ダンナのぐるぐる 2.猿田彦神社遷座祭報告

平成9年
9月27日 11:00 伊勢・猿田彦神社で本殿遷座祭に伴う巡行祭への出発を報告。奉納演奏。
9月28日 06:00 沖縄・知念の浜で禊ぎ
     10:00 斎場御嶽(セイファーウタキ)で神事、奉納演奏。
     17:00 沖縄・久高島の西の浜で夕陽拝、奉納演奏。
9月29日 06:00 久高島・伊敷浜で朝日拝、奉納演奏。
     16:00 鹿児島・霧島神宮正式参拝、奉納演奏。
     17:30 霧島神宮古宮跡(高千穂河原)で奉納演奏。
9月30日 17:00 宮崎・高千穂・天の岩戸神社参拝。
10月1日 06:00 高千穂・国見が丘で朝日拝、奉納演奏。
     10:00 高千穂神社正式参拝、奉納演奏。荒建神社参拝。
     18:00 福岡・志賀島・志賀海神社参拝。
10月2日 17:00 出雲・佐太神社正式参拝、奉納演奏。
     18:30 加賀神社参拝。
10月3日 06:00 船で加賀の潜戸へ。神事、奉納演奏。
     11:00 出雲大社正式参拝、奉納演奏。
10月4日 14:00 伊勢・阿射加神社正式参拝、奉納演奏。二見輿玉神社参拝。
     17:00 猿田彦神社で帰社報告、奉納演奏。

伊勢神宮のそばにある猿田彦神社が23年ぶりに本殿遷座を行うことになり、その奉祝のイベント「おひらきまつり」のひとつとして猿田彦大神の神話が残るゆかりの地を巡って各地の神々を寿ぐ巡行祭が企画された。以上が先日参加した猿田彦神社の巡行祭のスケジュールである。
鎌田東二、細野晴臣、雲龍、福澤もろ、岡野弘幹、川西宏子といった面々が一緒に廻った巡行隊のコアメンバーだった。

猿田彦の神は先がけ、先導、道ひらきの神として信仰されてきたが、土地を鎮める神としても奉られているので建築関係にもかなり知られた神らしい。この神様は謎が多いのだが、神話では天孫降臨の際に道案内をした国つ神(土着の神)で、その後、天の岩戸の前で乳房と女陰を露にして踊ったアメノウズメノミコトと夫婦となった神様としても知られており、その風貌はのちに天狗と重なり道祖神や 庚申信仰などの庶民信仰にも習合している。

研究によれば猿田彦は日本の先住民という説が有力で、その起源は沖縄を経てインドネシアなどにも求められそうだということである。巡行隊が沖縄で祈ったのもそのためだった。侵入者である天孫一行の道案内を裏切りととるかどうかはさておいて、猿田彦が日本人の由来を考える上でも実に興味深い存在だと言うことがわかってきたのだ。
神道というと一時期の国家神道の暗い影を引きずっていて、これまで反射的に嫌悪していたのだが、付き合ってみると根本は自然信仰だし、場所によってはシャーマニズムも息づいているし、ある意味で日本人の先住民的な信仰が生きている世界で、ここのところずいぶん親しみを感じている。特に猿田彦は縄文につながり、キャラクターとしても面白い神様だ。
また、神社の宮司には面白い人が多く、猿田彦神社の宇治土公宮司も「古い形の信仰を探っていくことにより、この国に住み始めた人々がもっていた心の問題、魂の問題などに少しでも触れることによって神々とか、自然とか我々をとりまく世界とかを自分の中に感覚として取り入れることが出来るのではないか」と語り、今回の遷座祭を「21世紀を迎える今、そのために神社が出来ることは何か」ということで、正式な遷座祭だけでなく、巡行祭やフォーラム、神楽や舞踊、コンサートといった関連イベントを開催したのだそうだ。この「自分の中に感覚として取り入れる」というのが教義のない神道では大切なことで、気功の天人合一ともつながるのだが、この感覚が育てば祈りは通じるものだと私は信じている。

エコロジカルな眼で見れば神社の鎮守の森は今や貴重な自然を営々と守り続けてきた存在だし、「気の世界」から見れば、神社は大地のエネルギーがわき出ている良い気場「イヤシロチ」にあるので我々を霊的に元気にしてくれる。今回の奉祝ステージは森を背にした神様用の米を作る神田のうえに作られたが、舞踊を奉納した韓国の金梅子(キム・メジャ)さんや東京の山田せつ子さんらは口をそえ て「すごく踊りやすく、気持ちが良かった」と言っていたし、我々「細野晴臣&環太平洋モンゴロイドユニット」も今までで一番いい演奏が出来た。

88年から5年ほどアイヌの文化運動の手伝いを通じて世界各地の先住民文化とシャーマニズムに出会い、神、あるいはサムシングクレイトというものを実感してきたのだが、自分はどこの文化を生きればよいのかという宿題が残った。先住民文化で共通するのは自然信仰と祖先崇拝で、またそこには10年ほど付き合ってきた気功から学んだ「気の文化」も横たわっていた。そんな自分にとって国家神道 の負の歴史から今、21世紀への道開きの神たらんと動き出した、一部ではあるが元気な神社の動きは私の「日本の中の先住民文化の境地を探りたい」という願いとシンクロしている。(北海道の神社についてはナーバスな問題があるが、長くなるのでここでは触れない)
98年は日本各地の神社が参加している「平成神道研究会」が記念事業として「今、神道が面白い」というシリーズ企画を行なう予定だそうで、新しい神社の動きに注目したい。

参考図書「謎のサルタヒコ」鎌田東二編・著(創元社)
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