職員二十四人

のうち数人だけ。すぐに手分けしてテレビやラジオに電話連絡を始めたが、連絡の行き違

いもあり、マスコミすべてに伝わったのは同八時すぎ。多くの利用者がすでに、停留所に

向かっている時刻だった。

 バス停で待つ利用者には、市内六カ所にある営業所の連絡車が向かった。しかし、市バ

スの停留所は六十七路線千六百六十八カ所もあり、実際に連絡できたのは一部だった。村

上強・業務課長は「多くの利用者に運行状況を知らせるには、マスコミに協力してもらう

しか方法がない」と、現状ではマスコミ以外に有効な連絡手段がないことを認める。

 中央バスも「利用者への告知がうまくいかなかったのが今回の一番の反省点。今後はマ

スコミへの連絡体制を徹底させる」(鷲田元春・保安部副部長)と、マスコミ頼りの姿勢

だ。

 しかし、交通情報をニュースとして流すかどうかはマスコミの判断による。札幌の交通

を良くする会会員でフリーキャスターの林美香子さんは「(担当するFM番組では)もっ

と交通情報を流したい」とマスコミ側の努力の必要性を認めた上で「停留所にランプを付

け、赤なら運休、黄なら遅れ、緑なら正常という仕組みは考えられないでしょうか」と提

案する。

 道運輸局の中堅幹部も「個人的な考えだが、停留所の付近住民に依頼して、緊急時に張

り紙をしてもらうのも一つの手ではないか」と指摘する。要はアイデアというわけだ。

 JR北海道、交通局、中央バスの課長クラスが二日、道運輸局に集まる。テーマは「障

害時における公共交通機関相互間の情報伝達方法の検討」。担当の運輸局鉄道部監理課の

丸山正吉補佐官は「目的は(交通機関の運休などの)情報をいかに早く利用者に知らせる

かに尽きる」と説明する。

 検討のきっかけは運輸局職員が目撃した「JR札幌駅とバスターミナルの間を子供をお

ぶって、行ったり来たりする女性の姿」。ライバル関係にある交通機関同士は横の連絡が

悪く、今冬の雪害では、たらい回しのように「他の交通機関を利用して」と、利用者に説

明する例があった。丸山補佐官は「せめてお互いの連絡窓口を決め、ファクスや電話で運

行情報を交換し、乗り継ぎの駅やターミナルで掲示する仕組みをつくりたい」と話す。

 正確な情報を市民にいかに早く伝達するかは、阪神大震災でも指摘された危機管理の大

きな柱。北星学園大文学部の大坊郁夫教授(社会心理学)は「こういう場合にはこういう

ように情報を流す、というパターンを行政や交通機関、マスコミが普段からつくっておか

ないと、混乱は繰り返される」と強調する。                ◇

*ドカ雪対策を探る 5日に緊急シンポ

 ドカ雪から市民生活を守るための提言、意見を手紙かファクスでお寄せください。手紙

は〒060・11(住所不要)北海道新聞社会部へ、ファクスは(電)011・210・

5556です。また、北海道新聞社は北海道文化放送などと共催で、都市のドカ雪対策を

テーマにした緊急シンポジウム(入場無料)を五日午後一時から、札幌グランドホテル(

札幌市中央区北一西四)で開きます。

.    3*雪捨て場*流雪溝整備に期待増す 96.02.02    

 「ここに住んで十年になるが、こんなドカ雪は初めて。庭に捨てている雪はもう背丈以

上の山になってしまいました。近くに雪捨て場がないのが最大の悩みなんです」。新興住

宅街が広がる札幌市豊平区平岡。主婦の山田裕子さん(42)はスノーダンプを押しなが

ら、ため息をついた。

 除雪は「非常に苦労だ」二○・九%、「苦労だ」四○・四%、「我慢できる程度」三六

・四%、「楽だ」一・九%、「非常に楽だ」○・四%−。

 住宅地と雪問題を研究している道工大の大垣直明教授(住宅地計画)が昨年十一月初め

、札幌市手稲区星置と石狩管内石狩町花川北の一戸建て、計三百六十二世帯を対象に行っ

たアンケート調査の結果である。「雪の降る前の調査だったが、苦労と答えた人が全体の

六割以上。今やったらもっと増えるだろう」

 苦労の理由として「(自宅の敷地外に)雪捨て場がない」が四○・一%に上った。同教

授によると、札幌市内と近郊の新興住宅地の宅地は百九十八平方メートル(六十坪)前後

。この面積では、自分の敷地内でひと冬の雪を積み上げておくには不十分、と言う。まし

てやこの記録的なドカ雪だ。

 こうした悩みが多い中、「雪また雪には参ったが、除雪は以前と比べてとても楽です」

と話すのは、札幌市西区発寒の時計店主、小川石雄さん(68)。店の前を走る流雪溝が

雪捨て場になっているからだ。

 道路下の水の流れる管に雪を投げ入れて排雪する流雪溝は現在、道内十六市町で計十九

カ所あり、総延長は百六キロ。発寒は札幌市内で最も新しく四カ所目、二年前から四百戸

以上が利用している。今冬、旭川で雪詰まりを起こすなどまだ改善の余地はあるが、一定

の効果は上がっている。

 昨冬の札幌市の排雪量は千二百万立方メートル。十九階建て市庁舎の八十五杯分に当た

る。四つの流雪溝を合わせた排雪量は十八万立方メートルと、全体から見ればまだわずか

だが、市は一九九七年度の完成に向けてさらに一カ所建設中。二○○○年度までに十カ所

に増やす。今冬の札幌市の雪対策予算(当初)百四十二億円のうち、九十三億円が道路除

排雪費、四十九億円は流雪溝や融雪槽、ロードヒーティングなどの整備費。利用者でつく

る発寒流雪溝管理運営協議会の事務局長でもある小川さんは「流雪溝のような施設として

残るものの研究と予算付けに、さらに力を入れるべきでは」という。

 一方、住宅の工夫も必要だ。大垣教授も「三角屋根にするのか無落雪にするのかを含め

、冬のことも考えた住まいづくりが必要」と話す。だが、個人ではなかなか解決できない

のが雪捨て場の問題だ。広い土地を求めようにも地価は高い。

 そこで、同教授は「住宅地造成に当たり、例えば隣近所の十四、五軒が共同で使える六

十坪ほどの土地を雪捨て場としてあらかじめ確保し、夏は子供たちの遊び場や菜園として

使ってはどうか」と提唱する。もちろん土地購入費にはね返るが、自治体や国が流雪溝を

建設するように、公費で助成も行う。「そんな宅地政策が検討されてもよい時期では」と

話す。

 先のアンケート調査で「町内会みんなが参加する除雪日を設けてはどうか」「近くで困

っている家庭にはボラン

ティア除雪をしてはどうか」と提案したところ、それぞれ四割、六割の賛成があった。

 こうした住民の雪と付き合うコミュニティー意識をどうはぐくみ、流雪溝や共同雪捨て

場といった「社会資本」の整備をどう進めるのか、今回の豪雪はこんな課題も提起してい

る。

. 4*雪害観*危機管理の姿勢に強弱 96.02.03     

 一月九日のドカ雪では、対応する自治体の立ち上がりに微妙な差が出た。

 石狩管内広島町は同日午前十時に、雪では初めての災害対策本部を設置、同管内石狩町

も同十時半に災害に準じた大雪対策本部を設けた。一方、札幌市が緊急雪害対策本部を設

置したのは、半日後の午後四時半だった。

 「これは通常の除雪では、追いつかない」。石狩町の除雪担当、棚橋文男維持管理課長

は、猛吹雪となった同日午前四時半すぎから町内の住宅地をパトロールしながら直感した

。「生活道路は『雪で埋まっている』という状態だった…」

 札幌のベッドタウンとして発展する石狩町民の通勤の足は、もっぱらマイカーやバスだ

。それを支える道路が玄関先から寸断された。町の対策本部設置の判断は同課長らの報告

などを踏まえたもの。町民への除雪に関する広報などに取り組んだが、それでも混乱は続

いた。

 広島町でも、対策本部を設置後、百人以上の職員を深夜まで応援に駆り出す除雪体制を

とった。

 一方、札幌市も午前中から除雪担当の道路維持部以外の職員も動員して情報収集に乗り

出し、交通網のまひだけでなく、高齢者や病人に影響が懸念される事態を把握したが、本

部設置には消極的だった。最終的には午後になっても雪が収まらず「夜にまた荒れる」と

の予報が決め手になって腰を上げた。翌朝には自衛隊の災害出動も要請した。

 五十三の除雪センターが二十四時間体制で備える札幌市独自のマルチゾーン方式に全面

移行し、自信を持って臨んだ今冬。ある同市幹部は「通常体制でも対応できるとの過信が

あった」と振り返る。

 緊急時の行政側の対応の仕方は関係者の状況認識に負う部分が大きい。それぞれの除雪

体制の違いはあるにせよ、判断の難しさを示すことにもなった。

 現代の「雪害」は車社会を支える道路のダウンが市民生活、経済活動などに幅広く被害

をもたらすのが特徴だ。北海学園大工学部の五十嵐日出夫教授(都市計画)は「雪害も風

水害と同じようにとらえるべき時代になっているのではないか。自然災害は交通の発達と

人口密集で大きくなるのだから」と指摘する。

 ドカ雪当日、札幌市内の会社社長からは交通の混乱などに「水害並みの影響を受ける大

きな災害だ」という声も上がった。しかし雪害は、人命や財産が直接危機にさらされる風

水害ほど深刻に受け止められていないのが現状。道警は「九日のドカ雪を“災害”と見な

すかどうかは難しい」とし、対策本部設置が早かった石狩、広島両町でさえ「水害とは、

被害の質や次元が違う」との受け止め方だ。

 こうした中、ドカ雪の九日に思い切って臨時休業に踏み切った企業もある。石狩町のY

KK北海道工場。「無理に出勤しようとして、事故が起きたら大変と考えた。急を要する

仕事がなかったこともあるが…」(関口一志工場長)。

 北大工学部の中辻隆・助教授(交通工学)は「豪雪の時は、交通面でも緊急時の発想が

必要なのに今は普通の降雪時の延長線でしかとらえられていない。一般車両の規制のほか

会社の休業、勤務時間の変更などのシステムを事前に構築すべきでないか」と提言する。

 北大低温科学研究所長の秋田谷英次教授も「社会全体に不便さへの忍耐力がなくなり、敏感に反応し過ぎる。簡単にはいかないだろうが、豪雪の日は休むぐらいの気持ちがあっていいのでは」と、住民の意識改革を提案する。

 雪害を都市防災の中にどう位置付けるか。行政、住民の「雪害観」があらためて問われ

ている。

. 5*市民の提言*克服策 街づくりに直結 96.02.04   

                               

 「雪には本当に泣かされっぱなしです。六十歳を過ぎた人間の手で除雪するには限界が

あります…」。豪雪の中から、住民の悲鳴が聞こえる。行政機関の除雪のまずさや市民の

マナーの低下を指摘する声、融雪技術や雪に強い交通システムの開発を求める声など、今

回の企画に寄せられた読者の意見を最後に紹介する。

 「道路の硬い雪を玄関前に置かないで。税金を使っているのだから、もっと住民本位に

除雪マニュアルを変更してほしい」と、札幌市白石区の中野嘉弘さん(73)は怒る。

 「ホワイトドームを造るより、流雪溝整備など除排雪体制の総合的見直しを」と訴える

のは同市北区の西田五平さん(72)。同市と地域住民が費用を折半するパートナーシッ

プ除雪制度についても、同市西区の女性は「住民全員が合意しなければいけないので、う

ちの地区はなかなか実施できない」と問題点を指摘する。

 一方で「市民はもっと我慢すべきでは」との意見も。同市北区の女性(60)は「私た

ちは少しわがまま。大雪なのにスーツ姿でマイカー。『行けるだけ行ってみる』では困る

」と言い、同市東区の主婦(40)も「市民は、市など当てにしないで自分で動くべき。

今の札幌市民は雪国の自覚ゼロ」と指摘する。

 また、同市北区の今正彦さん(66)は「せっかく除雪車が入った道路に、個人ならま

だしも、民間業者が雪を出していてはきりがない」と、市民のマナーの悪さを懸念する。

 都心部や幹線道路の交通渋滞解消のため大胆な車両規制を−との意見も多く、同市西区

の大谷徹さん(63)は「通勤用マイカーは大幅に自粛を。交通や除排雪作業の邪魔にな

る違法駐車は高額の罰金を」と、マナーの悪いドライバーの取り締まり強化を要望する。

 旭川市の自衛隊員(51)は「三、四キロは歩いて通勤しても大丈夫。ドカ雪が降って

も、雪かきは体力づくりと思ってやればよい」と、発想の転換を勧めている。

 具体的に、どうすればいいのか。最も多かった意見は融雪槽・流雪溝の充実で、「市内

の各公園に融雪槽を設置して、管理は地元町内会で」(札幌市東区・中川俊男さん)、「

アパート・マンションの建設には融雪設備を義務付ける」(同市北区の女性)、「家庭が

融雪槽を設置しやすいように、融資、補助を増やして」(同市白石区・主婦銭谷政美さん

)など、さまざまのアイデアが出た。

 岩見沢市の吉田英治さんは「ドカ雪の際の自治体相互の緊急応援態勢や、雪捨て場の増

設、融雪についての研究機関設立が必要」と強調。旭川市の松島正道さんは「自家用車の

使用制限のほか、雪道に強い雪上車タイプのバスやトラックの開発を急いでは。毎年の除

排雪費用を考えれば費用は高くない」と、ユニークな提言をしている。

 今年一月七日、米国・ワシントン滞在中に豪雪に遭った笠原篤・道工大教授(道路工学

)は、役所や学校が全面的に休みとなり、道路がほぼ通行止めされていた例を挙げ「いざ

という場合には会社や学校を一斉休業させられるようにして、混乱時の交通量を減らすこ

となどが必要。細かなルールを定めて危機管理する体制が重要だ」と語る。

 高齢者対策、ボランティア、都市計画

、融雪施設、車対策…。雪国の豪雪克服策は、そのまま街づくりに直結する問題だけに、

市民一人ひとりの真剣な議論が必要だ。(おわり)

 

1.<緊急リポート 直撃冬台風>上*交通寸断*対策不足の“人災”96.01.11 

 九日未明から道内を襲った豪雪は、道央圏を中心にJR、バスの運休、道路の不通など

交通網を寸断し、市民生活を直撃した。大雪のたびに繰り返される交通の混乱。その背景

には、関係機関の対応の遅れが見え隠れする。豪雪が浮き彫りにした問題を道内の交通や

生活面からとらえ緊急報告する。

●JR

 十日午後のJR札幌駅。動かない列車に乗客のいらだちが募る。網走管内美幌町の公務

員(52)は「冬は列車の方が飛行機やバスより時間が正確。ダイヤの乱れの影響は大き

い」とため息をついた。

 運休の主な原因は《1》ポイントの切り替え不良《2》函館線の張碓−銭函間の高波に

よる陥没《3》石勝線の西新得信号場−広内信号場間の強風。いずれも、以前から指摘さ

れてきた「古傷」だ。

 中でもポイントの切り替え不良は、運休の最大原因。JR北海道は二年前の冬から、ポ

イントの下にピット(穴)を掘り、ピット内の雪を遠赤外線で溶かす最新鋭の装置を試験

的に導入している。しかし、四基約一千万円というコスト高のため本格的導入は遅れ、今

回の豪雪にも対応できなかった。

 特急スーパーとかちなどが強風で立ち往生した現場では、鉄道防風林の植栽を強風対策

として検討しているが、まだ研究段階だ。

 同社が「北海道における基幹的輸送機関」(幹部)の地位を守っていくには、住民の信

頼は不可欠。雪による運休を「宿命」とする姿勢は通用しない。

●道路

 札樽道や国道など道央の高速道路や主要幹線も寸断された。

 小樽が「陸の孤島」の状態に陥る一因となったのは札樽道の通行止め。日本道路公団札

幌建設局は「札幌管理事務所の除雪用のロータリー車七台に加え、応援の二台を入れたが

、追いつかなかった」と振り返る。

 小樽側の思いは深刻だ。小樽商工会議所の大谷昭三専務理事は「除雪の対応に、本当に

遅れがなかったのか。また、札樽道が通行止めになった時に頼りになるのは国道だが、四

車線化の作業が始まったばかり。その前に道幅拡大を検討することも必要」と注文する。

 一方、緊急雪害対策本部を設置した札幌市の瓜田一郎建設局長は「昨年末の大雪を教訓

に、除雪態勢は万全」と胸を張る。同市は市道と道道の除雪に二十四時間体制で職員、業

者約八千百人を投入、車道除雪には除雪車など計六百六十台を出動させた。国道を担当す

る札幌開建札幌道路事務所も「通常、深夜二時すぎから始める除雪を午後九時ごろからに

早め、二回目、三回目も行った」と話す。

 しかし、バス会社は「もっと早めの排雪ができないものか」と不満顔。九日にバスの全

面運休を招いた原因の一つは路肩に積まれた大量の雪だった。札幌市のタクシー会社は「

排雪が遅い。雪山は見通しを悪くし、危険だ」と、市などの対応の遅れを指摘する。

●情報

 札幌市の市電、市バスやJRに対しては、情報提供の面でも批判が出ている。「これだ

け発達した世の中なのに、連絡手段が張り紙だけなんて」と、いつも市電を利用する主婦

(60)はあきれる。電光掲示板がある市電停留所は、一カ所だけだ。

 今回の豪雪で、行政側の対応の遅れは否めない。道雪害対策連絡部の第一回会議が開か

れたのも、ようやく十日になってから。道防災消防課の認識も「交通障害は回復しつつあ

る。現時点では災害対策が必要とのレベルには至っていない」と、雪と苦闘する市民の感

覚とはズレを見せる。

 大雪の降った九日朝、一時間以上もバスを待ち続けた札幌市の会社員(45)は「動く

か、動かないのか分からないのが一番つらい」と訴えた。

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